小説、映画、絵手紙、都々逸
by cuckoo2006
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
全体
本(日本のもの)
本(外国のもの)
海外ミステリー
村上春樹
邦画
洋画
舞台
えてがみどどいつ
3分スピーチ@話し方教室
エッセイ@文章教室
未分類
以前の記事
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
more...
最新のコメント
saheiziさん 親..
by cuckoo2006 at 11:10
近所の子供が話をしたこと..
by saheizi-inokori at 22:45
登山の後の車中のビールこ..
by cuckoo2006 at 13:41
この歌大好きです。山や海..
by まさ尋 at 10:01
まさ尋さん 旧中山道歩..
by cuckoo2006 at 21:45
突き出しつまんだ呑めない..
by cuckoo2006 at 21:34
飲めない人のことを考えな..
by まさ尋 at 07:49
今山の会で月1回旧中山道..
by まさ尋 at 07:45
saheiziさん 痛..
by cuckoo2006 at 01:19
ほんとに健康なときにはち..
by saheizi-inokori at 20:58
最新のトラックバック
2014年版:実力派若手..
from dezire_photo &..
修羅を脱け出せるのはデク..
from 梟通信~ホンの戯言
アントーニオは鬱で猿之助..
from 梟通信~ホンの戯言
イリュージョニスト
from 龍眼日記 Longan D..
武士の一分
from 映画や本を淡々と語る
mini review ..
from サーカスな日々
「手紙」東野圭吾著、読ん..
from 男を磨く旅
エジンバラ といえば
from エジンバラ?
チルドレン |伊坂 幸太郎
from ミステリー倶楽部
ブルー・リボン賞。渡辺謙..
from 芸能ニュース 速報ニュース ..
ブックマーク  (五十音順)
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧


カテゴリ:舞台( 8 )

劇団でん組「家族の神話」作・演出 富田求


d0074962_15094325.jpg
さらば愛しき娘よ!
家族の絆とは何か、生きる力とは何かを問う問題作!

四歳の娘が死んだ!
事故なのか、それとも殺人なのか!
母親からの『虐待』を、かろうじて生き延びた兄妹が、直面した新たな悲劇!
頑なに、妻が娘を殺したと信じる兄が、妻を追い詰めようとする。
兄の異常な行動に、不安と恐れを感じ始め、
心の傷と闘いながら、虐待の連鎖に苦しむ妹。
そして、兄の頑なさが、妹の日常生活を侵食し、家族が崩壊していく・・・

二転三転しながらも事件の真相に迫っていく母と娘。
次第に、明らかにされていく驚愕の真実!
過酷な運命を生きる兄妹の未来に、『希望の光』はあるのか!

なぜ、母はわが子を虐待するのか。
毎年、児童相談所に通告される虐待の件数は、急増し続けている・・・
私たちは、『孤独』という暗黒の荒野を、
なすすべもなく彷徨っている子ども達の悲劇から目を離してはならない。

この物語は、母親からの残酷な虐待から、かろうじて生き延びた兄妹が、
新たな悲劇と闘い、生きるとは何か、家族の絆とは何か、を自らに問いながら、
未来を見つめていく物語です。

出演 百花亜希 吉田智則 金松彩夏 イチキ游子 ビーグル大塚 三田村周三
(劇団でん組HPより)

 


 虐待により心に深い傷を負った人々の物語。
心の奥深く潜む傷は周囲からは見えず、大人になった兄妹はそれぞれの生活を営んでいます。

 兄の4歳になる娘が浴槽の事故で亡くなり、妻が娘を殺したと頑なに信じる兄を、家族も警察も狂っていると決めつけます。そんな中で唯一人伯父を信じる妹の娘。娘の強い気持に動かされ、妹も兄のために独自に調べ始めます。

 六人の役者達の力強い台詞に、暗く重いテーマがテンポ良く展開します。小劇場に緊張感が張り詰めました。

 4歳の娘の死は本当に事故だったのか?
 兄妹の母の死の真相は?

