小説、映画、絵手紙、都々逸
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カテゴリ:邦画( 59 )

「永い言い訳」監督西川美和

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解説

「ゆれる」「ディア・ドクター」の西川美和監督が、第153回直木賞候補作にもなった自著を自身の監督、脚本により映画化。人気作家の津村啓こと衣笠幸夫は、突然のバス事故により、長年連れ添った妻を失うが、妻との間にはすでに愛情と呼べるようなものは存在せず、妻を亡くして悲しみにくれる夫を演じることしかできなかった。そんなある時、幸夫は同じ事故で亡くなった妻の親友の遺族と出会う。幸夫と同じように妻を亡くしたトラック運転手の大宮は、幼い2人の子どもを遺して旅立った妻の死に憔悴していた。その様子を目にした幸夫は、大宮家へ通い、兄妹の面倒を見ることを申し出る。なぜそのようなことを口にしたのか、その理由は幸夫自身にもよくわかっていなかったが……。

(eiga.comより)





 衝撃的な作品でした。衝撃的という言葉を使ったのは多分「ブラックスワン」以来。ブログを始めて10年になりますが、衝撃の種類は違えど
とこの「永い言い訳」は私の中で飛び抜けて衝撃度の高い映画です。


 どんなふうに衝撃的かと言いますと、自分の中の過去の未解決なままの感情が湧き上がってくるような感覚。胸のザワザワが数日間、後を引きました。そういう意味で不思議な力を持った映画です。


 妻・夏子(深津絵里)が夫・幸夫(本木雅弘)の髪を切っているシーンから物語は幕を開けます。美容院かなと思わせた場所は瀟洒なマンションのリビングルーム。些細なことで苛立っている夫を、優しさと強さで受け止めているように見える妻。このやり取りが息苦しいほどにリアルなのです。只ならぬ気配がスクリーンから伝わります。


 スキー旅行の出で立ちで親友とはしゃぎ合う妻。夜行バスの中の楽しそうな様子。著名な美容師として活躍する妻は、周囲からも信頼され精神的に安定しているように見えます。その妻がバスの中で見せた横顔が、この作品を象徴する映像です。白々と明けていく窓の外を眺める妻の横顔が胸に焼き付きました。


 妻を送り出した後、招き入れた愛人(黒木華)への「いらっしゃーい」の幸夫の声。押さえようとしても隠せない弾んだ甘さ。モッくんは上手かった!本木雅弘を見るのは
以来になりますが、幸夫が見せるが様々な表情が自然で巧みでした。


 あれほど鼻持ちならなかった幸夫が人が変わったように、バス事故で妻と一緒に死んだ親友の遺した子供達(兄・真平と妹・灯)の世話をしに行くことになります。かなり唐突にも感じますが、そうでもしなければ生きていられないほど彼の苦しみは大きかったのでしょう。


 夜、塾の帰りに眠り込んだ真平はバス停を乗り過ごしてしまいます。迎えに出ていた幸夫は次のバス停まで自転車を飛ばし、バスに駆け上がって真平を起こします。「ボク疲れちゃって・・」と寝ぼけながら言い訳する真平。この場面が泣けました。感情を表に出すことが不得手な幸夫と真平は、相通ずるものをお互いに感じます。幸夫と子供達の交流の中で、一番沁みたシーンでした。


 明るく切なく、遺された者達は日々の暮らしを生きていきます。妻の人生は幸せだったのだろうか?観ている間中、こちらまで問い掛けられている気持ちになりました。夏子が携帯電話の未送信フォルダに残したメールは、その時の真実。それでも物書きとしてスランプに苛立つ夫を心のどこかで理解していたのではないか、とも思いたい。今でも妻の横顔がフラッシュバックします。


 来春発表の日本アカデミー賞総なめ間違いナシ、でありましょう!



