小説、映画、絵手紙、都々逸
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「1Q84」BOOK3 村上春樹[著]

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更に深く、森の奥へ。そこは世界にただひとつの完結した場所だった。どこまでも孤立しながら、孤独に染まることのない場所だった。(帯より)

 

 
 これほどまでに甘い甘いハッピーエンドの村上春樹を初めて読みました。ウヘエ~でした。
私は、90年代以降の村上作品のファンを自称しています。主人公が、光の方へ一歩踏み出す気配で物語が終わる、というのが90年代以降の村上作品の共通した印象です。それ以前80年代の作品は、登場人物の傷ついた魂が死の世界へ昇華することにより救済されていく、というのが私の持つイメージでした。

 「1Q84」BOOK3の結末は、あまりの完結した世界に安易さを感じるほど。返って物語の印象が薄まってしまいました。深夜、最後の第31章を読み終えた後、読後感の持って行き場の無さに、思わず第28章の「牛河」の章に戻って“口直し”をしてしまいました。

 それでもこのBOOK3、最終章を迎えるまでは、もう前のめりの斜め読みになるほど面白かったのです。BOOK1,2は、青豆と天吾の世界が交互に語られましたが、BOOK3では彼らに加えて「醜い存在」として描かれる中年男「牛河」の章が綴られます。月が1つしか見えない1984年にいる牛河の存在がBOOK3を読み易いものにしています。物語は、「ある目的のために」にシンプルに真っ直ぐ進んでいき、「解読本」が出回ったようなBOOK1,2の難解さは、ほとんどありません。

 私は、青豆と天吾よりも牛河が深く印象に残りました。『中央林間の建て売りの一軒家と、その小さな庭を元気にかけまわる小型犬の姿』がこの物語の中で、一番鮮やかな「絵」として心に残りそうです。「ふかえり」、「リトルピープル」、「さきがけ」、「空気さなぎ」そして「小さなもの」、いつかまた物語の中から散らばったピースが動き出しそうです。「牛河さん」も「ねじまき鳥クロニクル」からやって来たのでした。兎にも角にも、読んでいる間中、幸福感、高揚感を存分に味あわせてくれた「1Q84」、ありがとう!

by cuckoo2006 | 2010-05-03 23:21 | 村上春樹 | Trackback | Comments(0)
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