そして遂に明らかにされる驚愕の真実。

 終盤には思ってもみなかった事実が明かされます。二度ほど大きく上半身に電気が走りました。
過去を忘れたように現実社会を生きる一見普通の人々の心の闇の深さ。苦しくとも踏み出した一歩は明日へ繋がっているのでしょう。自分を犠牲にして妹を専門職に就かせた兄の心情も伝わりました。

 残酷なシーンは一つもなく、ミステリー要素一杯に練り上げられた台詞劇です。最後まで引き込まれました。題材が暗いため一緒に行こうと誘った二名(友人、夫)にフラれましたが、一人で観に行って良かったです。
 


「中野ザ・ポケット」で、4/2(日)まで公演中



by cuckoo2006 | 2017-03-29 20:31 | 舞台 | Trackback | Comments(0)

「漂流劇 ひょっこりひょうたん島」演出串田和美


d0074962_21010913.jpg

1964年から69年の5年間、NHK人形劇シリーズとして放送され、超個性的な登場人物たちが繰り広げる奇想天外、豪快で壮大な物語と、誰もが口ずさめるテーマソングや独特のユーモアで、子供から大人まで、日本中のお茶の間を魅了した「ひょっこりひょうたん島」(井上ひさし・山元護久原作)が、Bunkamuraとこまつ座の手により、全く新しい舞台作品として誕生することとなりました。(Bunkamura HPより)

出演
井上芳雄(マシンガン・ダンディ)、安蘭けい(サンデー先生)、山下リオ(博士)、小松和重(テケ)、山田真歩(プリン)、一色洋平(海賊)、久保田磨希(チャッピ)、内田紳一郎(ダンプ)、真那胡敬二(海賊)、大森博史(海賊)、中村まこと(海賊)、串田和美(?)、小松政夫(トラヒゲ)、白石加代子(ドン・ガバチョ)

スタッフ
脚本:宮沢章夫・山本健介
演出・美術:串田和美
音楽:宇野誠一郎・宮川彬良

 登場人物達が舞台の四方から泳ぐように飛ぶように姿を現します。
浮遊感いっぱいに物語は幕を開けます。

 敢えて現実を離れ、脈絡があるようにないように場面は展開していきます。すぐに置いてきぼりの心境になりました。

 この話はいったい何を言おうとしているのか?
そもそも「ひょっこりひょうたん島」ってどんな話だっけ?
何でもいいから、早くあの主題歌を聞かせてくれー!!

 それでも、生演奏にコミカルなダンスも歌もテンポよく、舞台はシーンごとに大きくトーンを変えながら進んで行きます。こちらもだんだんムードに馴染んでいきました。

 そして苦労は報われ最後には私も何かを受け取ることができました。

 「ひょうたん島」に隠されていた宝物、それは愛だったーー仲間達だったーー
 ずるい大人たちもその昔には瑞々しい心で日々を生きていたーー
 とにかく生きていこうーー
 今日がダメなら明日やろうー明日もダメなら、しあさってに!
 あさっては休もうー

この明後日は休む、というところが一番気に入りました。

 主題歌を全員で歌うラストシーンは会場が手拍子に包まれます。主題歌がさらりと披露されたことも、中高年が一杯の客席の手拍子が微妙に合わないところも暖かな雰囲気でした。

 井上芳雄演じるマシンガン・ダンディ、安蘭けい演じるサンデー先生等の大人達と、久保田磨希らが演じる子供達。体の大きさに関係なく大人と子供の色分けをはっきり見せます。子供も大人も魅力的でした。

 ところで「ひょっこりひょうたん島」で私の頭にまず浮かぶのは、人形劇で中山千夏が声を担当していた「博士」。この博士役の山下リオが博士のイメージを裏切らなかったこと。これが舞台の一つの成功の鍵でした。藤村有弘が声を務めた「ドンガバチョ」役の白石加代子も適役に思えました。

