小説、映画、絵手紙、都々逸
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カテゴリ:洋画( 82 )

「しあわせな人生の選択」監督セスク・ゲイ


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解説 余命わずかな男と彼を取り巻く人々の最期の4日間を描いたドラマ。カナダに住むトマスは長年の友人でスペインに住むフリアンが余命わずかであることを聞き、フリアンのもとを訪れる。治療をあきらめ、身辺整理を始めたフリアンは、愛犬トルーマンの新たな飼い主を探し、アムステルダムの大学に通う息子の誕生日を祝うためにオランダへ旅をする。その中でフリアンとトマスは、昔のように遠慮のない関係に戻っていくが……。主人公フリアン役を「人生スイッチ」のリカルド・ダリン、フリアンの親友役を「トーク・トゥ・ハー」のハビエル・カマラがそれぞれ演じる。監督、脚本のセスク・ゲイは母親の闘病生活の実体験をベースもとに本作を製作し、スペイン版アカデミー賞といわれる第30回ゴヤ賞で作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、脚本賞の5部門を受賞した。

(eiga.comより)



 ストーリー+“犬モノ”に惹かれて観に行きました。人間の日々の営みが発する生暖かなモノ、息や体温や匂いが伝わってくるような映画です。

 

 作品の原題は「トルーマン」。主人公が飼っている大型の老犬の名です。お目当ての犬の登場シーンは予想よりずっと少なかったのですが、涙が込み上げる場面に必ず犬はいるのでした。

 

 スペインで暮らす親友フリアンが余命わずかなことを知り、カナダから駆けつけるトマス。二人が共に過ごす4日間の物語です。フリアンとトマスが肩を並べ町を歩きます。出喰わす友人知人とのやり取りからフリアンがどんな人間か想像されます。

 

 俳優であるフリアンは気ままに本音で生きてきた男。フリアンと、ぶつかったことがある者も今の彼の病状を知っているようです。フリアンと顔を合わせてしまった居心地の悪さや罪悪感が彼らの顔に浮かびます。

 

 そんな時でも、フリアンの隣に温厚そうなトマスが立っていることで雰囲気が少しだけ和みます。トマスの存在に、フリアンと顔を合わせた知り合い、医者や息子でさえ救われた気持になっていることが分かります。トマスが来てくれて本当に良かったと、こちらまでホッとしました。

 

 フリアンは本来の自分のまま、いようと努めます。それでもトマスもフリアンを見守る彼の従姉妹も、フリアンの纏う死の影に息苦しさを感じます。帰国する前の晩、死の影を払り払うかのようにトマスと彼女が求め合うのも人間そのもののように感じました。

 

 ラストシーン、トルーマンにもフリアンにも傍らに寄り添う人間がいます。カナダへ帰る機上の人となったトマス。余りにも色々なことが起り、混乱する彼の胸の内が察せられました。これも人間だなあと愉快な気持になります。そしてカナダの自然の中を、のっそり歩くトルーマンの姿が浮かびました。




@ヒューマントラストシネマ有楽町



by cuckoo2006 | 2017-07-22 14:08 | 洋画 | Trackback | Comments(0)

「lion/ライオン 25年目のただいま」監督ガース・デイビス

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解説


インドで迷子になった5歳の少年が、25年後にGoogle Earthで故郷を探し出したという実話を、「スラムドッグ$ミリオネア」のデブ・パテル、「キャロル」のルーニー・マーラ、ニコール・キッドマンら豪華キャスト共演で映画化したヒューマンドラマ。1986年、インドのスラム街で暮らす5歳の少年サルーは、兄と仕事を探しにでかけた先で停車中の電車で眠り込んでしまい、家から遠く離れた大都市カルカッタ(コルカタ)まで来てしまう。そのまま迷子になったサルーは、やがて養子に出されオーストラリアで成長。25年後、友人のひとりから、Google Earthなら地球上のどこへでも行くことができると教えられたサルーは、おぼろげな記憶とGoogle Earthを頼りに、本当の母や兄が暮らす故郷を探しはじめる。

