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「スティル・ライフ」 池澤夏樹〔著〕

d0074962_954626.jpg伯父夫婦の留守の屋敷に住むフリーターの「ぼく」は、アルバイト先の染色工場で、少し年上の佐々井と知り合う・・宇宙のこと地球のこと野球のこと、二人は静かに語り合った。
やがて佐々井のある頼みによって屋敷で始まる共同生活・・・

実に不思議な小説だった。時折「浮遊感」を感じながら読んだ。

話は、ただただ淡々と進み、やっとストーリー性が出てきたところで、バッサリ終る。
正直言うと肩透かしされた感じだった。えっ、これでオシマイなの?

でも、心の深いところまで染み透る文章に、度々はっとした。そんなふうに時々立ち止まりながら読み進んで行った。

たとえば冒頭の(以下、文中のままでなくツギハギ、あしからず)

『人や工場や山脈の外の世界と自分の心の中にある広い世界に連絡をつけることが大切。二つの世界の呼応と調和をはかるのだ。星を見るとかして。星ではなくてせせらぎでもセミ時雨でもいいのだが。』

この「星を見るとかして。」というのは感覚的にとてもしっくり来たのだった。

著者紹介に「詩人」と「物理学科出身」とあって、物語に漂う一種独特な不可思議感の謎が解けたような気がした。

あともう一編「ヤー・チャイカ」、“わたしはカモメ”の意味の作品も収められている。
器械体操をする高校生の娘カンナは、父親と二人暮らし、ひょんなことから出会ったロシア人男性と父娘の交流は・・・

こちらも宇宙飛行士からまた「理科」の世界が広がっていく。
カンナと想像上の恐竜、ディプロドクスのやり取りが凄くいい。こっちの話の方が私は好きだった。

2編とも何にも起こらない。
「事件」も「諍い」も「恋愛」も見事に何一つ・・そこに作者の一つの意図を感じた。
池澤夏樹、ちょっと気になりました。もう一冊くらい読んでみようかな。

「スティル・ライフ」は、1987年芥川賞受賞。
by cuckoo2006 | 2006-06-22 22:12 | 本(日本のもの) | Trackback(1) | Comments(0)
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