 最後に何かを受け取れて良かった。だけど長かった。そんな舞台でした。


@シアターコクーン

~~~~~~~~~~~~~~

今年も「気ままな読書ノート、絵手紙with都々逸と」をご覧くださりありがとうございました。

来年はブログ開設から早10年。いつの日にか電池が切れるまで細々続けていきたいと思っています。

2016年もどうぞよろしく!

皆さま、良いお年をー


by cuckoo2006 | 2015-12-31 21:28 | 舞台 | Trackback | Comments(0)

再掲載 「僕のともだち」作・演出 富田求

(↓最新の記事はひとつ下にあります↓)

好評につき再演決定!!
新宿 紀伊国屋サザンシアター
12月11日(木)、19:30~ 

d0074962_22060010.jpg

劇団 でん組 旗揚げ公演

    僕のともだち

「夢でもし会えたら・・・

 母の哀しみは、夜汽車に乗って 銀河を巡る」

息子が、学校の窓から飛び降りた!!

原因は、イジメか、子供同士のケンカなのか。

何とか子供のケンカですませたい加害者夫婦と、イジメと認めさせたい被害者夫婦のコミカルな壮絶バトルが展開する。

二組の夫婦の思いが激しく交錯し、明らかになっていく意外な過去。

大混乱の中で、息子が帰ってくる。

息子の怪我は本当に大丈夫なのか?

息子の口から語られる真実!

二転三転しながら、苦悩する親たち。

真実は何か!息子はどうなるのか?

衝撃の真実が明らかになった時、凍りつく親たち。

イジメの悲惨な現状を、母親の苦悩を通してえがく問題作!!

あなたは、この哀しみに耐えられるか!? (劇団 でん組HPより)

作・演出 富田求
キャスト
林 和義  棚橋 幸代  春名 柊夜  古川 悦史  原 千果子 

 終演後、細い階段を下りながら、舞台はやっぱりいいねえ!という声が幾つも聞こえました。緊張感に巻き込まれた2時間でした。

 イジメの被害者・加害者の親夫婦が話し合いの場を持つ。それぞれの思惑に、ほとばしる感情が火花を散らせます。加害者夫婦の言い分には嫌悪感を催し、コミカルな場面には声を出して笑ってしまい、一瞬もダレずに両夫婦が見せていきます。

 父親同士が妙に意気投合するところなど、現実味が薄れますが、元々この話し合いは現実を離れたものだったことが明らかになります。唯一人まともに思えた、被害者の母親が、実は、という展開にすべてが納得できました。

 「カーチャン、いってきます・・」息子の最後の言葉を口にする被害者母の細い声に涙が出ました。10才の男の子はこの頃、母親のことを、お母さんでもママでもなく、カーチャンと呼ぶのですね。学校の窓から飛び降りて入院しているはずの息子が親達の前に現れる、、最後には、加害者夫婦にも真実が見えるようになります、、、

 面白半分にでも“空気ごっこ”なんてしてはいけない。何より死んではいけない。イジメはいけないとどんなに言うよりもこの舞台を子供達に見せてほしいと思いました。でもそれ以上に見てほしいのは、お父さん、お母さん方。それが、この舞台の一番言いたいことと感じました。

 最後に被害者母がはじめて儚げに微笑みます。愛しい存在を失くした者すべてが共有できる、今、何かがストンと胸に落ちた、その感覚に救われました。共感しました。


@テアトルBONBON

by cuckoo2006 | 2014-12-10 14:00 | 舞台 | Trackback | Comments(6)

「休暇 Holidays」演出栗山民也

 d0074962_14374827.jpg
 ローズ(保坂知寿)は乳ガンを患い、片方の胸を14年前に切除。その後、再発の不安を抱えながらも、夫アーサー(永島敏行)の愛情深い支えのもと、明るさとユーモアを失わず生きている。