(映画com.より)







冒頭に表示される「物語は事実に基づいている」のテロップに緊張感が高まります。インドのスラム街、5歳のサルーと兄は、盗んだ石炭をミルクに代え母と妹に持ち帰ります。法を犯してでも今日を生き抜く子ども達の姿が活き活きと描かれます。


母にミルクを差し出すサルー。自分はいいと笑顔で首を振る母。貧しい暮らしの中、サルーが母の愛情を受けてきたことが伝わります。だからこそサルーは過酷な運命を生き延びられたのでしょう。

 

 仕事を探しに行く兄に強引について来てしまったサルーは駅のベンチで眠ってしまいます。無人のホームで目覚めた彼は貨物列車に飛び乗り閉じ込められます。数日後、列車が到着したのは大都市カルカッタ。言葉も通じない喧噪の町でサルーは一日一日を懸命に生き延びます。

 

 無力なサルーの前での大人達の振る舞いは恐いほどその人の本質をあぶり出します。路上でも収容施設でも孤児達の境遇はあまりに痛ましく目と耳をふさぎたくなる場面もありました。

 

 やがてサルーはオーストラリアの夫婦の元へ養子に行きます。誠実で愛情深い養父母に、こちらまで救われた思いでした。新しい環境に順応したサルーは逞しく成長します。しかし大きくなっても彼の心は迷子のままでした。

 

 大学生になったサルーはGoogle Earthにより自分が迷子になったカルカッタに何処からたどり着いたのかを調べ始めます。そして遂に見つけ出す自分の生まれ育った村。


幼い頃、過ごした路地に足を踏み入れるシーンはサルー自身の目でカメラが進みます。ドキュメンタリーを見ているようにドキドキしました。

 

 最後は実際のサルーの行方不明児捜索の写真や母親と妹との再会のシーンが映し出されます。実際のサルーを目にして、彼の現実対応能力の高さと持って生まれた魅力があったから生還できたことが良く分りました。


 しかし優しい兄は、駅で居なくなった幼い弟を必死に探し回り、列車に轢かれ命を落としていました。また、サルーの後に養子に来た少年は傷ついた心を取り戻すことはできず、誰にも心を開くことはありませんでした。多くの孤児達の真実をすくい取っていると思います。

 

「インドでは毎年8万人の子どもが行方不明になっている」と最後にテロップが出ます。幸運なサルーのハッピーエンドから現実に引き戻されました。



@渋谷シネパレス


by cuckoo2006 | 2017-07-07 18:20 | 洋画 | Trackback | Comments(0)

「ラ・ラ・ランド」監督デイミアン・チャゼル


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解説

「セッション」で一躍注目を集めたデイミアン・チャゼル監督が、ライアン・ゴズリング&エマ・ストーン主演で描いたミュージカル映画。売れない女優とジャズピアニストの恋を、往年の名作ミュージカル映画を彷彿させるゴージャスでロマンチックな歌とダンスで描く。オーディションに落ちて意気消沈していた女優志望のミアは、ピアノの音色に誘われて入ったジャズバーで、ピアニストのセバスチャンと最悪な出会いをする。そして後日、ミアは、あるパーティ会場のプールサイドで不機嫌そうに80年代ポップスを演奏するセバスチャンと再会。初めての会話でぶつかりあう2人だったが、互いの才能と夢に惹かれ合ううちに恋に落ちていく。「セッション」でアカデミー助演男優賞を受賞したJ・K・シモンズも出演。第73回ベネチア国際映画祭でエマ・ストーンが最優秀女優賞、第74回ゴールデングローブ賞では作品賞(ミュージカル/コメディ部門)ほか同賞の映画部門で史上最多の7部門を制した。第89回アカデミー賞では史上最多タイとなる14ノミネートを受け、チェゼル監督が史上最年少で監督賞を受賞したほか、エマ・ストーンの主演女優賞など計6部門でオスカー像を獲得した。(eiga.comより)






 アカデミー賞授賞式で間違えられたことでも話題になった作品。
ミュージカル映画は苦手だし、あまり期待しないで観に行ったのですが、これがとても良かった!

