絵手紙に自作の都々逸を載せています。小説と映画の感想も。
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「海路」 藤岡陽子[著]

「海路」 藤岡陽子[著]_d0074962_14035109.jpg

内容(「BOOK」データベースより)
独りで過ごす寂しさを感じながらも、診療所で懸命に働く43歳の看護師。ある日突然、老医師が閉院すると言い出した。そして、その日を前に失踪した。唯一の居場所を失った彼女は、先生を捜す旅に出る…。

 

 2時間ほどで読める中編小説。テーマ競作小説として書かれたそうです。そのテーマは「死様」。登場人物の日常と想いが淡々と綴られ、感情の起伏の少ない描写に、それぞれの寂しさが浮き出すようです。共感しました。

 東京の郊外にある月島医院で働く看護師の志木は、ひと月ほど前に、院長の月島から医院を閉めることを聞かされる。大学病院での激務に疲れ、月島医院で働き出したのは27才の時。それから16年の歳月が流れていました。これほど長く月島医院にいることになるとは思ってもなかった志木ですが、一方では、単調だが穏やかな毎日が永遠に続くような気もしていました。月島の方は、15年前に妻と小学生の息子と別れ、医院の二階で生活をしています。

 患者にも職員にも、一線を置いた優しさで接する月島医師。言動は常に自制が利き、人に甘えることも甘えられることも好まない。しかし、閉院が迫る往診の帰り、志木に、気力体力の衰えを打ち明けたりもします。そんな折、月島は突然姿を消す。先生の身に何が起こったのか、胸騒ぎを感じた志木は、月島を追って空港へ向かいます。

 自分を探しに来てくれた志木の顔を見た時、月島はどんなに嬉しかったことでしょうか。老医師は、これからも一人のまま、何もできなくなる、何者でもなくなる自分が恐い、と初めて胸の内を語ります。月島の中では、医師としてのアイデンティティを失うことが一番大きなことのように感じました。月島先生への私の感情移入は、ここで少し薄れかけましたが、やはり彼はまだまだ良いお医者さんでいるべき人。

 志木さんが自分を心配して駆けつけてくれたこと、そして彼に届いた「つきしませんせいへ」の手紙。それは月島が誠実に生きてきた結果、手にしたものでしょう。彼は、また歩き出すと確信させてくれます。「センセイの鞄」の展開になりかけたのを、「70代と40代では見えている景色が違うのですよ。志木さん」ときっぱり言い切ったのは、さすが月島先生でした。


★次回は、映画「ツナグ」です。

by cuckoo2006 | 2012-10-15 18:43 | 本(日本のもの) | Trackback | Comments(0)
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