毎夏のプロヴァンスでの休暇は、二人の絆を深める大切な時間だった。お互いの母親との確執、子供を持たなかった現実、何よりいかに「アイツ」と戦うかを悩み考えた夏の日々。
その「アイツ」が帰ってきた。それも肺に。その次は首に。
これまでの西洋医学の治療方法に疑問を抱いていたローズは、信頼するカウンセラーのすすめで彼女のコテージを借り、過去の本音を日々思いつくままテープレコーダーに喋り続ける。これからの治療に不可欠、とカウンセラーからの指示なのだが、それは現実を見つめ直す作業だった。
どんよりとしたヨークシャでの期間限定、一週間の隠遁生活が始まる。
ほどなくコテージのガスオーブンが壊れた。修理工のラルフ(加藤虎ノ介)がやってくる。
思いのほか、文学や哲学に広く知識を持ち熱く語るラルフに、少なからず心惹かれてゆくローズ……(地人会新社HPより)
作/ジョン・ハリソン
訳/水谷八也
演出/栗山民也
[配役]
保坂知寿:ローズ・ローストン
加藤虎ノ介:ラルフ・グレイリング
永島敏行:アーサー・ローストン


 たくさんのチラシの中からアンテナがキャッチしただけあります。ガツンと来ました。昨夏に訪れ、すっかり気に入った小劇場「赤坂レッドシアター」で上演中です。

 舞台は、ヨークシャーの閑静なコテージ。そこに登場する中年の夫婦、ローズとアーサー。夫婦が醸し出す、時を刻んできた安定感と同時に、ヒリヒリするような一触即発の感覚が伝わってきます。この舞台はアタリと直感しました。

 ローズはカウンセラーの薦めにより気持ちを整理するため、このコテージで一週間を過ごす。現在のこの場所に、夫婦が共に過ごしたプロヴァンスでの休暇の場面が差し挟まれます。

 ローズは一人過去を振り返る。「気持ちのわだかまりの源を探すのよね。それには、ママが死んだ16年前まで遡らなければ。いいえ、本当のことを言えばはもっともっと前からだわ、、、」自嘲ぎみに表されるローズの苛立ちと不安に共感します。

 そこへ三人目の登場人物ラルフがオーブンの修理にやって来ます。ローズとラルフは不思議に打ち解け合い、彼と語り合ううちに彼女は、夫アーサーの真の姿、また彼女自身の本当の気持ちと向き合い始めるのでした、、、

 「実在の人々の人生に聞き耳を立てているような感覚」とチラシにありますが、所々に自分の胸の内を見せられている気分にもなります。おお、ここにもこういう夫婦がいたか、と。愛という名のもとに繰り広げられる夫婦関係の難儀さは万国共通のものでしょう。

 ラルフとの出会いで一つ扉を開けたローズでしたが、いざ三人が対面してみると劇的な事は何も起らず、男たちは臆病な誠意を示すばかり。ローズは自分を連れ戻そうとしない夫を怒り出す始末です。

 そして、ローズは小さな決断をする。カウンセラーへの電話の最後のひと言も良かった。そう、それでいいのよ、と私もローズに呟いていました。


@赤坂レッド・シアター

by cuckoo2006 | 2014-05-18 13:43 | 舞台 | Trackback | Comments(0)

「イーハトーボの劇列車」作井上ひさし 演出鵜山仁


d0074962_17052743.png

■作井上ひさし■演出鵜山仁■出演井上芳雄 辻萬長 大和田美帆 木野花 土屋良太 石橋徹郎 小椋毅 松永玲子 田村勝彦 大久保祥太郎 鹿野真央 みのすけ 演奏:荻野清子
■ストーリー
大正七(一九一八)年十二月二十六日、宮沢賢治は、故郷花巻から東京に入院している妹・とし子の見舞いを目的に上野行きの夜行列車に乗り込んだ。その手には大きな革のトランクが握りしめられ、たくさんの願いが詰め込まれていた。
「大好きな音楽を聞き、エスペラント語の勉強をする。そのためには家の重圧から逃れ、父の庇護の下を離れなければならない。そして何よりも真の生き方を探すことである」