 渋滞中のハイウェイで、車から次々に飛び出し歌い踊るファーストシーンに圧倒されました。“只者”ではない雰囲気が漂ってきます。

 ハリウッド女優を目指すミア(エマ・ストーン)はオーディションにさっぱり受からず、撮影所近くのカフェで働く毎日。ミアの高い演技力が一向に評価されないオーディションシーンから厳しい現実が伝わってきます。同じ夢を追うルームメイト三人とチャンスを求めパーティに繰り出すミア。音楽に乗って、若く白い肌にショッキングブルーのドレスが翻ります。

 ミアの無造作な髪と素肌感が若さを引き立て、夢を追い求める情熱が伝わってきます。若い時代特有の苦しさ切なさを思い出させてくれます。ジャズピアニストのセバスチャン(ライアン・ゴズリング)と愛するがゆえに行き違うのも現実感ある展開でした。

 唐突に台詞を歌い出すような違和感は一つもなく、ミアとセバスチャンがお互いの魅力を引き立て合うように踊るシーンに心地良く酔えました。過去のミュージカルシーンをオマージュする振り付けは残念ながら私にはほとんど分りませんでした。それでも最後に、ゴッホの中で私の一番好きな絵「夜のカフェテラス」に二人が入り込むシーンには興奮しました。

 それから五年後、、、再会した二人の出逢いの場面から別の人生が繰り広げられていきます。過去を変えることはできない。人生をやり直すことはできない。互いの幸せを願いながら瞳の中で頷き合うラストシーンに切なさが込み上げます。余韻がありました。


@TOHOシネマズ西新井

by cuckoo2006 | 2017-04-26 14:26 | 洋画 | Trackback | Comments(0)

「幸せなひとりぼっち」監督ハンネス・ホルム

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解説
孤独な老人が隣人一家との触れあいを通して再生していく姿を描いたスウェーデン発のヒューマンドラマ。世界的ベストセラーとなったフレドリック・バックマンの同名小説を映画化し、スウェーデンで大ヒットを記録した。愛する妻に先立たれ、悲しみに暮れる孤独な毎日を送っていた老人オーベ。そんなある日、隣の家にパルバネ一家が引っ越してくる。車のバック駐車や病院への送迎、娘たちの子守など、何かと問題を持ち込んでくるパルバネたちにうんざりするオーベだったが、次第に彼らに心を開くようになり、やがて妻との思い出を語りはじめる。「アフター・ウェディング」のロルフ・ラスゴードが主人公オーベを好演。スウェーデンのアカデミー賞と言われるゴールデンビートル賞で主演男優賞と観客賞をダブル受賞した。(eiga.comより)

 
 スウェーデン国民の5人に1人が見たという記録的大ヒット作品。心がラクになるような後味の良い映画でした。

 妻に先立たれ、会社をクビになったオーベは、近隣でも偏屈者として煙たがられています。もうこの世におさらばしようと決めたオーベの家の隣に、イランからの移民一家が越してきます。3人目を妊娠中の妻パルバネは、人とのコミュニケーションにおいて、一瞬ためらう、やる前に迷う、という事が一切ありません。親切は考えた末にやめてしまう私にとって、パルバネの真っ直ぐさは衝撃的です。遠慮などしてたら生きてはいけないし、生き抜くためにオーベの本質を見抜く目も持っていたのでしょう。

 オーベが死のうとすると、若き日の幸せだった自分と妻の映像が蘇ります。大体それは隣の一家に邪魔されて現実に戻るのですが、死のうと思っていた数分後には、もう怒ったり駆け出したりしている。人の気持ちって本当にこんな風です。ちょっとお茶を飲んだり、ちょっと外へ出たりすると、さっきまでの絶望的な気分はどこかへ行ってしまう。またその反対に、体をぶつけ合って笑っていたオーベとパルバネが、どちらかの一言で瞬く間に険悪な雰囲気になる。そしてその後、また気分は変わります。人の暮らしって、人生って、だましだましだなあとつくづく思います。

