絵手紙に自作の都々逸を載せています。小説と映画の感想も。
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「グッド・バイ」太宰治【著】

「グッド・バイ」太宰治【著】_d0074962_10591953.jpg

被災・疎開の極限状況から敗戦という未曽有の経験の中で、我が身を燃焼させつつ書きのこした後期作品16編。太宰最後の境地をかいま見させる未完の絶筆『グッド・バイ』をはじめ、時代の転換に触発された痛切なる告白『苦悩の年鑑』『十五年間』、戦前戦中と毫も変らない戦後の現実、どうにもならぬ日本人への絶望を吐露した2戯曲『冬の花火』『春の枯葉』ほか『饗応夫人』『眉山』など。 (文庫本裏表紙より)


新型コロナウイルスがなかったら観に行きたかった大泉洋主演の「グッドバイ 嘘から始まる人生喜劇」。書店の映画化コーナーに平積みされている太宰治の原作を買ってきました。

未完の遺作「グッド・バイ」の他、収められている15作の短編は、すべて戦後に書かれたもの。昭和20年の終戦直後から昭和23年の6月13日に亡くなるまでの3年間の作品です。

最初の「薄明」は、空襲によって焼け出され妻の実家へ幼児二人を連れて疎開する実体験と思われる話。非常時にちっとも役に立たないが子煩悩な父親の姿が描かれます。 

今となっては、太宰を読むと「困った人だなあ、この人は」という感情が沸いてきます。太宰に心酔していた学生時代には考えられないこと。でもこの短編を毎夜一編ずつ読むうちに「凄い人だ、この人は!」に気持ちは変わっていきました。

自分のよく知っている人のような 自分自身のような登場人物達。その心の奥を透かすような 自分の心を晒すような描写。どれ一つ取っても通り一編の話になっていません。そして読者の想像を超えたところにヒラリと着地してみせます。  

戯曲二編を含む小作品すべてに並々ならぬ才能を感じました。太宰の目を通して見る世の中の面白さと恐さ。当たり前ですが、やはりこの人は普通の人ではありませんね。

文庫本の巻末に奥野健男氏が昭和47年に書かれた解説が載っています。太宰は「文学的・芸術的には少しも行きづまっていなかった」という一文。全くその通りだと思いました。

表題の「グッド・バイ」は新聞小説10回分くらいの長さ。朝日新聞に連載中の「カード師」(中村文則)を早々に挫折してしまった身としては、ユーモアいっぱいの「グッド・バイ」の読み易さが沁みます。 

完成することがなかったこの物語も予想を超えたところへ読者を連れて行ってくれたことでしょう。「困った人だなあ、この人は」という親しい感情も含め、凄い作家だと漸く気づきました。

by cuckoo2006 | 2020-03-28 11:07 | 本(日本のもの) | Trackback | Comments(2)
Commented by exarakant at 2020-03-30 17:18
やっぱり太宰へ来ましたね
同じく学生の頃H大の「太宰研」というサークルに所属しているのがいまして
その影響もあって片っ端から読んで文句というか批判していた時代がありましたよ
この小ブルめがなんてね
以来「斜陽」など何度も繰り返して読んだものもあります
今のような時代にこそよくわかる小説だったのでしょうかねぇ
Commented by cuckoo2006 at 2020-03-31 11:53
exarakantさん
太宰は、教科書の「走れメロス」だけの人(うちの夫)とドップリ嵌まる人とはっきり別れるようですね。
私は「書けなくなった」ことが亡くなったことに少なからず影響を与えたのでは、と思い込んでいたのですが、亡くなる前の3年間ほどの作品集を読み、それは大きな間違いと分かりました。
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