賢治は、東京に理想郷を求めては挫折を繰り返し、九度の上京の中でいつしか花巻に理想郷を見いだす。東京での出来事と上京する列車の中で賢治の童話から抜け出たような人物たちと織りなす夢のような時間が交差する。そして挫折の度に突然現れる背の高い、赤い帽子の車掌から手渡される「思い残し切符」とは・・・・・・。
井上ひさしが愛してやまない日本語に、不思議でかわいらしい、そして輝くような魅力を付け加えてくれた、岩手花巻人である宮沢賢治の評伝劇。文学、音楽、化学、農業、宗教、芸能など多岐にわたる才能を、虚弱ゆえ叶えることが出来なかった賢治。この数々の大切なものを、鵜山仁の新演出で現代に問いかけます。
ミュージカルだけでなくストレートプレイでも高い評価を得ている井上芳雄をはじめとする実力派の新キャスト陣を迎えて、十四年ぶりに再演いたします。(こまつ座HPより)


 宮沢賢治と井上ひさしの世界に、同時に浸りました。

 学生服姿の賢治が妹とし子の看病に上京するところから、37歳で亡くなるまでの時間。幻想的な賢治の世界を、井上ひさしが言葉の魅力いっぱいに紡ぎます。

 舞台には、楕円形のお盆のような回り舞台が乗り、そこが上り夜行列車や賢治の下宿先になり、また宇宙と繋がる空間にもなります。役者達の発する賢治作品独特の擬音と、小気味いい台詞回しに賢治の人生がテンポ良く展開していきます。

 理想を掲げ清貧の中を生きた人、というのが私の賢治像でしたが、彼が岩手の名家の体が丈夫でないボンボンだったことも初めて知りました。もちろん一貫して弱い立場の人の側に身を置き、肉食の罪の意識を感じ菜食を通した賢治は、「雨ニモマケズ」のイメージそのものですが。

 それでも一方、家業を嫌い、父親と対立しながらも理想郷を作るための活動資金を実家から受け続けます。元祖モラトリアム人間のデクノボーではありませんか。親近感が増してしまいます。

 ユートピアを作る、という賢治の夢は、周囲の大人達には甘いと吐き捨てられ、暮らしに追われる農民達には全くの絵空事。孤立する賢治は、夢と絶望の間を揺れ動きます。そして、唯一の理解者だった妹とし子を病で失います。

 疲れ切って列車で眠り込む賢治に、賢治の本の登場人物達が、もう楽にしてやろうと窓から冷たい風を入れます。作者の優しさが染みました。賢治は肺炎のため亡くなります。

 最後は、死者の世界へ旅立つ銀河鉄道発車の場面。「これから私達が行く場所は、あなた方がいるような暖かで楽しい場所ではありません」という木野花の放つ台詞に涙が出そうになりました。何時か必ず自分もそこへ行くことが感じ取れたら。それでも、旅立つ人達の表情は一様に穏やかなものでした。

 紀伊国屋書店で、「銀河鉄道の夜」の文庫本を買って帰りました。劇中で歌われた「星めぐりの歌」、そして、物語に散りばめられた「思い残し切符」、、、賢治のやさしい世界に浸っています。郷愁を感じるような舞台でした。


@紀伊国屋サザンシアター



    星めぐりの歌

    宮澤賢治


    あかいめだまの さそり
    ひろげた鷲の  つばさ
    あをいめだまの 小いぬ、
    ひかりのへびの とぐろ。

    オリオンは高く うたひ
     つゆとしもとを おとす、
    アンドロメダの くもは
    さかなのくちの かたち。

    大ぐまのあしを きたに
    五つのばした  ところ。
    小熊のひたいの うへは
    そらのめぐりの めあて。

by cuckoo2006 | 2013-10-26 21:37 | 舞台 | Trackback(1) | Comments(2)

「ヴェニスの商人」演出蜷川幸雄


d0074962_15153435.jpg