 正論ばかり振り回す、出来ることなら近づきたくないオーベに、周りの人達が優しいのはきっと亡妻ソーニャが積み上げた遺産でもあったのでしょう。そして、オーベの最期にパルバネがすぐに気づいたのは、オーベが毎朝欠かすことがなかった日課のせい。それはオーベがこの世をより良く生きた証のようでした。そしてオーベの胸の上で彼を見守っていたもの、それも彼がこれまでの人生をどんなふうに生きてきたかを物語っていたのでした。


@ヒューマントラスト渋谷

by cuckoo2006 | 2016-12-29 17:15 | 洋画 | Trackback | Comments(0)

「さざなみ」監督アンドリュー・ヘイ

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「解説」長年連れ添った夫婦の関係が1通の手紙によって揺らいでいく様子を通し、男女の結婚観や恋愛観の決定的な違いを浮かび上がらせていく人間ドラマ。結婚45周年を祝うパーティを土曜日に控え、準備に追われていた熟年夫婦ジェフとケイト。ところがその週の月曜日、彼らのもとに1通の手紙が届く。それは、50年前に氷山で行方不明になったジェフの元恋人の遺体が発見されたというものだった。その時からジェフは過去の恋愛の記憶を反芻するようになり、妻は存在しない女への嫉妬心や夫への不信感を募らせていく。「スイミング・プール」のシャーロット・ランプリングと「カルテット!人生のオペラハウス」のトム・コートネイが夫婦の心の機微を繊細に演じ、第65回ベルリン国際映画祭で主演男優賞と主演女優賞をそろって受賞した。(eiga.comより)


 一言では感想が言い表せない映画でした。

 土曜日に結婚45周年パーティを控えた夫婦のもとに、月曜の朝、
夫が、妻と出会う前に付き合っていた恋人が事故で落下した氷山の中、当時の姿のまま発見されたという知らせが入ります。

 心身ともに眠り込んだように暮らしていた夫の心は大きく揺れ出します。病後の夫に寄り添うように過ごしていた妻の心にもさざなみが立ち始めます。

「My〇〇(恋人の名)」と言ってしまったこと。
「もし事故がなかったら彼女と結婚した?」という妻の二度の問いかけに二度とも
「YES!」と答えてしまったこと。
デリカシーに欠けた夫の致命的なミスに妻の心のさざなみは大きく広がります。

 美しさの面影を残しながらも、鏡には夫と出会ってから半世紀を刻んだ自分自身が映ります。そこへ氷の中で眠った20代のままの夫の恋人が登場する。あまりに良くできた残酷過ぎる設定です。

 心に空洞を抱えたまま生きている夫の目の前に、輝いていた過去が現れる。夫の心は一気に恋人の眠るスイスの氷山へと飛んで行ってしまいます。

 そして、迎える結婚45周年パーティ。夫の感動的なスピーチの後、夫婦は結婚式の時と同じ曲でダンスをします。ラストシーンの妻は・・・あれこそ現実でしょう。

 一緒に観た性格が男前の友人は、スイスになどいくらでも行かせてやれば良い、という意見。私は全く不本意ながら、妻の言動のすべてに共感してしまいました。

 老後はそれでなくても病気など苦労の種があるのだから、出来得る限り夫婦間に無用な波風を立ててはならない。墓場まで持っていく言葉を口にしてはならない。それが最低限にして最大限の相手への愛である、というのが一番の感想になりました。

@銀座シネスイッチ

by cuckoo2006 | 2016-05-21 13:17 | 洋画 | Trackback | Comments(0)

