小説、映画、絵手紙、都々逸
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「ディア・ドクター」監督西川美和

ディア・ドクター」 

c0186554_17374117.jpg見どころ
「ゆれる」の西川美和によるミステリアスな人間ドラマ。山あいの村で、人々から慕われていた医師の失踪の原因とは?数々の作品で独特の存在感を示してきた笑福亭鶴瓶が映画初主演。
ストーリー
山あいの村で、医師を務めていた伊野の元へ、医大を卒業したての研修医・相馬がやってくる。相馬は田舎の医療に戸惑うも、伊野の働きぶりにやがて共感を覚えるように。だが、かづ子という患者の存在が大きな事件を引き起こすことに。(Movie Walkerより)


 3年前の西川美和監督作品「ゆれる」が強烈な印象だったので、かなりの期待を持って観に行きました。映画初主演の鶴瓶が、まず良かった。余貴美子、香川照之、笹野高史といったツワモノの脇役陣に、負けていない、というより溶け込んでいました。自然体の存在感が流石です。けれども作品全体は散漫な印象で、残念ながらピンと来るものはありませんでした。

 伊野(鶴瓶)は、住民のほとんどがお年寄りという村の唯一の医者。伊野の診療所に医大を出たての相馬(瑛太)が研修にやって来ます。毎日、村を縫うように往診に回る伊野の姿が、人間臭く描かれていきます。

 急変した患者の老人の元へ駆け付けると、息の止まったオジイを家族全員が取り囲んでいる。心臓マッサージを施そうとする伊野に、「オジイ!」と泣きながら呼びかけていた家族は、一瞬微妙な反応を見せる。特に、この場では発言権がなく、オジイを主に介護しているだろう嫁が、膝の上で、エプロンをギューと握りしめる場面が印象的です。空気を察した伊野は、蘇生措置を止め、「今までよう、頑張ったな」とオジイを抱き起こして頬ずりする。この後の顛末があるのですが、「ゆれる」と同様に生身の感情がほとばしる数少ないツボを押されたシーンでした。

 村の人々に慕われる伊野に心酔した相馬は自分もここで働くと言い出します。しかし、実は伊野は無資格の偽医者であることを隠し通してきたのでした・・・。そんな伊野に一人の患者・かづ子(八千草薫)が、ある頼み事をする。私は、このかづ子の頼み事に、独りよがりな甘さを感じてしまい共感できませんでした。そして、彼女との約束を破ることが、伊野が自ら偽医者の立場を捨てる原因となるのですが、その決定的理由もイマイチ理解できなかった。かづ子への思慕か、自分の老いた母を投影したのか、それとも伊野の中で、もうすべてが潮時だったということなのでしょうか。

 最後に、失踪した伊野が再び姿を見せます。私はこれを、かづ子への淡い恋愛感情と感じたのですが、一緒に観た友人は、どこででも生きられる伊野のしたたかさ、と受け取ったそうで、成程!と思いました。観る側がそれぞれに感じるのが名作の特徴だと思いますが、この作品では、それが間延びした曖昧さ、散漫さとなってしまっているように思います。どうも胃の腑にすっきり落ちない感触が残りました。


@有楽町シネカノン
by cuckoo2006 | 2009-09-26 00:36 | 邦画 | Trackback | Comments(3)
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Commented at 2009-10-08 13:07 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by nohara_satuki at 2009-11-13 17:28
大の鶴瓶ファンの私としては期待半分、怖さ半分で
ドキドキしながらこの映画を見ました。

無医村という重いテーマにスポット当てた
シリアスな社会派映画なのですが、
笑顔の鶴瓶のイメージが強すぎ、なかなか入り込めない私でした。

[人は誰でも、誰かになりすまして生きている]というのが
この映画のテーマのようですね。
確かに、人は誰でも1度だけの夢芝居を
演じているのかもしれません。

鶴瓶を口説いて主役に抜擢したという気鋭の西川監督は
「伊野は得体の知れない人、善人ではないが
目の前の人の要求に応えてしまう自分の無さ。
鶴瓶もまた得体の知れない人、純粋に人を喜ばせたい本能が、
快楽になっている。似た人を選んだ」と
キャスティングを語っていますが
私もcuckooさん同様、監督が伝えたかったことは
よくわかりませんでした。

ただ最後に、伊野とかづ子さんが笑顔で顔を見合わせるシーンと、
無資格の伊野が肺気胸の注射を打つ怖~いシーン、
そして長閑でどこか懐かしい田舎の風景が深く心に残っています。
Commented by cuckoo2006 at 2009-11-15 13:03
鶴瓶の初主演映画と聞いて、彼がメジャーになる前からのファンのさつきさんをお誘い致しました。映画が終わってすぐに「ごめんね~、あんまり面白くなかったね~」と思わず言ってしまったほど私のツボからは逸れてしまったのですが、さつきさんが「面白かった、良かった」と言ってくれてホッとしました。masakoさんは、「ゆれる」(西川美和監督の前作)よりこちらの方が良かった、と言ってくれました。本当に映画の感想は人それぞれですよね。
もう一つの個人的感想はというと、実際にこういうお医者さんがいたらいいなあ、ということでした。私の理想のお医者さんは、痛いところを実際に触診してくれること、それから物が言い易いことです。25年のリウマチ歴で、4,5人の医師に診て頂きましたが、こういう先生はほんとに少ない。伊野鶴瓶は、この理想像そのまま。「どーですかぁー」とあの笑顔を向けられたらそれだけで具合が良くなってしまいそう。無資格では困りますけどネ。また、映画のお話その他、楽しみにしています♪
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