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「眉山」 さだまさし〔著〕
『東京で働く咲子は、故郷の徳島で一人暮らす母が末期癌で数ヶ月の命と告知される。徳島に滞在し、母を看取ろうと決心した矢先、咲子は母が自分に黙って「献体」を申し込んでいたことを知る。それはなぜなのか?やがて咲子は、まだ会ったことのない父の存在と、母の想いに辿り着く――。毅然と生きてきた女性の切なく苦しい愛が胸をうつ長編小説。』(文庫本裏表紙より)
香川のこんぴらさんから徳島へ三日間の一人旅をして来ました。 鞄に入れた文庫本は、映画にもなった、さだまさしの「眉山」です。 万葉集にも詠われ、街を見守るように優しい稜線をみせる眉山に、市内を隆々と流れる吉野川。たおやかな自然に、人形浄瑠璃、阿波踊りといった道具立ても華やかに、徳島の魅力を存分に伝えてくれます。 眉山へのロープウェーを待つベンチで、また人形浄瑠璃を見学できる「阿波十郎兵衛屋敷」の客席でページをめくり、さながら本の中に入り込んだような臨場感を味わいました。ゼイタクな読書です。「阿波踊り会館」では、男踊り、女踊りの解説も興味深く、阿波踊りの上演に魅せられました。演舞場へ“連”が次々に踊り込む場面が、この本のクライマックスとなります。 誰にも告げることなく母が希望した「献体」について書かれた部分には、作者の並々ならぬ力の入り具合を感じました。一番伝えたかったことは、ここではないかな、と思いました。けれども、残念ながら、物語の筋立てそのものには、もう一つ新鮮さがありません。 昔から、さだまさしの歌に感じる“物語性”に引かれてきましたが、その中でも、日常の何気ない一瞬を切り取ったような曲が好みでした。例えば、「雨宿り」、「主人公」、「案山子」などなど。そのような歌とは反対に、この「眉山」は、舞台映えのする人物設定が、反ってストーリーを類型的にしてしまった印象です。不治の病、会ったことのない父、一人生きる母の姿勢の完璧さ、といったものに、現実感は薄く、少々古典的に思えました。 とは言っても、四国の旅に彩りを添えてくれた本書に感謝! 瀬戸大橋からの“海の箱庭”のような眺めと同じくらい、思い出深い一冊になりました。
by cuckoo2006
| 2007-12-07 17:18
| 本(日本のもの)
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Comments(2)
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by
楽生
at 2007-12-11 08:34
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>香川のこんぴらさんから徳島へ三日間の一人旅をして来ました。
僕も10月27日~28日に徳島に行きました。四国88ヶ所巡りや阿波踊り等で20回くらい四国には行ってますので、章子さん旅の様子目に浮かびました。 四国は観光名所もたくさんありますが、食べ物も美味しいものがいろいろあります。讃岐うどんはもちろん、阿波牛、阿波尾鶏、徳島ラーメ等々、そして味付けは大阪と大変よく似ています。
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cuckoo2006 at 2007-12-11 19:28
ベートーベンの「鳴門市ドイツ館」に行きたかったのですが、閉館時間が早くて叶いませんでした。あと、楽生さんもここに立ち寄ったのではないかなあと思いつつ、徳島駅「CITY」前の「可成家」で、徳島ラーメンを食べましたよ。こってりのとんこつ味が美味しかったです。麺類の旅でした。
四国へ20回とは凄いですね。私も鳴門の一番札所の「霊山寺」だけ参りたかったのですが、足がなく断念。渦潮は、「小潮」でしたが、大鳴門橋の架かる鳴門海峡は、雄大な眺めでした。それから、市内を流れる吉野川の豊かさに感動。街なかを、あれほどの水を湛えた川が流れるのを初めて見ました。 また、旅のお便り、お待ちしていますね!
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