 蜷川幸雄の演出/監修のもと、これまで次々と話題作を送り出してきた彩の国シェイクスピア・シリーズ。その中でも、“オールメール・シリーズ”と銘打たれたシリーズは、シェイクスピアの時代に倣って全ての役を男性キャストが演じ、人気となっています。
 シリーズ通算第28弾、オールメールの第7弾となるのは、日本でも高い知名度を誇る戯曲『ヴェニスの商人』。これまで幾度となく上演されてきた名作に、‘世界のNINAGAWA’が挑みます。主演は歌舞伎俳優の市川猿之助。オールメール第5弾の『じゃじゃ馬馴らし』の<じゃじゃ馬>キャタリーナで女形を演じ喝采を浴びた彼が、今度は世界の名優たちが演じたがってきた悪役シャイロックに扮します。共演陣も、ストレートプレイやミュージカルで活躍する中村倫也、蜷川組の常連である石井愃一や横田栄司、映像・舞台に活躍する高橋克実と、いずれ劣らぬ個性派が揃いました。彩の国シェイクスピア・シリーズ最新作『ヴェニスの商人』に、どうぞご期待ください。(埼玉県芸術文化振興財団 HPより)
 

 猿之助シャイロックに圧倒されました!スタンディングオベーションをしたのは、次男が高校生の時の管弦楽部の演奏会以来。15年振りです。

 私が猿之助(当時カメチャン)を初めて認識したのは、2007年、歌舞伎座の「NINAGAWA十二夜」。腰元・麻阿を演じた余りにキレのある動きに「このヒトは、何者ナノダロウ?」と目が釘付けに。今回のシャイロックも只者ではない存在感を放っています。

 幕開け、ヴェニスの町で暮らす人々の快活で聡明な様子が描かれます。そこで交される彼らの友情は厚い。明るく開放的な雰囲気の中、登場する高利貸シャイロック。異端者である彼は、コミュニティーから唯一人徹底的に排除されています。彼らが健全で爽やかであればあるほど、シャイロックの異様さは際立ち、彼らへの妬み憎しみは募ります。

 シリアスな展開を息抜きするようにドタバタのコントで笑わせたり、シェークスピアと歌舞伎は似てるんですね。シャイロックが歌舞伎の所作をして見せたり、相手役が見得を切ったりするサービスも挟まれます。

 この舞台は、男性だけで演じるオールメールシリーズ。劇中で男装をする場面のあるポーシャ役の中村倫也は、あ、このヒト、やっぱり男には見えないナ、と思わせるほどの巧さ。ポーシャの可愛いらしさに魅せられました。

 ラストは、シャイロックの要求が撥ね付けられるだけでなく、完膚なきまで打ちのめされます。これまでの人生、事あるごとに、「ユダヤ人!」と吐き捨てられ、醜い存在として生きてきたシャイロック。非道な要求の報いと言えども、踏みつけられてきた痛みの大きさが伝わります。

 法廷での「ユダヤ人には目がないかぁ?手がないかぁ?ーー」という反撃の台詞に、観客席の自分も射抜かれるようです。舞台から客席の通路をゆっくりゆっくり退場するところは、彼一人で劇場全体を飲み込んでいくような迫力でした。

 カーテンコールでは、静々とシャイロックのまま現れる猿之助。シャイロックのおどろおどろしい残像がまだ消えず、毎晩パンフレットを手に取って眺めています。


@彩の国さいたま芸術劇場

by cuckoo2006 | 2013-09-21 12:28 | 舞台 | Trackback(1) | Comments(2)

カタルシツ「地下室の手記」演出前川知大

d0074962_1813698.jpg説明:語る室。イキウメのオルタナティヴ、別館を作ります。イキウメからはみ出したものをときどき、ここでやります。
第一回は、地下室でひたすら愚痴をこぼす一人の社会不適合者を描いた、ドストエフスキーの「地下室の手記」を演劇にします。 
世間から軽蔑され虫けらのように扱われた男は、自分を笑った世界を笑い返すため、自意識という「地下室」に潜る。
世の中を怒り、憎み、攻撃し、そして後悔の念からもがき苦しむ、終わりのない絶望と戦う元小官吏のモノローグ。
