小説、映画、絵手紙、都々逸
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「円朝の女」 松井今朝子[著]

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内容(「BOOK」データベースより)
江戸から明治へ。時代の節目に、男が変わる、女が変わる…。「牡丹燈籠」や「真景累ヶ淵」などの怪談噺をはじめ、「文七元結」「塩原多助」など数々の創作落語を残し、近代落語の祖と言われる落語界のスーパースター、三遊亭円朝。江戸から明治へ、幕府の崩壊によりすべての価値観が揺らいだ歴史の転換期に生きた大名人と、彼を愛した五人の女たちの物語。
 

 実際に三遊亭円朝を良く知っている人から、直に話を聴く面白さです。語り手は、円朝の元弟子で“五厘”と呼ばれ芸人と席亭のあいだを取り持つ八つぁん。“五厘”とは、客一人あたり一銭の半分、五厘の手間賃を得るのに由来するそう。江戸と明治をちょうど半分ずつ生き、62才で亡くなった円朝。近代落語の祖と言われる三遊亭円朝の生身の姿が描かれます。

 円朝と濃く関わった五人の女たちとの遣り取りが、八つぁんの畳み掛ける江戸弁で一章ずつ進みます。まず、三遊亭円朝という人を取り上げたのがズバリ当たりですね。著者による、やはり歴史上の人物を描いた、十返舎一九の「そろそろ旅に」を読みましたが、こちらは教科書でお目にかかるレベルの有名人。ですからやはり、史実を調べ上げた上に作家が練り上げた人物像、という印象を持ちました。円朝はというと、実は私、歌舞伎や落語を齧り始めるまで、この方のこと、存じませんでした。知名度からも亡くなった年代からも、まだほのかな温もりの残っているうちに、その人となりに触れられたように感じました。実際の円朝を知っている故人から聞いた話、くらいの真実味があります。

 身近にいる者にだけ見せる円朝の素の顔。それを覗くのは楽しいものです。ーー若い時分には、女になぶられても平気なたちで、女にさせたいようにさせとくもんで、余計にもてたーー芸人にはめずらしく堅気で、めったに羽目をはずさなかったが、後年のように悟りすますほどではなかったにしろ、ことあるごとにぐっと我を抑えて他人にはなるべくいい顔を見せたーーなどなど。一人息子の朝太郎の起こした新聞沙汰も本当のことなのでしょう。

 「御一新」の明治維新を迎えた時に、円朝は30才。昨日までと様変わりする世の中に、円朝と縁を持った女たちも時代の波に飲み込まれます。女たちの裏のまたその裏の顔も描かれ現実味がありました。円朝の子を生んだが、小さな意地や嫉妬から自ら不幸を呼び込むような運命を辿った「お里」、花魁から円朝の女房になった「お幸」はしなやかな強さがありましたが、どうも八つぁんには受けが宜しくない。

 読み終わっての円朝のイメージはというと、後世に遺したあれだけの功績、プラス、この本にあるくらいのプライベートライフならば、人間的にもかなり立派な人物だった、と思いますねー。最後の章では、八つぁん自身のオチもあり、良い読後感です。

 昭和の名人と呼ばれる噺家さんたちも、近親の関係者がすべて亡くなられた後、このような本の中で蘇るのかも知れませんね。


★次回は、西加奈子の「しずく」です。

by cuckoo2006 | 2012-08-24 20:52 | 本(日本のもの) | Trackback | Comments(2)
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Commented by きぬえ at 2012-09-30 12:01 x
著者のブログがなかなか辛口で面白くて、よくのぞきに行っております、(^-^)
Commented by cuckoo2006 at 2012-09-30 17:28
私も「今朝子の晩ごはん」愛読してます。ブースカ首相に続いて、『アベボン』、『キモコワ茂くん』とあらたなニックネームが登場しましたね♪
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