「おみおくりの作法」監督監督ウベルト・パゾリーニ

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解説:孤独死した人を弔う仕事をする民生係の男が、故人の人生を紐解き、新たな人々との出会いから、生きることとは何かを見つめ直していく姿を描いたイギリス製ヒューマンドラマ。「フル・モンティ」「パルーカヴィル」などのプロデューサーとして知られるウベルト・パゾリーニが監督・脚本を手がけ、「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!」「戦火の馬」のエディ・マーサンが主演。人気ドラマ「ダウントン・アビー」のジョアンヌ・フロガットらが共演した。ロンドンに暮らすジョン・メイは、孤独死した人を弔う民生係として働いてきたが、人員整理で解雇を言い渡され、自宅の真向かいに住むビリーの弔いが最後の案件になる。これまでも誠実に故人と向き合い、弔いをしてきたジョンだったが、最後の仕事にはいつも以上に熱心になり、故人を知る人を訪ね、葬儀に招く旅を経て、心の中に変化が生じていく。(映画.comより)


 スクリーンに近さを感じました。
終始淡々とした色合いで主人公の日常が進んでいきます。ですからスクリーンを見ているのではなく、実際に目の前で繰り広げられている光景を眺めている感覚がありました。そして実生活においてと同じように色んな思いが浮かんでは消えていきます。客観的に映画を観ているのと違う不思議な感覚がありました。

 ジョン・メイは、市の民生係として身寄りのない人を弔う職務を20年以上続けています。故人の歴史や宗派、好みの音楽まで調べあげ、心を尽くした葬儀を執り行ってきました。葬儀に参列するのは牧師の他は毎回ジョン・メイ唯一人。そして彼は、見送った人の写真を自宅のアルバムに一枚ずつ貼ります。自分の友人か、または自分自身のように。

 ジョン・メイ自身の内面を現わすような質素で秩序正しい日常が描かれるなか、彼を肯定する気持ちと違和感とが同時に湧いて、落ち着かない気持ちになりました。

 こんなふうに故人の最期に心を寄せる人が一人でも居ることがせめてもの救い、という思い。しかしジョン・メイが探し当てた故人の身内は、ことごとく葬儀参列の依頼を強く拒否する。彼の誠意の限りを尽くした仕事によっていったい誰が救われているのかという疑問も湧いてきます。職場の年若い上司が言うように、「限りある時間と予算は生きている者に効率良く使うべきだ」も残念ながら正論に思えます。

 ジョン・メイのシンプルで折り目正しい生活スタイルには心地良さを感じました。そして小さなご褒美のような良いこともあります。トラックが落としていったアイスクリームだったり、ホームレスとの酒盛りだったり、胸躍る出会いだったり、、、

 物語は淡々としたトーンから、不条理劇のような様相を見せ、現実から乖離した形で終わります。人生の最期がどうだったかなどは何の問題でもない。生まれて生き、人との淡い交流を経て死んでいく、それで良いのだ、というすべてを肯定する安心感に包まれました。何だかスゴイ映画でありました。


@銀座シネスイッチ

by cuckoo2006 | 2015-03-11 20:40 | 洋画 | Trackback | Comments(0)

「フライト」監督ロバート・ゼメキス

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解説
「フォレスト・ガンプ 一期一会」のロバート・ゼメキス監督がデンゼル・ワシントンを主演に迎え、「キャスト・アウェイ」以来12年ぶりに手がけた実写作品。フロリダ州オーランド発、アトランタ行きの旅客機が飛行中に原因不明のトラブルに見舞われ、高度3万フィートから急降下を始める。機長のウィトカーはとっさの判断で奇跡的な緊急着陸に成功。多くの人命を救い、一夜にして国民的英雄となる。しかし、ウィトカーの血液中からアルコールが検出されたことから、ある疑惑が浮上し……。第85回アカデミー賞で主演男優賞、脚本賞にノミネートされた。(eiga.comより)


 エンドロールが流れ出すと、隣と後ろから「いい映画だったねえ」という声が聞こえてきました。ハイ、私も今年の暫定ベスト1です。

 この映画の魅力は、何と言っても様々な要素が盛り沢山に楽しめること。冒頭の飛行機墜落事故の場面は、逆さまになった事故機に自分も乗ってるような迫力です。事故が起る前の、コックピットでの機長ウィトカーの言動は、嫌味で自信家で信頼できない人物そのもの。しかし、ひと度緊急事態が発生すると、これ以上ない有能な機長となる。どーんと肝っ玉が据わり、大胆さと緻密さで難局を乗り切ります。