@TOHOシネマズ西新井


by cuckoo2006 | 2016-11-19 13:59 | 邦画 | Trackback | Comments(0)

「シン・ゴジラ」監督庵野秀明

d0074962_13520937.jpg解説:「ゴジラ FINAL WARS」(2004)以来12年ぶりに東宝が製作したオリジナルの「ゴジラ」映画。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の庵野秀明が総監督・脚本を務め、「のぼうの城」「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」の樋口真嗣が監督、同じく「のぼうの城」「進撃の巨人」などで特撮監督を務めた尾上克郎を准監督に迎え、ハリウッド版「GODZILLA」に登場したゴジラを上回る、体長118.5メートルという史上最大のゴジラをフルCGでスクリーンに描き出す。内閣官房副長官・矢口蘭堂を演じる長谷川博己、内閣総理大臣補佐官・赤坂秀樹役の竹野内豊、米国大統領特使カヨコ・アン・パタースン役の石原さとみをメインキャストに、キャストには総勢328人が出演。加えて、狂言師の野村萬斎がゴジラのモーションキャプチャーアクターとして参加している。(eiga.comより)

 これは、いわゆる怪獣映画ではありません。
ゴジラは、人間が、私達の社会が生み出したもの。ゴジラが突きつける真実がなかなかに深く、また2時間退屈するところのない面白さです。
 
 東京湾から、横浜沖から、上陸したゴジラが都会の幹線道路をただただ歩く姿に爽快感が湧いてきます。不思議にもゴジラに感情移入してしまいました。

 非常事態を目の前に、政府は緊急対策委員会を立ち上げ会議と手続きに終始するのみ。御用学者はまるで役に立たない。事態収束のため東京壊滅を辞さない国連決議が採択されようとする中、唯一頼みの対応チームは最後の矢を放つ。一方、臨時内閣で総理を押し付けられた昼行燈のような農水大臣は、、、

 ゴジラが総攻撃される場面では何故か悲しい気持ちになりました。現実社会の中でゴジラが象徴する様々なもの、そこから幾つもの事が連想されました。右手に国技館を見たラストシーンの風景は衝撃的です。

 「面白かったねーー!!」これほど夫婦の意見が一致した映画は初めてかも知れません。


@TOHOシネマズ西新井


by cuckoo2006 | 2016-08-12 16:26 | 邦画 | Trackback | Comments(2)

「母と暮らせば」監督脚本 山田洋次


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解説 1948年8月9日。長崎で助産婦をして暮らす伸子の前に、3年前に原爆で亡くしたはずの息子・浩二がひょっこり現れる。「母さんは諦めが悪いからなかなか出てこれなかったんだよ」。その日から、浩二は時々伸子の前に現れるようになる。ふたりはたくさんの話をするが、一番の関心は浩二の恋人・町子のことだった。「いつかあの子の幸せも考えなきゃね」。ふたりの時間は、奇妙だったけれど、楽しかった。その幸せは永遠に続くようにみえた―。(TOHOシネマズ)

キャスト

吉永小百合 福原伸子

二宮和也  福原浩二

黒木華   佐多町子

浅野忠信  黒田

加藤健一 上海のおじさん

 原爆投下から3年が過ぎた長崎。戦争で大切な人を失った人々の夏から秋、初雪の舞う新年までが描かれます。

 長崎湾を見渡す墓の前で、「もう、諦めた、忘れましょう」と息子の恋人・町子に声を掛ける母・伸子。町子は一人になった伸子にこれまで何くれとなく力を貸してくれていました。

 シイシイシイと蝉の鳴く中、汗を拭き拭き家までの急な坂を上り下りする二人。この夏の季節が一番良かった。心の綺麗な人々が織りなすドラマに現実感はやや薄れますが、山田洋次監督の世界が心地良く沁みます。

 一緒に観た友人から「マザコンぶりがキモチワルイ」と言われてしまった浩二ですが、確かに出かける時、母から返事があるまで玄関で「カーサン!カーサン!行って来ます!」と大声を出すのは小学生まででしょう。

 母からも「あんたは男のくせにお喋り」と笑われる浩二ですが、母ではなく息子をお喋りの設定にしたのは、吉永小百合が母親役だからこそでしょう。

 そんな中、母が最後に見せる、幸福になる町子への嫉妬。吉永小百合が顔を醜く歪め感情を爆発させます。スクリーンがグンと近づいた瞬間でした。「母さんは悪か人間よ」という母にじっと寄り添うしかない浩二でした。