舞台は帝政ロシアから現代日本に。ネットのストリーミング生放送で、カメラに向かって理路整然と罵詈雑言。
地下室への訪問者に小野ゆり子を迎え、コメントにブチ切れるいい大人を、安井順平が実演します。(前川知大) 

原作 ドストエフスキー(光文社古典新訳文庫「地下室の手記」、安岡治子訳)
脚本・演出 前川知大
出演  安井順平 小野ゆり子
  
 
 

面白かった!これほど小さな劇場で芝居を観るのは初めて。赤坂レッドシアターの座席に着くと、手の届きそうな舞台に幕はなく、目に飛び込んでくるのは、両端に並べられた生活感のある大道具に小道具。ワクワク感に胸が踊ります。

 ふらりと登場して来るのは、主人公の男(安井順平)。ほぼ彼一人の独白で物語は進みます。彼の口から湧き出る言葉は、これまで関わってきた人間達への怒り、恨み、妬み、そして自己憐憫のオンパレード。

 “俺だって頑張ってきたんだ。この社会で生きていこうと。人間関係を作り上げようと。40歳までは。母親が死ぬまでは”

 しかし、ある時から彼は降りてしまう。世の中の邪悪で愚かな連中と対峙することを。日々屈辱にまみれて生きることを。そして、彼は、やって来た。世の中と隔絶したこの地下室へ。

 ここから、彼は、インターネットのニコニコ動画へ思いの丈を吐き出します。そこへぽつぽつと写し出される視聴者からの冷めたコメント。

 ヤダねー、こういう人は、と思いながらも、思い当たる感情、覚えのある行動に、溜め息まじりの笑いが込み上げてきます。

 “コンチキショーと思っている相手に、またニコニコと道を譲ってしまい、夜そいつに肩をぶつける練習をする”

 “指名した女のコに、自意識のカラを破れずキザな説教を続け、あなたの話って本を読んでるみたい、と指摘され傷つく”

 それにしても、ドストエフスキーの文学をこんな下世話な話にしていいのか?という疑問が湧いてきます。帰りがけに売店で原作を買ってみて驚きました。時代背景と設定は違えど、主人公の劇中のセリフとエピソードは、そっくりそのまま。

 ドストエフスキーが、帝政ロシアの時代に、まるで2chでの罵詈雑言のような文章を書いていたとは。巨匠は、2世紀を越えて人間の心の奥底を抉り出していたのですね。

 賢い人間の取るべき行動はただ一つ、なんにもしないことだ、と豪語していた彼。地下室からは絶対に出ないからな!が最後のセリフ。その彼の心の柔らかい部分も充分に受け取れました。人間って哀しいなあ、可愛いなあ、と美空ひばりの唄みたいな感想が沸いてきます。それぞれのツボでの観客の笑い声にも親近感。足取り軽く、心も軽く、劇場を後にしました。


@赤坂レッドシアター
by cuckoo2006 | 2013-08-11 15:40 | 舞台 | Trackback | Comments(0)

「海辺のカフカ」演出蜷川幸雄

d0074962_14425793.jpg

あらすじ
主人公の「僕」は、自分の分身ともいえるカラスに導かれて「世界で最もタフな15歳になる」ことを決意し、15歳の誕生日に父親と共に過ごした家を出る。そして四国で身を寄せた甲村図書館で、司書を務める大島や、幼い頃に自分を置いて家を出た母と思われる女性(佐伯)に巡り会い、父親にかけられた “呪い” に向き合うことになる。一方、東京に住む、猫と会話のできる不思議な老人ナカタさんは、近所の迷い猫の捜索を引き受けたことがきっかけで、星野が運転する長距離トラックに乗って四国に向かうことになる。 それぞれの物語は、いつしか次第にシンクロし…。(埼玉県芸術文化振興財団HPより)



 昨年、初めて村上春樹作品が映画化された「ノルウェイの森」(トラン・アン・ユン監督)に続き、今度は村上作品が日本で初めて舞台化されました。蜷川幸雄演出による「海辺のカフカ」です。

