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「フロスト始末」上・下 R・D・ウィングフィールド[著]

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今宵も人手不足のデントン署において、運悪く署に居合わせたフロスト警部は、強姦・脅迫・失踪と、次々起こる厄介な事件をまとめて担当させられる。警部がそれらの捜査に追われている裏で、マレット署長は新たに着任したスキナー主任警部と組み、フロストをよその署に異動させようと企んでいた・・・・・・。史上最大のピンチに陥った警部の苦闘を描く、超人気警察小説シリーズの最終作。

(文庫本裏表紙より)

 

 「悪いニュースと悪いニュースがある。どっちから聞きたい?」

 ジャック・フロストは健在でした。ロンドン郊外にあるデントン署のフロスト警部は私のヒーローです。


「クリスマスのフロスト」から始まる6作のフロスト警部シリーズ。全作品が年末のミステリーランキング1位という超人気警察小説シリーズです。私が初めて読んだのは「夜のフロスト」。この本から海外ミステリー好きになりました。


馴染みの薄かった外国の推理小説が一気に身近になるほどジャック・フロストの個性は強烈だったのです。


フロスト警部と言えば、えび茶色のマフラーにヨレヨレのトレンチコート。そして連発するお下劣なジョークです。それは殺人事件の現場検証でも死体解剖室でも止まることはありません。


デスクの未決箱はうず高く、書類処理能力はゼロ。ガソリンの請求書の数字を6から8に書き換えるのも朝飯前です。


しかしこう見えてもフロスト警部は稀に見る人格者なのです。署の体面しか考えない上司は一切無視し、頭の中には一刻も早い被害者の救出と事件の解決しかありません。保身や出世への執着は皆無。それでいて容疑者も含めて弱い立場の者にはとことん優しいのです。


忙しさに悪態をつきながらもフロスト警部は猛烈に働きます。理想の上司とは言えませんが、同僚からの信頼は厚く、皆どんなに疲れていてもフロストのジョークに苦笑いで付き合っています。


今回は読み終わるのを少しでも伸ばすようにゆっくりページをめくりました。なぜならこれが愛するフロストとの最後の逢瀬だから。本作「フロスト始末」は2007年に亡くなっ著者R・D・ウィングフィールドの遺作となりました。


最終作でのフロストは史上最大のピンチに陥ります。経費のちょろまかしがマレット署長にばれデントン署を追われることになったのです。スキナー警部という新たな手強い敵も現れます。


そしていつものように立て続けに起こる事件。人間の足をくわえた犬が現れる一方、相次いで行方不明になる少年少女。異物が混入されたミルクが置かれたスーパーマーケットには脅迫電話があり、腐乱死体発見の一報が入ります。


マレット署長がいい恰好をし署員の大半を隣の署へ応援に貸し出したため、デントン署の人手不足は尋常ではありません。フロストには満足に寝る時間も食べる時間もありません。


そんなフロスト警部のもうお馴染みの大暴走が事件の解決に繋がり一人の被害者が救出されます。世相を反映するような残虐で救いようのない結末にもフロスト警部のくだらな過ぎるジョークは炸裂します。


カラッと乾いた空気に肩の力が抜けていくのが私にとってジャック・フロストの最大の魅力。フロストがいつか言っていたように、『山のような胸くそ悪くなる事件を前にして冗談を言うのは因果な仕事をいくらかでも楽にするため』でしょう。


とんでもない手口を使ってデントン署にもまんまと残れそう。フロスト警部のニンマリした顔で、シリーズは完となりました。


by cuckoo2006 | 2017-09-20 13:38 | 海外ミステリー | Trackback | Comments(0)
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