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「三人は帰った」 アグネス・キース〔著〕

私の父は、東京外国語学校(現東京外語大)マレー語部貿易科を卒業後、協和鉱業(のちに帝国石油へ吸収合併)へ入社、1940年にボルネオへ赴任し、戦争が始まった翌年に強制収容所に収容された経験を持っている。

「三人は帰った」の著者アグネス・キースは、森林監督指導官として英国から派遣された夫に伴い、北ボルネオに居住、日本軍に拘束され1942年から3年半を強制収容所に収容された。

奇しくも同じ時期に、父はボルネオのオランダ領で、著者はボルネオの英国領で、捕虜として拘束されたわけである。

1950年にこの「THREE CAME HOME」は映画化され、父は同じ経験をした者として興味を持ったのだが、日本では公開されず、作品を見る機会は得られなかった。

歳月は流れ、今年の春、老父は偶然、ある講演会でこの「三人が帰った」の話題を耳にし、映画の原作となった本があることを初めて知ったそうだ。調べてみると全国に三つの古書店に在庫があった。やがて名古屋の古本屋から老父の元に黄ばんだ本が届いた。

前置きが長くなってしまったが、この物語は、1942年から北ボルネオの母子捕虜収容所で3年半の年月を生き抜いた著者アグネス・キースの体験談である。

まず、驚いたのは、収容所生活の記録の克明さ。天候、衣食住、人間関係などが詳細に綴られている。筆記用具を没収され、書いたものが見つかれば罰せられる環境の中で、長男のぬいぐるみの中にまで隠した膨大なメモ類をまとめたのがこの本。
ボルネオの生活を描いた「風下の国」の著書があり、新聞記者の経歴も持つ著者のジャーナリスト魂に敬服した。

戦争が長引くに連れ、過酷さを増す収容所での暮らし、食べられるものすべてを口に入れ、密輸、盗みあらゆることをして子供と生き延びる。収容所生活に耐えていく唯一の道は泣かないで笑うこと、と自分に言い聞かす彼女の快活さと勇気が際立っている。

そして、著者は、愛国心や日本軍への憎しみによってではなく、「戦争こそが罪」という視点で本を書いている。「戦争それ自身が人道に対する罪」であると。上梓されたのが1946年ということを考えると驚くほど冷静で公平な視点だと思う。

今回、父が本と一緒に入手したビデオ「THREE CAME HOME」も見た。主演はクローデット・コルベール、収容所司令官役で早川雪洲が出演している。
最後に男性捕虜収容所から解放された夫と家族三人が再会する場面では涙が出た。
このラスト・シーンが、帰って来なかった夫達、息子達、二度と再会を果たすことが出来なかったたくさんの家族のことを連想させずにはおかなかったからである。

戦争が終り、自由の身となっても、ほとんど死ぬくらいの目にあってきた自分達には肉体的にも精神的にももう楽しむという感情が残っていなかった、というくだりには胸が塞がれる思いだった。

戦争とは食べるものがなくなること、清潔が保てなくなること、病気になっても医者にかかれないこと、本が読めないこと、ものが言えないこと、そして弱い者から順番に死んで行くこと・・・この命の記録を読んでの切実な感想だった。

私の父は、ボルネオからオーストラリアへ抑留され終戦と同時に引揚げ船で帰国。
この秋、90歳になった父の若かりし姿も思い浮かべながら、びっしり細かい字が並んだ黄ばんで紙質の悪い本を読み終えました。
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by cuckoo2006 | 2006-11-22 22:28 | 本(外国のもの) | Trackback | Comments(4)
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Commented at 2011-02-10 01:02
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by cuckoo2006 at 2011-02-10 21:04
お母様は戦後すぐに翻訳本を入手されたのですね。お兄様のご事情があっての上で本を読まれたことに僭越ですが敬意を表します。本が見つかると良いですね。私の父はお陰様で無事におります。うれしいコメントありがとうございました。
Commented at 2012-01-16 02:07 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by cuckoo2006 at 2012-01-18 20:01
鍵コメさん、こんにちは。
父は衰えまして聴き取りのお役に立つのは難しいと思われます。
残念です。
この記事は5年ほど前に書いたものですが、今でも良く検索ワードに上がっており「三人は帰った」が歴史上の資料としても貴重な本であることが解り嬉しく思います。
映画THREE CAME HOMEがYouTubeで観られることも知りました。
ありがとうございました。
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