小説、映画、絵手紙、都々逸
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2017年 08月 23日 ( 1 )

「蜜蜂と遠雷」恩田陸〔著〕

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私はまだ、音楽の神様に愛されているだろうか?ピアノコンクールを舞台に、人間の才能と運命、そして音楽を描き切った青春群像小説。著者渾身、文句なしの最高傑作!

内容(「BOOK」データベースより)


 

 一冊の本を読み終えた達成感を味わいました。これは久しぶりの感覚です。海に面した架空の地方都市「芳ヶ江」で行われる国際ピアノコンクール。その1次、2次、3次予選と本選の全てが記録されています。

 

 実は物語のあらすじを聞いて、なかなか読む気になれませんでした。音楽に素養のない自分には苦手分野の小説。おまけに2段組みの本は腕が痛くなるほどの重さです。それでも数ページ捲ると苦手意識はどこかへ飛んでいきました。

 

 ーー明るい野山を群れ飛ぶ無数の蜜蜂は、世界を祝福する音符であるーー

 ーー世界とは、いつもなんという至上の音楽に満たされていたことだろうーー

 

 光が降り注ぐような序章とともに、キャンパス地のカバンを肩から、たすき掛けにした『風間塵』が登場します。彼の魅力が、この物語の魅力でした。私の頭の中では、振り払っても振り払っても最後まで、『風間塵』の顔が、連勝記録を伸ばしていた棋士の藤井総太四段の顔でした。私のような読者、他にもいたのではないでしょうか。若き天才というものは茫洋として自然体なのかも知れません。


 類い稀な才能に並外れた情熱、『風間塵』はじめ主要な4名のコンテスタント達は、凡人の手の届かぬ所に立っています。そんな彼等一人一人の苦しみと不安が吐露されます。そして物語は、コンクールの審査員、取材記者、友人、家族と視点を移しながら進んでいきます。


 ピアノ曲、一曲一曲を表現する言葉の多彩さ、イメージの広がりに圧倒されました。時に文学的に時に感覚的に、音符が文字に変換されていくようです。聴いたことのない曲や作曲家が身近に感じられました。クラシックを聞くという趣味のない自分が退屈せずに読んでいることが不思議な気持です。


 一体この中の誰が優勝するのか、読み進むに連れ興味はそこへ集約されます。最後のページに、すべての順位が明らかにされます。並んだ名前の一人一人をねぎらいたい気持でした。ちょっとした仕掛けもあり後味がぐっと良くなります。

 

 本を閉じた時、2週間に渡るコンクールのすべてを観客席で見届けた思いでした。直木賞・本屋大賞ダブル受賞、納得の一冊です。



by cuckoo2006 | 2017-08-23 20:39 | 本(日本のもの) | Trackback | Comments(0)