 一緒に観た友人に「死を美化している」と指摘されたラストシーンですが、町子に浩二を忘れ幸せになりなさい、と告げた伸子の心身は限界を越えていたのでしょう。もうこれで良かったのだと思えました。

 物語の余韻が悲しく、悲しい気持ちを少しの間引きずる、そんな作品でした。


@新宿ピカデリー


by cuckoo2006 | 2016-02-14 13:39 | 邦画 | Trackback | Comments(0)

「恋人たち」監督・原作・脚本橋口亮輔



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解説

「ぐるりのこと。」で数々の映画賞を受賞した橋口亮輔監督が、同作以来7年ぶりに手がけた長編監督作。橋口監督のオリジナル脚本作品で、不器用だがひたむきに日常を生きる人々の姿を、時折笑いを交えながらも繊細に描き出した。通り魔事件で妻を失い、橋梁点検の仕事をしながら裁判のために奔走するアツシ。そりがあわない姑や自分に関心のない夫との平凡な生活の中で、突如現れた男に心揺れ動く主婦・瞳子。親友への想いを胸に秘めた同性愛者で完璧主義のエリート弁護士・四ノ宮。3人はもがき苦しみながらも、人とのつながりを通し、かけがえのないものに気付いていく。主人公となる3人はオーディションで新人を選出し、橋口監督が彼らにあわせてキャラクターをあて書きした。リリー・フランキー、木野花、光石研ら実力派が脇を固める。(映画comより)

キャスト

篠原篤 篠塚アツシ

成嶋瞳子 高橋瞳子

池田良 四ノ宮

不思議な映画でした。
「今を生きるすべての人に送る絶望と再生の物語」とポスターにあります。


 物語はタイトルバックもなく、男性の独白から始まります。主役の三人が素人っぽいこともありドキュメンタリーでも見ているような感覚です。これぞ橋口監督の狙い通りでしょう。

 それぞれの場所で閉塞感を抱えながら生きる三人の人間。終始、暗く重く乾いたトーンは、見て心楽しくなるものではないのですが、目が離せないのは日常の些細なやり取りが自分と重なるからでしょう。

 新人俳優が生身の感情をぶつける場面は、臨場感一杯。登場人物が脈絡のないことを語り出すのも、これはひょっとしてアドリブなのでは?と思わせる緊張感があります。有名俳優だったらこうは思わないでしょう。

 妻を通り魔に殺された篠塚が一人感情を爆発させ「お前らにおんなじことが起きたら、首括ってそれで終わりやぞ」と怒鳴るところには心を揺さぶられました。

 その篠塚が風呂場で死のうとする。死のうとしたその瞬間こそが、地獄の底に爪先がチョンと触れた瞬間だったのでしょう。地獄の釜の底まで落ちればあとは浮上する道理。その後、彼の表情が変わりました。あ、今最悪の底を蹴ったな、という私自身のちっぽけな感覚も思い出しました。

 弁護士の四宮が、切れた電話に話し掛けるところは、切ない。親友からのこの疑いは辛かったでしょう。瞳子が駆け落ちしようとした男が〇〇〇だったことは幸いでした。篠塚が受け取った薬物も△△△で、本当に本当に良かったのです。
 
 映画を観終わった後、これは到底感想を書ける代物ではないなと思ったのですが、一緒に観た友人とあーだこーだ話すうちに、案外いい映画を観たのだ、という気になってきました。書きたいことも浮かんできました。

 この作品は、あちらにもこちらにも差障りアリでテレビで放映しないのはもちろん映画賞の対象にもならないでしょう。賞を取ったら日本アカデミー賞を見直します。

 それでも、生きていこう、生きているだけでいいのだ、と心が感じ取れた作品でした。


@丸の内toei

 



by cuckoo2006 | 2016-01-23 22:48 | 邦画 | Trackback | Comments(0)

