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「海辺のカフカ」演出蜷川幸雄あらすじ
主人公の「僕」は、自分の分身ともいえるカラスに導かれて「世界で最もタフな15歳になる」ことを決意し、15歳の誕生日に父親と共に過ごした家を出る。そして四国で身を寄せた甲村図書館で、司書を務める大島や、幼い頃に自分を置いて家を出た母と思われる女性(佐伯)に巡り会い、父親にかけられた “呪い” に向き合うことになる。一方、東京に住む、猫と会話のできる不思議な老人ナカタさんは、近所の迷い猫の捜索を引き受けたことがきっかけで、星野が運転する長距離トラックに乗って四国に向かうことになる。 それぞれの物語は、いつしか次第にシンクロし…。(埼玉県芸術文化振興財団HPより) 昨年、初めて村上春樹作品が映画化された「ノルウェイの森」(トラン・アン・ユン監督)に続き、今度は村上作品が日本で初めて舞台化されました。蜷川幸雄演出による「海辺のカフカ」です。 「海辺のカフカ」は、村上作品の中で好きな小説の第3位。(ちなみに第1位は「ねじまき鳥クロニクル」、第2位は「スプートニクの恋人」)これは何としても観たい。チケット握り締め、与野本町の彩の国さいたま芸術劇場へ出かけました。 まず幕開け、大きな水槽のようなアクリルケースが幾つも登場します。その中に配置されたそれぞれのシーンに、街の中の様々な音が被さります。照明と舞台装置の中を動く俳優たちにより、形創られる現実と幻想が交差する世界。観念的、象徴的ともいわれる村上春樹の世界が目の前に広がります。舞台を眺めているうちに、物語を読んでいる自分の頭の中を自分が覗きこんでいるような不思議な気分になってきました。 四国の高松、中野区野方、そして戦時下、と三つの世界が原作通りに同時進行していきます。アクリルケースがシーンごとに入れ替わり、音楽と照明により、切れ味良く場面展開して行きます。俳優達のセリフ回しや間の取り方が完璧で、間延びしたところが一切ないのに感心します。そうじゃなきゃ蜷川さんの舞台には呼ばれませんよね。そして、寸分の狂いなく繊細に舞台を動かしていく黒子たちの動きにも目を瞠ります。図書館と森と海の底が隣り合うような世界に引き込まれました。 原作を読んだのは6年前ですが、シーンの一つずつが蘇り、本のイメージが細部まで違和感なく伝わってきます。ただ、不覚にも私は“カラス”の存在を忘れてしまっていた。分身のようにカフカに寄りそうのは何者なのか?黒白ツートンカラーの頭だから、カフカの未来の姿なのか?と思ったまま休憩時間にパンフレットを買ったら、カフカを導く“カラス”でした。ああ、途中で気がついて良かった。 それからもう一つ、私は、原作の中で、佐伯さんがカフカの本当の母親とは受け取りませんでした。象徴としての母というか、母を投影した、という印象だったのですが、舞台では、佐伯さんはカフカの母親と断定されています。 村上さんの本の中では、あらゆることが読み手に委ねられ、謎が謎のまま終わっています。例えば、カフカの父親を殺したのは誰なのか?父親が息子にかけた呪いとは?戦時中、ナカタさんが子供の時、見舞われた事故の真相は?そして、佐伯さんは本当にカフカの母親なのか?たくさんの不確実さの中で、舞台では、母と息子の関係を明確にすることにより、物語を観客の胃の腑に落ち着き易くしたのかなと思いました。 前半、タフな自分になるために家出したカフカが、孤独を抱え、誰にも心を開かない姿を見せますが、やがて出会った人々、サクラや大島さんや佐伯さんの優しさに触れ、安心と拠り所を得ていく。話す口調も「――なのぉ?」と母に甘えるような語尾になっていきます。こころの家を見つけることができたカフカの出発点のように感じました。 登場人物の誰に惹かれるかは、意見の別れるところでしょう。私は一番共感し、素敵だと思ったのは、佐伯さんを演じた田中裕子さん。優雅でシンプルで何かをあきらめたような眼差し。姿勢や身のこなしや表情に、美しい中年女性が表現されていました。 あと蛇足ですが、淀みない長セリフを全体を通して惜しくも一回だけつっかえたのは、大島さん役の長谷川博己。やっぱり一番売れっ子だからかな。それから、カーテンコールの時、さくら役の佐藤江梨子が、晴れがましいような恥ずかしいような表情で、とても可愛かった。舞台はナマ物で観る日にちや場所、座席によっても微妙に表情を変えていくものなのでしょう。 美しい世界を紡ぎ出した4時間弱の舞台、長さを感じませんでした。最後の拍手では、芳醇な時間を劇場にいるすべての人と共有した満足感。思い切って観に行った甲斐がありました。 @彩の国さいたま芸術劇場 ★次回は、映画「アーティスト」です。
by cuckoo2006
| 2012-05-28 15:09
| 舞台
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Comments(2)
Commented
by
junko73oz at 2012-05-28 18:46
素晴しい舞台だったと評判は聞いていましたが
観られたのですね。 舞台ってどうなのだろうなどと思わず 行けばよかったと後悔していますが、 まだこれから関西での公演があるようなので・・・
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Commented
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cuckoo2006 at 2012-05-29 21:45
あらすじを説明するのも一苦労の(ジョニー・ウォーカーにカーネル・サンダース・・・)あれだけの長編を良くまとめあげたなあと思いました。お芝居に縁のない私には、蜷川さんの舞台は異空間でした。
junkoさんのブログで、「小金井公園」とか「オズ」とか長年馴染んできた場所を見つけて喜んでおります♪
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