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「未完の肖像」アガサ・クリスティ[著]

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内容(「BOOK」データベースより)
内気で多感なシーリアは母親や周囲の人々に温かく見守られ、バラ色の子供時代を過ごした。やがて美しく成長した彼女は、ダーモットという危険な魅力の男に惹かれ、婚約を破棄して彼の元に走る。だが、夢見がちなシーリアと現実的なダーモットとの間には次第に亀裂が生じていく。愛に破れた女性の行き着く先とは。


 アガサ・クリスティのノンミステリものの1冊。メアリ・ウェストマコット名義で書かれた本です。描かれるのは、3才から39才までの一人の女性の人生。ヒロインの胸の内が丹念に綴られ、読んですぐに、主人公・シーリアは、クリスティ自身なのだろうとピンときます。

 シーリアは、小さな子供の頃から、常に物事を深く強く感じる性質で、空想の中で生きているような少女でした。彼女と良く似た気質の愛情深い母と、包容力のある父に守られ、シーリアは豊かな子供時代を過ごします。日々の繊細な描写が延々と続くのですが、著者には掛替えのない記憶であっても、こちらとしては、それほどの興味はそそられず、この部分ではかなり退屈しました。

 戦争の影が色濃くなる中、美しく成長したシーリアに求愛する男たちが次々に現れます。彼等への赤裸々な評価が語られるあたりから、物語はにわかに面白くなります。シーリアの心は、そのままの彼女を包み込んでくれる幼馴染の婚約者から、強引で野心家のダーモットへ傾いていきます。「永遠に美しいままでいてくれ」と強く彼女に求めるダーモットに、愛情と同時に恐怖も抱くシーリアでしたが、燃え盛る恋心を止めることはできません。

 夫の期待に添うよう、シーリアは自分を失ったような結婚生活を送ります。しかし、十年が過ぎようとする時、ダーモットは、好きな女性と結婚したいから別れてくれ、と残酷な要求を妻に突き付ける。一番の理解者であった母の死。ダーモットの現実的気質を受け継いだ一人娘との確執。苦しみの中、シーリアは遂に一人で歩き出す決意をします。やがて、39才を迎えたシーリアは、一人の男性と心を通い合わせる。しかし、彼の「約束してください。美しいままでいることを」という一言が、忌まわしい過去を呼び起こし、シーリアは何も言わず彼のもとを去ります、、、、

 本の中では、二番目の恋は成就しないのですが、クリスティ作品完全読破した友人に寄ると、二番目の年下の夫とクリスティは生涯を伴にし、夫妻でのアフリカへの旅行などから、「ナイル殺人事件」など数々の名作も生まれたのだそうですね。

 最愛の母の死後、最初の夫が、愛人と再婚するために離婚を申し出、そんな時期にクリスティが起こした失踪事件も実際に報道されたことだそうです。ページを捲るうちに、細やかに揺れ動くクリスティの心と彼女の人生に寄り添うような感覚がありました。以前読んだノンミステリの「春にして君を離れ」も、とても良かった。主人公の独り善がりな主婦に自分が重なるように思え、背筋が寒くなったのを覚えています。

 アガサ・クリスティも私生活では、この世にある普遍的とも言える苦しみを体験したのですね。偉大な作家を少し身近にも感じました。


★次回は、藤岡陽子の「海路」です。

by cuckoo2006 | 2012-10-04 20:17 | 本(外国のもの) | Trackback | Comments(0)
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