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「蛇を踏む」 川上弘美[著]

  d0074962_17020237.jpg藪で、蛇を踏んだ。「踏まれたので仕方ありません」と声がして、蛇は女になった。「あなたのお母さんよ」と、部屋で料理を作って待っていた…。若い女性の自立と孤独を描いた芥川賞受賞作「蛇を踏む」。“消える家族”と“縮む家族”の縁組を通して、現代の家庭を寓意的に描く「消える」。ほか「惜夜記」を収録。(文庫本裏表紙より)  
 

 
 「蛇を踏む」は、まあ何とか読めました。あとの二篇「消える」は読むのに苦痛を強いられ、「惜夜記」は読んでいるうちに腹が立ってきて途中で止めました。芥川賞作家の難解さ、などというものではなく、私には、話している本人も整理できてない昨夜見た断片的な夢の話を長々と聞かされているようでした。熟れてない話を聞く辛さを感じました。

 著者川上弘美さんが、あとがきで、自分の書く小説をひそかに「うそばなし」と呼んでいる、その中で遊んでくれたら嬉しい、と結んでいます。「蛇を踏む」の中では遊べませんでしたが、1996年発表のこの作品から10年後に出された真鶴」 では、現実と妄想の狭間の世界へぐんぐん引き込まれました。「うそばなし」が格段に進歩しています。デビュー以後着々と、単細胞読者をもしっかり取り込むプロの小説家へと変貌を遂げていったのでしょう。何といっても良い小説の第一条件は、読者を疲れさせず退屈させずにページを捲らせることだと思います。

 さて、「蛇を踏む」、おどろおどろしい話という先入観があったのですが、さくさく読めました。女学校の理科の教師を辞めたヒワ子は、数珠屋「カナカナ堂」に勤めている。ある日、公園へ行く途中の藪で蛇を踏んでしまったヒワ子の部屋に女の姿になった蛇が棲みつく。蛇はヒワ子に「蛇の世界はあたたかいわよ」と毎日自分達の世界へ来るように誘う。一方、駆け落ちして夫婦となった数珠屋の主人のコスガさんの妻ニシ子さんの元にもずっと蛇がいるようだった・・・・

 こちら側の世界に居場所を見つけられない人達の元へ蛇が現れてするりと向こう側へ誘う・・・っていうお話なんだろうなあと感じましたが、最後まで読者の想像力に物語を委ね過ぎのように思います。「若い女性の自立と孤独を描いた云々」という解説は親切過ぎるのじゃないでしょうか。ばっさり終わった不完全燃焼の面白くない後味が残りました。

 それにしても川上弘美さんの小説は守備範囲が広い。ベストセラー「センセイの鞄」は川上さんの代表作だし今年1月に読んだ「これでよろしくて」は婦人公論に連載され主婦層読者をターゲット。隆々たる才能の幅を感じます。結構妥協して書いてるとこもあるのカナ、は余計なお節介ですが、これからも楽しみに読ませて貰います。

by cuckoo2006 | 2010-11-30 22:49 | 本(日本のもの) | Trackback | Comments(0)
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