 「海辺のカフカ」は、村上作品の中で好きな小説の第3位。(ちなみに第1位は「ねじまき鳥クロニクル」、第2位は「スプートニクの恋人」)これは何としても観たい。チケット握り締め、与野本町の彩の国さいたま芸術劇場へ出かけました。

 まず幕開け、大きな水槽のようなアクリルケースが幾つも登場します。その中に配置されたそれぞれのシーンに、街の中の様々な音が被さります。照明と舞台装置の中を動く俳優たちにより、形創られる現実と幻想が交差する世界。観念的、象徴的ともいわれる村上春樹の世界が目の前に広がります。舞台を眺めているうちに、物語を読んでいる自分の頭の中を自分が覗きこんでいるような不思議な気分になってきました。

 四国の高松、中野区野方、そして戦時下、と三つの世界が原作通りに同時進行していきます。アクリルケースがシーンごとに入れ替わり、音楽と照明により、切れ味良く場面展開して行きます。俳優達のセリフ回しや間の取り方が完璧で、間延びしたところが一切ないのに感心します。そうじゃなきゃ蜷川さんの舞台には呼ばれませんよね。そして、寸分の狂いなく繊細に舞台を動かしていく黒子たちの動きにも目を瞠ります。図書館と森と海の底が隣り合うような世界に引き込まれました。

 原作を読んだのは6年前ですが、シーンの一つずつが蘇り、本のイメージが細部まで違和感なく伝わってきます。ただ、不覚にも私は“カラス”の存在を忘れてしまっていた。分身のようにカフカに寄りそうのは何者なのか?黒白ツートンカラーの頭だから、カフカの未来の姿なのか?と思ったまま休憩時間にパンフレットを買ったら、カフカを導く“カラス”でした。ああ、途中で気がついて良かった。

 それからもう一つ、私は、原作の中で、佐伯さんがカフカの本当の母親とは受け取りませんでした。象徴としての母というか、母を投影した、という印象だったのですが、舞台では、佐伯さんはカフカの母親と断定されています。
 村上さんの本の中では、あらゆることが読み手に委ねられ、謎が謎のまま終わっています。例えば、カフカの父親を殺したのは誰なのか?父親が息子にかけた呪いとは?戦時中、ナカタさんが子供の時、見舞われた事故の真相は?そして、佐伯さんは本当にカフカの母親なのか?たくさんの不確実さの中で、舞台では、母と息子の関係を明確にすることにより、物語を観客の胃の腑に落ち着き易くしたのかなと思いました。

 前半、タフな自分になるために家出したカフカが、孤独を抱え、誰にも心を開かない姿を見せますが、やがて出会った人々、サクラや大島さんや佐伯さんの優しさに触れ、安心と拠り所を得ていく。話す口調も「――なのぉ?」と母に甘えるような語尾になっていきます。こころの家を見つけることができたカフカの出発点のように感じました。

 登場人物の誰に惹かれるかは、意見の別れるところでしょう。私は一番共感し、素敵だと思ったのは、佐伯さんを演じた田中裕子さん。優雅でシンプルで何かをあきらめたような眼差し。姿勢や身のこなしや表情に、美しい中年女性が表現されていました。

 あと蛇足ですが、淀みない長セリフを全体を通して惜しくも一回だけつっかえたのは、大島さん役の長谷川博己。やっぱり一番売れっ子だからかな。それから、カーテンコールの時、さくら役の佐藤江梨子が、晴れがましいような恥ずかしいような表情で、とても可愛かった。舞台はナマ物で観る日にちや場所、座席によっても微妙に表情を変えていくものなのでしょう。

 美しい世界を紡ぎ出した4時間弱の舞台、長さを感じませんでした。最後の拍手では、芳醇な時間を劇場にいるすべての人と共有した満足感。思い切って観に行った甲斐がありました。


@彩の国さいたま芸術劇場


★次回は、映画「アーティスト」です。

by cuckoo2006 | 2012-05-28 15:09 | 舞台 | Trackback | Comments(2)