 このシーンで思い出したのは、日航ジャンボ機墜落事故のボイスレコーダーに残った機長の声、でした。「どーんと行こうや!」を最後に録音は途絶えたのでした。機上でのアクシデントは死に直結する。その現実対応力こそ機長に求められる能力なのですね。それにしても、(映画の方の話ですが)、極限状態におけるプロの手腕は、人格や人間性などとは一切関係なく、ひたすら高度な技術と強靭な精神力が要求されることが良く分かります。

 事故後は、ガラリと雰囲気を変え、ウィトカー機長の内面へ焦点が当てられます。機長が隠す彼自身の過失について、観る者は全部分かっているわけです。追い詰められた機長の胸中を駆け巡る、自負、恐怖、女性乗務員への罪の意識、、、。別居中の妻子に拒絶され、死んだ父の家に身を隠すウィトカーの心中に全面的に感情移入してしまいます。

 ウィトカー機長は、熟練の操縦技術やスマートな身のこなしで、辛うじて体裁を保ってはいたが、既に身も心も破綻状態だったことが露呈してきます。事故原因究明の公聴会前夜の“毒を食わば皿まで状態”の場面を大袈裟とは思えませんでした。これが現実でしょう。

 出来レースの公聴会の最後の質問に対しては、やはりあの「答え」しかありませんでした。あんなの綺麗事だ、とは全く思わなかった。航空会社の敷いたレールに乗っていた彼の人生を思うと背筋が凍ります。

 最後の面会シーンに現れたのは、あの人物一人。これが、もう効いていた。これほど暖かい気持ちになったラストシーンは久しぶりです。ああ、いい映画だった!私も思わず声に出したくなりました。


@TOHOシネマズ錦糸町


★次回は、小川洋子の「最果てアーケード」です。

by cuckoo2006 | 2013-03-30 18:19 | 洋画 | Trackback | Comments(0)

「テッド」 監督セス・マクファーレン

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解説
マーク・ウォールバーグ扮する中年男と、Fワードを連発する過激なテディベアの交流を描いたコメディ。全米ではR指定ながらも、興行収入2億ドルを超える大ヒットを記録した。いじめられっ子の少年ジョンは、クリスマスプレゼントにもらったテディベアのテッドと本当の友だちになれるよう、神様に祈りをささげる。すると翌日テッドに魂が宿り、2人は親友になる。それから27年が過ぎ、ジョンとテッドはともに30代のおじさんになっていた。一時は「奇跡のテディベア」としてもてはやされたテッドも、幻惑キノコで逮捕されてからは堕落し、下品なジョークと女のことばかり考える日々。そんなある日、ジョンは4年間つきあっている恋人から、自分とテッドのどちらかが大事なのか選択を迫られ……。コメディアンや声優として活躍してきたセス・マクファーレンの初監督作。(eiga.comより)


 馬鹿馬鹿しくて面白過ぎました。それで結構深いです、このお話。

 ジョン・ベネットは、友達が一人もいない寂しい少年。8歳のクリスマスに両親にプレゼントされたのは、お腹を押すと「ダイチュキ」と話すテディベア。ジョンは、テッドと本当の友達になれるよう神様にお祈りします。

 時は流れ、ジョンとテッドは、35歳の悪友同士。テッドの顔つきや毛羽立ち具合が“おじさん化”していて可笑しい。ジョンは、テッドという無二の親友を得て自信をつけ、今ではすっかりフレンドリーな性格。4年間交際しているロニーという恋人もいます。片やテッドは、酒と女とマリファナ漬けの不良クマになっていました。