「日本のいちばん長い日」監督原田眞人

a0163466_8543854.jpg解説 昭和史研究の第一人者・半藤一利の傑作ノンフィクション「日本のいちばん長い日 決定版」を、「クライマーズ・ハイ」「わが母の記」の原田眞人監督が映画化。1945年8月15日に玉音放送で戦争降伏が国民に知らされるまでに何があったのか、歴史の舞台裏を描く。太平洋戦争末期の45年7月、連合国軍にポツダム宣言受諾を要求された日本は降伏か本土決戦かに揺れ、連日連夜の閣議で議論は紛糾。結論の出ないまま広島、長崎に相次いで原子爆弾が投下される。一億玉砕論も渦巻く中、阿南惟幾陸軍大臣や鈴木貫太郎首相、そして昭和天皇は決断に苦悩する。出演は阿南惟幾役の役所広司、昭和天皇役の本木雅弘をはじめ、松坂桃李、堤真一、山崎努ら。(eiga.comより)
キャスト
役所広司 阿南惟幾
本木雅弘 昭和天皇
松坂桃李 畑中健二
堤真一  迫水久常
山崎努  鈴木貫太郎

 この映画は観たいというよりも今観ておかなければという思いでシネコンへ向かいました。

 1945年4月、鈴木貫太郎が昭和天皇に「どうか気持ちを曲げて受けてほしい」と直々に総理大臣就任を頼まれる場面からドラマは始まります。この時鈴木は77歳。歴代総理就任時の最高年齢でした。

 「大変なことになった」と家族にこぼす鈴木に長男は仕事を辞め父の秘書官になると申し出ます。家族も2・26事件で瀕死の重傷を負いながらも生還したオジイチャンなら大丈夫と努めて明るく受け止めます。鈴木貫太郎と阿南惟幾(あなみこれちか)陸軍大臣の家庭生活が折り目正しくもほのぼのと挟み込まれ身近に感じられます。

 7月、ポツダム宣言受諾の要求に連日連夜、閣議が紛糾する場面では、現在迷走中の東京五輪の国立競技場とエンブレム問題がどうしても重なってきます。責任を取る覚悟のあるリーダーが一人もいない。今の日本で重大局面を迎えた時、命を賭して事を行える政治家なんているのだろうか?スクリーンを眺めながら、そちらの方で背筋が寒くなりました。

 無条件降伏を受諾するか否か閣議の結論が得られないまま、8月6日広島、8月9日長崎に原爆が投下されます。戦争終結に向けて天皇の聖断を求める首相官邸と本土決戦へ突き進む陸軍。めまぐるしく同時進行する数日間の舞台裏が臨場感を持って描かれます。

 「総辞職など有り得ない。この内閣で戦争を終わらす。ロシアが加わる前に相手がアメリカのうちに始末しなければならない」と軍部強硬派からの私刑を覚悟し法を破っても戦争を終わらせようとする鈴木貫太郎。陸軍大臣を辞任する道を断ち終戦の詔勅に署名した阿南。その後、阿南は部下の介錯を断り自ら壮絶な最期を遂げます。

 胆の据わり方が違う人間があの場に居たことが良く解りました。一方で、それほど胆が据わってない普通の人々の行動も印象に残りました。青年将校に対し、玉音放送のテープを隠し持つ侍従達の言葉の機転や放送局員のとっさの判断などたくさんの人々の力がありました。

 元木雅弘演じる昭和天皇は、その口調や物腰が文句のつけようがないほど見事です。でも、天皇はやはり映画の中の天皇だった。もちろん他の登場人物も映画映えするように描かれてはいるとは思いますが天皇にはダイレクトにそれを感じました。2006年のロシア制作「太陽」の中のイッセー尾形の演じた昭和天皇が私の中で色濃く残っています。

 国政を担う方々に是非見ていただきたい映画。戦争は絶対に初めてはならない、というのが感想のすべてです。


@TOHOシネマズ西新井
by cuckoo2006 | 2015-09-11 13:01 | 邦画 | Trackback | Comments(0)

