小説、映画、絵手紙、都々逸
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「わくらば日記」 朱川湊人[著]

d0074962_14172168.jpg姉さまが亡くなって、もう30年以上が過ぎました。お転婆な子供だった私は、お化け煙突の見える下町で、母さま、姉さまと3人でつつましく暮らしていました。姉さまは病弱でしたが、本当に美しい人でした。そして、不思議な能力をもっていました。人や物がもつ「記憶」を読み取ることができたのです。その力は、難しい事件を解決したこともありましたが…。今は遠い昭和30年代を舞台に、人の優しさが胸を打つシリーズ第1作。(文庫本裏表紙より)




 また続いて初めて読む作家。朱川湊人の“ノスタルジック・ホラー”と巻末の解説で形容されています。昭和30年代、東京・下町、お転婆な少女・和歌子は、病弱で美しい姉さまと厳しくやさしい母さまと貧しいながらも折り目正しく暮らしています。

 ある日、ふとしたことから和歌子は、姉の鈴音が、過去の出来事を画像再生するように透視する能力を持っていることを知ります。町内で起こったひき逃げ事件の犯人を突き止めたことを切っ掛けに、鈴音は難事件の解決のため、敏腕刑事・神楽に内密に協力することになります。鈴音の透視により明らかになる凄惨な事件の犯人とそれぞれに悲痛な背景。はじめは鈴音の特殊な能力を利用しているように見えた神楽刑事に、姉妹はその後、幾度も窮地を救われます。

 後半から姉妹の家に複雑な事情を抱える茜が舞い込みます。そして、裁縫で生計を立てる一家の元に遂に“産業革命”のミシンがやって来る。豊かさが幸福につながった時代を迎え、昭和のカレンダーが一枚ずつ捲られていきます。ミステリーでありながら、先へ先へと指が急くような展開の派手さはありませんが、読み進むうちに不思議と気持が落ち着いてくるような懐かしさがあります。

 ところで、この本の舞台は、わが足立区。物語は、姉妹が荒川土手に千住のお化け煙突を見に行って迷子になるところから始まります。私が2年前から住んでいる集合住宅は、日清紡績の東京工場跡地の西新井再開発地区に建てられています。引っ越してすぐ「中央卸売足立市場」の区民見学会に参加した時、年配のご婦人達に「日清紡の工場は隣の駅に届くくらい大きくてねえ。女工さん達は休みの日に北千住に遊びに行くのだけが楽しみだったんだよ」などという話を聞きました。路地の「ぼうせき通り」という小さなプレートが昔の名残をとどめています。ページを捲りながら、お化け煙突があった時代の、この辺りの様子に思い巡らせました。
 
 語り手の和歌子は、現在還暦に手の届く年齢。長期に不在の姉妹の父親の事情、そして鈴音と茜のその後の人生・・・和歌子が語り出す第二作を楽しみにしています。

by cuckoo2006 | 2010-08-30 13:03 | 本(日本のもの) | Trackback | Comments(2)
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Commented by きぬえ at 2010-09-15 20:50 x
直木賞を読もう!、シリーズで先日読んでみたのが、
著者の”花まんま”、とっても良かったです、、、(^-^)
Commented by cuckoo2006 at 2010-09-16 21:27
「おばさんの、ひとりごと」の“直木賞を読もう”シリーズ、参考にさせて頂いてます♪
ムフフフ、「花まんま」も実は入手済み。楽しみです。あと他に「都市伝説セピア」も面白そうですね。
人力車に乗ったきぬえさんを拝見しました。お優しそうでとても素敵でした♪

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