 ロニーは、二人だけのジョークで盛り上がるジョンとテッドに疎外感を感じ、テッドもジョンを自分に繋ぎ止めようと、仕事中のジョンをあの手この手で誘惑します。遂にロニーは、自分とテッドのどちらかを選ぶよう迫り、テッドを家から出さなければ、ジョンと別れると言い渡します、、、、、

 少年時代から夢中のアニメやヒーローものをちらつかせ、テッドはジョンを自分の方へ引き寄せます。それは、子供時代の二人の幸せな時間を呼び戻すものでした。テッドの存在こそが、ジョンの少年の心そのもの、のようです。 

 恋人と新しい世界へ踏み出すため、きっぱり過去に決別するのか、それとも密かに引きずっていくのか。ジョンとテッドの激しくも哀しいバトルの末に行き着いた場所は、、、、

 少年の心を丸ごと捨てては寂しいし、広げっぱなしもまずい。テッドがいてこそ自分の大好きなジョン、と気づいたロニーに、テッドも二人と新しい絆を結びます。それぞれが辿りついた心の落ち着きどころでした。お下品なセンスも愉快。やさしい気持ちになれた好みの映画でした。


@TOHOシネマズ西新井


★次回は、竹西寛子の「五十鈴川の鴨」です。

by cuckoo2006 | 2013-03-10 17:07 | 洋画 | Trackback | Comments(0)

「ライフ・オブ・パイ」監督アン・リー

解説d0074962_15575989.png カナダ人作家のヤン・マーテルが2001年に発表し、ブッカー賞を受賞した世界的ベストセラー小説「パイの物語」を、「ブロークバック・マウンテン」「ラスト、コーション」のアン・リー監督が映画化。乗っていた貨物船が遭難し、一匹のトラとともに救命ボートで漂流することになった少年パイのたどる運命を描く。1960年インド・ポンディシェリに生まれた少年パイは、父親が経営する動物園でさまざまな動物たちと触れ合いながら育つ。パイが16歳になった年、両親はカナダへの移住を決め、一家は動物たちを貨物船に乗せてインドをたつが、洋上で嵐に遭遇し貨物船が沈没。必死で救命ボートにしがみついたパイはひとり一命を取りとめるが、そこには体重200キロを超すベンガルトラがいた。(映画.comより)

 面白かった!最初から最後まで心がスクリーンからぴったり離れませんでした。動物好きには堪らないシーンが一杯で、またそれがCGと分かっているので安心して楽しめます。

 トラと漂流することになるまでの、パイ少年のインドでの家族との時間が描かれるのも良かった。貧しい生い立ちから進取の気性を持つ父とその父の理解者である知的な母の愛情に育まれ、パイは冒険心いっぱいに強く賢く成長します。優等生タイプの兄と反対に無謀なほど生きるエネルギーに溢れるパイ。彼だからこそ、トラとの漂流を生還できたのだと納得してしまいます。

 動物園の閉園を決め、動物達と共に貨物船に乗り、カナダへ向かう一家。しかし夜半の嵐により貨物船は転覆してしまう。波間に漂う救命ボートに辿りつくことができたのは、パイ少年のほかは、負傷したシマウマ、生まれたばかりの子供とはぐれたオラウータン、何としても生き延びようとするハイエナ、そして、“リチャード・パーカー”の名を持つベンガルトラでした、、、、、、

 救命ボートに陣取るトラと、ボートに繋いだイカダの上で過ごすパイ。太平洋のど真ん中、大自然の脅威に晒されながらの両者の攻防。このトラにはかなり心引かれました。トラだって大海の小舟の上で自分に何が起きているのか解らなかっただろうし、どんなにか不安だったことでしょう。腹を空かせたトラが、思わず海面近くの魚めがけて飛び込み狩りをするのですが、その後自力ではボートに上がって来られない。小船の横腹に爪をかけてキコキコする切なそうなトラの大きな顔。オールで打ちのめそうとするパイでしたが、そのオールでトラを引き上げてやるのでした。

 物語は、大人になったパイが、作家志望の青年に漂流の話をする形で進んでいきます。考えてみれば有り得ない話なのですが、最後にパイが青年に語る生還後の話の中の“ある仕掛け”が、物語に現実味を増してみせます。