「紙の月」監督吉田大八

 a0163466_1240358.jpg解説「八日目の蝉」や直木賞受賞作「対岸の彼女」など多数の作品で人気を誇る作家・角田光代のベストセラーで、テレビドラマ化もされた「紙の月」を、「桐島、部活やめるってよ」の吉田大八監督が映画化。宮沢りえが7年ぶりに映画主演を務め、年下の恋人のため顧客の金を横領してしまう銀行員の女性を演じた。バブル崩壊直後の1994年。夫と2人で暮らす主婦・梅澤梨花は、銀行の契約社員として外回りの仕事に従事し、その丁寧な仕事ぶりで周囲にも評価されていた。一見すると何不自由ない生活を送っているように見えた梨花だが、自分への関心が薄い夫との関係にむなしさを感じていた。そんなある日、年下の大学生・光太と出会った梨花は、光太と過ごすうちに顧客の預金に手をつけてしまう。最初は1万円を借りただけのつもりだったが、次第にその行為はエスカレートしていき……。2014年・第27回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品され、最優秀女優賞と観客賞を受賞した。(映画comより)

 
 面白かった!
何と言っても宮沢りえの存在感が圧倒的です。その表情や佇まいから目が離せませんでした。

 冒頭の朝の通勤風景からただならぬ気配が醸し出されます。隣り合わせた他人のように見えた男性が、ちょっとしたやり取りで夫と分かる。何かを耐えているような諦めているような悲しんでいるような、もう若くはないヒロイン梨花。凄みのあるような美しさに引き込まれました。

 夫と慎ましく幸せに暮らしている銀行の契約社員の彼女が何故横領に手を染めたのか?明確な理由は一つも説明されません。それでも顧客の自宅を訪れる梨花の日常や、夫との間にある小さな違和感が描かれ、彼女と呼吸を合わせてその場にいる感覚になってきます。梨花自身も気づかないうちに心は限界のところにいたのでしょう。

 讃美歌に乗せて梨花のミッションスクールでの少女時代が差し挟まれます。未開発国の子供への寄付のエピソードに彼女の内の“聖なるもの”が浮かび上がります。

 どんな手段を取ろうと誰かを喜ばせることに幸福を感じていた梨花。固辞する光太に初めてお金を受け取らせ「ありがとう」と言われた梨花の輝くような笑顔が印象的です。梨花がプレゼントした時計に夫が違う反応をみせていたら事態は変わっていたのかも知れません。

 それでも「これから二人の関係が変わってしまうよ」と心配した光太自身が変貌していくのは当然の成り行きだったのでしょう。

 夫もどちらかと言えば優しい夫、特別に悪い人間も出てこない、それでも普通に生きていくことはこんなにも大変なこと。みんなギリギリのところで踏ん張っているのだと思えました。

 最後に、梨花はこれからどうなるのか?私は梨花よりも夫の方が気になってしまいした。きっとこの夫が全額を銀行に弁償し事件は表面化しなかったのではないか。夫は会社にも事件を隠し苦しみを抱えて生きていくのではないか。夫も十分に可哀そう。

 心が解放されたような癒されたような不思議な後味がありました。

@TOHOシネマズ西新井
by cuckoo2006 | 2014-12-05 11:43 | 邦画 | Trackback | Comments(0)

「小さいおうち」監督山田洋次

a0163466_1532483.jpg解説 名匠・山田洋次の82作目となる監督作で、第143回直木賞を受賞した中島京子の小説を映画化。昭和11年、田舎から出てきた純真な娘・布宮タキは、東京郊外に建つモダンな赤い三角屋根の小さな家で女中として働き始める。家の主人で玩具会社に勤める平井雅樹、その妻・時子、2人の5歳になる息子の恭一とともに穏やかな日々を送っていたある日、雅樹の部下で板倉正治という青年が現れ、時子の心が板倉へと傾いていく。それから60数年後、晩年のタキが大学ノートにつづった自叙伝を読んだタキの親類・荒井健史は、それまで秘められていた真実を知る。時子役に松たか子が扮し、晩年のタキを倍賞千恵子、若き日のタキを「舟を編む」「シャニダールの花」の黒木華が演じる。 (eiga.comより)


