小説、映画、絵手紙、都々逸
by cuckoo2006
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30
カテゴリ
全体
本(日本のもの)
本(外国のもの)
海外ミステリー
村上春樹
邦画
洋画
舞台
えてがみどどいつ
3分スピーチ@話し方教室
エッセイ@文章教室
未分類
以前の記事
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
more...
最新のコメント
良かった~!
by jyon-non at 22:26
jyon-nonさん ..
by cuckoo2006 at 22:41
旅の思いででしょうか。・..
by jyon-non at 14:16
jyon-nonさん ..
by cuckoo2006 at 17:21
ああ、胸がいっぱいになっ..
by jyon-non at 17:09
jyon-nonさん ..
by cuckoo2006 at 22:48
炬燵にのってがいいですね..
by jyon-non at 23:10
まったくです。
by jyon-non at 23:07
きぬえさん 日本ではこ..
by cuckoo2006 at 15:08
詳しいレポ、ありがとうご..
by きぬえ at 21:03
最新のトラックバック
2014年版:実力派若手..
from dezire_photo &..
修羅を脱け出せるのはデク..
from 梟通信~ホンの戯言
アントーニオは鬱で猿之助..
from 梟通信~ホンの戯言
イリュージョニスト
from 龍眼日記 Longan D..
武士の一分
from 映画や本を淡々と語る
mini review ..
from サーカスな日々
「手紙」東野圭吾著、読ん..
from 男を磨く旅
エジンバラ といえば
from エジンバラ?
チルドレン |伊坂 幸太郎
from ミステリー倶楽部
ブルー・リボン賞。渡辺謙..
from 芸能ニュース 速報ニュース ..
ブックマーク  (五十音順)
タグ
(37)
(16)
(10)
(6)
(5)
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧


「猫を抱いて象と泳ぐ」 小川洋子[著]

d0074962_14595261.jpg
「大きくなること、それは悲劇である」。この箴言を胸に十一歳の身体のまま成長を止めた少年は、からくり人形を操りチェスを指すリトル・アリョーヒンとなる。盤面の海に無限の可能性を見出す彼は、いつしか「盤下の詩人」として奇跡のような棋譜を生み出す。静謐にして美しい、小川ワールドの到達点を示す傑作。(文庫本裏表紙より)

 
 
 久々に読み終えるのが惜しくなる小説でした。「博士の愛した数式」しか読んだことがなかった小川洋子さんの並々ならぬ才能を感じました。
 
 読み進むうちにひょっとしてこれは本当にあった話なのかな、という気がしてきました。最終章のあとに、自動チェス人形と、それを操作していた、この物語の主人公であるリトル・アリョーヒンが確かにこの世に存在した証拠が示されます。それは、今も私営チェス博物館に展示されているチェスゲームを記録した棋譜でした。変色したその一枚の棋譜から、作者のイマジネーションは、リトル・アリョーヒンの美しく儚い人生を繰り広げてみせます。
 
 少年は、祖母と弟と出掛けるデパートで、一人屋上のいつもの場所で過ごします。そこには、小象のときにインドから運ばれ、大きくなり過ぎたため屋上から降りることができなくなったインディラの形見の足輪がありました。少年が、屋上で一生を過ごした象のインディラに思いを馳せるこの冒頭シーンに、小説の世界へスルリと吸い込まれていきます。
 
 続いて描かれる、少年とチェスの師匠・マスターの交流も実に暖かく優しいものです。住居用に整えられた回送バスの中で、学校帰りに少しずつ馴染んでいくチェスの世界。大きな窓の外には季節の移り変わりがあり、バスの中はマスター手作りのおやつの匂いが溢れる。マスターは美しい棋譜を描くチェス指しでした。「慌てるな、坊や」といつも語りかけるマスターに、少年はチェスのすべてを教わる。やがて、ここから少年は、伝説のチェスプレイヤー・リトル・アリョーヒンとなり、果てしないチェスの海へ泳ぎ出していきます、“猫を抱き、象とともに”・・・・・

 登場人物たちは、みな“閉ざされたところから出られない”状況にあります。閉じ込められ身動きができないからこそ、肉体と精神が研ぎ澄まされ、誰も手の届かない境地へ、リトル・アリョーヒンは到達できたのかも知れません。彼が掴んだ愛も崇高なものでした。とは言っても、これだけの才能がありながら、リトル・アリョーヒンの生涯はあまりに哀し過ぎました。
 
 俳優の山崎努氏が巻末の解説でこんなふうに書いてます。
『自分から望んだわけでもないのに、ふと気がついたらそうなっていた。でも誰もじたばたしなかった。中略「仕方ない事情」は受け入れたほうがいい。それも早目に。そのあとにお楽しみが待っているのだから、と仕方なくなってから七十数年を過ごした僕はあらためて思う。』
これには、しっくり来ました。そう、ここからどこへも行けないのだから、ここでうんと頑張り楽しむ。この本の感想として、そのままイタダイテしまいます!


★次回は、映画「コクリコ坂から」です。

by cuckoo2006 | 2011-08-06 14:50 | 本(日本のもの) | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : https://cuckoo2006.exblog.jp/tb/14288357
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
<< 「コクリコ坂から」 監督宮崎吾朗 「アンダルシア女神の報復」 監... >>