 トラが弱り切った後、パイとトラが無人島に辿り着いて以降は、パイの妄想なのでは、と私は感じました。それから、シマウマとオラウータンとハイエナはあまりに象徴的な存在で、これはパイが保険の調査員にした二番目の話が事実のように思えます。そして、確かにトラは居た、のだと。敢えてどこまでが事実なのかをはっきりさせないことが物語の魅力をぐんと高めます。いろんなことが頭を駆け巡りながら不思議に愉快な気持ちで映画館を出てきました。


@TOHOシネマズ西新井


★次回は、木内昇の「浮世女房洒落日記」です。

by cuckoo2006 | 2013-02-20 12:33 | 洋画 | Trackback | Comments(2)

「レ・ミゼラブル」監督トム・フーパー

解説d0074962_16001260.jpg ビクトル・ユーゴーの同名小説を原作に、世界43カ国で上演されて大ヒットを記録した名作ミュージカルを、ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、アン・ハサウェイら豪華キャストで映画化。監督は「英国王のスピーチ」でアカデミー監督賞を受賞したトム・フーパー。舞台版プロデューサーのキャメロン・マッキントッシュも製作に名を連ねる。パンを盗んだ罪で19年間服役したジャン・バルジャンは、仮出獄後に再び盗みを働いてしまうが、罪を見逃してくれた司教に感銘を受けて改心する。やがて運命的な出会いを果たした女性ファンテーヌから愛娘コゼットを託されたバルジャンは、執念深いジャベール警部の追跡を逃れ、パリへ。バルジャンとコゼットは親子として暮らすが、やがて激動の時代の波に飲まれていく。(映画.comより)

 ジャン・バルジャンと言えば、パン一個を盗んだ罪で長い間投獄され、ああ無情!くらいが私の持ってた情報量。「レ・ミゼラブル」ってこんなお話だったのですね。社会福祉という言葉も存在しない時代、力を持たない人々が生き抜くための日々は余りに苛酷なものでした。牢獄から仮出所したジャン・バルジャンは、司教の慈悲を受け、底辺から這い上がるように名前も変え、やがて政治家となります。守るべき存在を得た彼の波乱に満ちた生涯が、フランス革命を背景に壮大な物語に仕立てられています。

 「ルックダウン、ルックダウン」と苦役を課せられた罪人達の地獄の底から鳴り響くような歌声の幕開けは、「ベン・ハー」を思い起こす迫力でした。文句なしの迫力に、おどろおどろしさ、切なさ、哀しさが画面いっぱいに伝わり、多彩な登場人物のそれぞれの持ち味と見せ場に、物語はスピーディーに展開していきます。

 でも正直、最初から最後まで、頭を離れなかったのは、「これ、舞台で観たかったなあ」ということ。思わず、舞台が目の前に浮かんで来る場面が、たくさんありました。この歌のシーンは、舞台中央ではなく、上段の端にスポットライトが当たるのだろうなあ、とか。最後にフランス国旗が打ち振られるシーンでは、気持ちはもう「これは一度舞台を観よう!」に変わっていました。

 私が一番印象に残った人物は、ラッセル・クロウ演じるジャベール警部。残忍な敵役にとどまらず、法を遵守する、という彼自身の正義と信念がありました。非人間的な看守ではなかったからこそ、ジャン・バルジャンは、彼を窮地から救ったのでしょう。ジャン・バルジャンと同じ最下層の出身から警察官の職を得、職務を全うすることだけを拠り所としなければ生きられなかったジャベールの人生も歪んだ社会を浮き彫りにします。存在に深みがありました。ただ残念ながら、私の狭いストライクゾーンには全く入れない大作でありました。


@TOHOシネマズ西新井


★次回は、海外ミステリ、アーナルデュル・インドリダソン「湿地」です。

by cuckoo2006 | 2013-01-31 19:45 | 洋画 | Trackback | Comments(2)