 これは良かった!好みの映画でした。

山形から東京へ働きに出たタキ(黒木華)は、山の手のサラリーマン家庭で女中として働き始めます。さっぱりした気性の美しい妻・時子(松たか子)から家族の一員のように迎えられ、タキは赤い屋根の家での毎日に心を弾ませます。

 気品と奔放さを持つ時子にぴったり嵌まった松たか子が魅力的。そして、それを上回る存在感を放つのがタキです。スクリーンの端にいるときでさえ、タキの顔つきや物腰に目が吸い寄せられます。女優さん達の身のこなしや佇まいにうっとりし通しでした。時子やタキが着物に白い割烹着をつけ掃除をしたり、ポットで紅茶を入れたりするシーンに時代が匂い立ちます。

 高熱を出し足の後遺症が心配される坊っちゃまはマッサージに通わなければならなくなる。学校までの雪道を何時間も歩いてきたタキは「これは私の仕事です」と坊っちゃまを背負い毎日療養所へ出かけます。家族の役に立てるタキの嬉しさにこちらまで嬉しくなってきます。

 年の初め、旦那様(片岡孝太郎)の会社の新入社員・板倉(吉岡秀隆)が年始の挨拶にやって来ます。人々の暮らしにも戦争の足音は刻一刻と近づいて来ました、、、、

 晩年のタキ(倍賞千恵子)が親類の子(妻夫木聡)に昔話を聴かせる形で物語は進みます。観終わって、幾つかの“なぜ”が観客に委ねられ、想像が駆け巡ります。

 タキは、なぜ奥様の言いつけに背いたのか?主人一家を守りたかった、それだけが理由ではないように思えました。奥様が大好き、けれどそれと同じくらいタキに大切なものがあったのではないか。タキが最後に与えられた“ひと時”を自分だけの宝物ものにしておきたかったのではないか、、、

 そう考えると美しいだけではない、それぞれの胸の奥が浮かび上がってきます。物語の余白が心に留まりました。
 


@TOHOシネマズ西新井
by cuckoo2006 | 2014-02-16 15:45 | 邦画 | Trackback(1) | Comments(0)

「清須会議」監督三谷幸喜

a0163466_9473031.jpg解説 三谷幸喜が17年ぶりに書き下ろした小説を自ら脚色し、メガホンをとって映画化。本能寺の変で織田信長が死去した後、家臣の柴田勝家と羽柴(豊臣)秀吉らが後継者を決め、日本史上初めて合議によって歴史が動いたとされる清須会議の全貌をオールスターキャストで描く。三谷監督作品では初の時代劇。天正10年(1582年)、本能寺の変で織田信長がこの世を去り、筆頭家老の柴田勝家は信長の三男でしっかり者の信孝を、羽柴秀吉は次男で大うつけ者と噂される信雄をそれぞれ後継者に推薦する。勝家、秀吉がともに思いを寄せる信長の妹・お市は秀吉への恨みから勝家に肩入れし、秀吉は軍師・黒田官兵衛の策で、信長の弟・三十郎信包を味方に引き入れ、家臣たちの人心を掌握していく。やがて後継者を決める会議が開かれ、それぞれの思惑が交錯する。(eiga.comより)

 柴田勝家ファンになりました!

 2011年NHK大河「江~姫たちの戦国」での、(大地康夫さん演ずる)勝家は、いい人だなあ、くらいの印象でしたが、役所・勝家にはホレました。こういう人、大好きです。

 そう思わせるのは、何と言っても秀吉(大泉洋)との対比。天下取りを果たした、その有能さには目を見張りますが、同時に恐ろしさも感じます。敵対する者の懐へも入り込む秀吉は、天性の人たらしなのでしょう。

 勝家を「親父さま」と立てながら、影では「いくさ場でしか生きられない男」と切り捨てる。本当のことなのでしょうが、秀吉に対して、勝家の子供のような正直さ、不器用さ、武骨さが際立ちます。
 
 賢者として知られ、また勝家の盟友である丹羽長秀(小日向文世)も結局は秀吉の術中にはまってしまう。秀吉の言う「自分が天下を治めねば戦乱の世はあと百年続きますぞ」に誰もが納得してしまうのです。

