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「ゴリオ爺さん」上・下 バルザック〔著〕
『奢侈と虚栄、情欲とエゴイズムが錯綜するパリ社交界に暮す愛娘二人に全財産を注ぎ込んで、貧乏下宿の屋根裏部屋で窮死するゴリオ爺さん。その孤独な死を看取ったラスティニャックは、出世欲に駆られて、社交界に足を踏み入れたばかりの青年だった。破滅に向う激情を克明に追った本書は、作家の野心とエネルギーが頂点に達した時期に成り、小説群“人間喜劇”の要となる作品である。』
「ゴリオ爺さん」は四つの章から成っています。一章目は「下宿屋」、ヴォケェ夫人の経営するパリの安下宿屋の情景が丹念に描写されます。一癖も二癖もありそうな老若男女七名の下宿人達、この章は面白く読みました。バルザック、これは歯が立ちそうです。 二章目から物語は下宿人の一人、貧乏学生ラスティニヤックの目を通して描かれます。野心を抱き社交界へ挑んで行くラスティニヤック。19世紀パリの社交界の恋愛の主流は、富裕な夫を持つ人妻と年若き青年達だったようです。青年は、恋の駆け引き、そして人生の駆け引きを学んでいきます。ここからの展開は、私にはもう退屈の一言、辟易しました。社会を人間を一つずつ知っていく青年の目に感情移入できればもう少し面白く読めたかもしれません。 この章と次の章をノロノロうんざり読んだ後、最終章の「父親の死」でエンジン全開になりました。下巻の半分くらいからようやく面白くなる本は、ちょっとばかりの快感。ここまで我慢の末、登り詰めた者だけが味わえる絶景かな!というわけです。 娘達にも見捨てられ、ゴリオ爺さんが死の床で本心を語り始めます。「娘達は私のことなど一度も愛したことなどないーとっくに分かっていたけれども気付かないふりをしていた、信じたくなかったー」終盤一気に畳み掛けるくだりは胸に迫りました。 何と言ってもバルザックの心理描写が興味深かった。善良で真面目で何もかも我慢してしまうゴリオ爺さんが、周りの者や娘に軽んじられていく様子などは胸につまされるものがありました。そして、ゴリオ爺さんの傍らで青年ラスティニヤックは、人生の処世術を学んで行きます。随所に見られる辛辣な人間描写が真実を突いていました。 カビ臭くて読みにくかったけれども、やはり上質な小説に間違いないと思います。
by cuckoo2006
| 2006-12-12 10:31
| 本(外国のもの)
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Comments(2)
僕は今、島田洋七著「がばいばあちゃんの笑顔で生きんしゃい!」を読んでいます。軽い短編なのですぐに読み終えました。ウツになっていた僕に、福島の柳友が手紙と一緒に送ってくれました。僕はこのタイプの本を、自分で買うということはありません。しかし、読んでみるとなかなか含蓄があり、ウツの僕は元気付けられました。
本屋へ行くと、どうしても自分好みの本ばかり買ってしまします。そうすると、思想が固まってしまい頑固になるような気がします。たまには、他人がくれた本、薦めてくれた本を読むのはいい勉強になります。20年ほど前に、知人から松本清張の本を100冊ほど頂きました。当時は推理小説に興味がなかったのですが、読んでみると面白く瞬く間に100冊を読破しました。さらに自分で本屋に行き買い足しました。その中には、僕の愛読書の一つになった「昭和史発掘」もありました。 他人の意見は聞くもの、他人がくれた本は読むのだと思いました。
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cuckoo2006 at 2006-12-15 13:05
楽生さん、こんにちは!
本を送って励ましてくれるなんて素敵ですね。 私も島田洋七のばあちゃんのお話、大好きで、テレビで喋っていると聞き入ってしまいます。今、「佐賀のがばいばあちゃん」の映画も上映中ですよね。 >他人の意見は聞くもの、他人がくれた本は読むのだと思いました。 楽生さんのお友達の熱烈な推薦がなければ私もきっと「フラガール」は観てなかったと思います。ラッキーでした。 それにしても松本清張100冊読破とは凄い。瞬く間に100冊読破させる清張も凄いですよね。「昭和史発掘」は推理小説ではないのかな?しっかりメモしました。 また、これはというお薦めがありましたら教えてくださいね。 コメントありがとうございました。Akiko
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