 まあどこの世界でもこんなものだろうなあ、という割り切れなさを、勝家がちょっぴり晴らしてくれます。お市の方(鈴木京香)と一緒になれることになり、「聞いたッ?」と子供のように恋敵の秀吉へ声を弾ませます。可笑しいったらありません。

 憎き秀吉の一番嫌がるであろう相手として勝家を選んだお市の方、また秀吉が起死回生の策として後継者に押す三法師の母・松姫(剛力綾芽)のしたたかさ、時代に翻弄された女性たちも生き生きと描かれます。

 清須会議周辺での光景は、今日も、どこかの会社や都庁、国会で繰り広げられているかも、と思わされました。そして何と言っても、大の柴田勝家贔屓になりました♪


@TOHOシネマズ西新井
by cuckoo2006 | 2014-01-08 12:15 | 邦画 | Trackback | Comments(0)

「そして父になる」監督是枝裕和

a0163466_1775310.jpg解説
是枝裕和監督が福山雅治を主演に迎え、息子が出生時に病院で取り違えられた別の子どもだったことを知らされた父親が抱く苦悩や葛藤を描いたドラマ。大手建設会社に勤務し、都心の高級マンションで妻と息子と暮らす野々宮良多は、人生の勝ち組で誰もがうらやむエリート街道を歩んできた。そんなある日、病院からの電話で、6歳になる息子が出生時に取り違えられた他人の子どもだと判明する。妻のみどりや取り違えの起こった相手方の斎木夫妻は、それぞれ育てた子どもを手放すことに苦しむが、どうせなら早い方がいいという良多の意見で、互いの子どもを“交換”することになるが……。2013年・第66回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、審査員を受賞した。良多を演じる福山は自身初の父親役。妻みどりに尾野真千子、斎木夫妻にリリー・フランキー、真木よう子が扮する。(eiga.comより)


 ちょっと冷静には観ていられないような、過去の未解決な感情が目を覚ますような、やっぱり凄い映画でした。

 赤ちゃん取り違え、という特異な設定のドラマなのですが、どこの家庭でも普遍的に見られる父と息子の関係が浮き彫りにされます。父親の息子に対する期待と失望、その失望を感じ取る妻の悲しみと怒り、幼いながらも父親の期待に応えようとする息子、、、どこにもいそうな家族の姿がありました。

 妻「たまには誉めてやってよ」、夫「ふたりで甘くしてどうするんだよ」
遠い昔に聞いたことがあるようなセリフも。野々宮(福山雅治)の妻(尾野真千子)に感情移入するところが多くありました。

 子供が取り違えられた、もう一方の両親は、小さな電器店を営む斎木夫妻(リリー・フランキー、真木よう子)。斎木家の子供たちは、野々宮家の息子・慶多とは正反対に、今のまんまのお前を丸ごと愛しているよ、というメッセージをシャワーのよう浴びて育ってきました。

 斎木が、野々宮よりも人間として男性として優れている、という話ではありません。けれども、子供が育っていくうえで一番大切なもの、それは、どんなお前であろうとそのまんまで価値がある、という肯定のメッセージを、斎木は頭で考える以前に全身から発信し続けてきたのです。それは、どんなに恵まれた環境であっても、お前は期待に添っていない、という無言のメッセージとは対極にあるものでしょう。

 野々宮が、義母(樹木希林)の助言を慇懃無礼に拒絶したり、斎木が、留守番している義父に、フードコートでカツカレーをお土産にしたりと、小さなエピソードでそれぞれの人となりを見せていきます。当たり前のことですが、大変な事態に直面していても、二組の夫婦はどこにでもあるような日常を生きています。自然でした。私は、野々宮と養母(風吹じゅん)の電話での会話が良かった。成人した子供との手本にしたいような遣り取りです。

 それにしても、慶多はどう見ても斎木さんちの子だよなぁ、あちらへ帰るのがこの子の幸せだなぁ、と思わせてしまうのは、見事な演出力です。愛するが故の期待、そして失望というメッセージを与え続けた息子でも、子供は無条件に親を愛するし、父親の期待に精一杯応えようとする。息子との別れに際し、初めてそのことに気づいた野々宮は、父としてまた人として再生したのでしょう。

 子供を交換するのか、今まで通りに育て続けるのか、、、最後は、どちらにもとれる結末です。私は、自分の中で二転三転しながらも、血の繋がりのある親の方へ帰るように思えました。「パパなんかじゃない!」と叫ぶ息子に、「パパだったんだよ。できそこないでも6年間お前のパパだったんだよ」という過去形の言葉からも、やはり息子と別れる時に初めて本当に彼の父親に成り得た、というふうに感じました。文句なし★★★★★作品です。


@TOHOシネマズ西新井
by cuckoo2006 | 2013-11-14 19:20 | 邦画 | Trackback | Comments(2)

「少年H」監督降旗康男

a0163466_1525849.jpg解説
作家・妹尾河童の自伝的小説で、上下巻あわせて340万部を突破するベストセラーを、「ホタル」「鉄道員(ぽっぽや)」の降旗康男監督が映画化。太平洋戦争下という時代に翻弄されながらも、勇気や信念を貫いて生きた家族の激動の20年間を描き、実生活でも夫婦の水谷豊と伊藤蘭が夫婦役で映画初共演を果たした。昭和初期の神戸。名前のイニシャルから「H(エッチ)」と呼ばれる少年・肇は、好奇心と正義感が強く、厳しい軍事統制下で誰もが口をつぐむ中でも、おかしなことには疑問を呈していく。Hはリベラルな父と博愛精神に溢れる母に見守られ成長し、やがて戦争が終わり15歳になると独り立ちを決意する。(eiga.comより)


 水谷豊演ずる少年Hの父親が、もう良かった!“相棒の右京さん”の面影は微塵もありません。これぞ名優の証ですね。

 「お父ちゃんはどうして戦争に行かへんの?」と幼い娘に訊かれ、「お父ちゃんは、身体も小さいし年取ってるし、、つまり戦争には向かへんのや」と妻(伊藤蘭)にフォローされ、微かな笑みを見せる父親。このお父ちゃんに、とても引かれました。

 紳士服仕立ての確かな腕を持ち、誰に対しても優しく腰が低い。家族にも声一つ荒げることはありませんが、良識と勇気を持ち、世の中の動きを正確に捉えています。

 好奇心いっぱいに飛び跳ねる息子・肇にも、「ええか、今は我慢する時や。あんたも滅多なことしたらあかんよ」と教え諭し、不必要な揉め事を起さぬよう、世の中の流れに逆らわぬよう、家族を守りながらも、困っている人達には陰ながら手を貸します。物事の核心をきちんと掴み、確かな現実対応能力がある。町の英雄って、こういう人のことを言うのでしょう。

 そして、戦争って嫌だ、と心底感じました。お父さんとは正反対の、威張りたがり屋に怒鳴りたがり屋が、お国のためという大義名分のもと、幅を利かす。万歳、万歳、の声が虚しく哀しく響きます。普通の人々も、恐れや不安から疑心暗鬼になり、中傷さえし合う。皆、自分のことしか考える余裕がなくなっていきます。

 「この戦争はいつか終わる。戦争が終わったとき、恥ずかしくない人間になっとらんといけんよ。自分の目で見て、耳で聞き、自分で決めるんや」、そう言っていたお父さんは、戦争が終わったとき、魂の抜け殻のようになってしまいます。何もかも新しくなった世界へすぐには適応できない不器用さこそ、誠実で真っ当な反応に思えました。

 やがて、お父さんも修理したミシンを手にし、再び洋服を作り始めます。再開第一作目のブラウスとスカートを妻が着て見せるのはいいシーンです。そして肇も父と同じ15歳で自立する決心をします。ちゃぶ台を囲む家族に既視感のあるような懐かしさを感じました。そして何より、戦争は吐き気がするくらい嫌なものだ、と実感させてくれる映画。小・中・高校生に是非観てもらいたい作品です。

 
@TOHOシネマズ西新井
by cuckoo2006 | 2013-10-09 16:42 | 邦画 | Trackback | Comments(0)