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「四つの嘘」 大石静〔著〕
脚本家・大石静の新刊本、昨秋、日曜版の紹介記事が面白そうだったので図書館に予約、すっかり忘れた頃にやって来た。
70年代の終りに女子大付属高校の同級生だった四人の女性達が主人公。 優等生のリーダー満希子、その子分格の夢見る少女・美波、美人ではないが妖艶な魅力を持つ本屋の娘・詩文、外科医になった秀才のネリ。 高校時代、美波は、東大生の彼氏・河野を詩文に奪われてしまう。外交官となった河野と結婚したもののすぐに離婚した詩文は、満希子からの電話で、美波と河野がニューヨークで事故死したことを知らされる・・・ もう、ドロドロだった。 女のずるさ、醜さ、愚かさ、したたかさ・・・「負」の感情をデフォルメして描いているので、共感できる人物が一人も居なかった・・ 登場人物が好きになれないと私はどうも読むことが苦痛になってくる。 そして、彼女達が発する「毒素」は、自らの皮膚感覚で思い当たることばかり・・・余計に目を背けたくなった。 けれども、息苦しいのは、半分まで。 後半からは、四人の女達の伸びやかだった高校時代そのままの豊かさな心、真っ直ぐな意志、それに加えて今の年齢までに積み上げられてきた強さ、柔軟さ、哀しさが見えてくる。 そして、時に疎ましく憎しみ合いながらも、女をがっちりと受け止めるのは、やはり女であるということ。 そういう意味で、彼女達の周りにいる男達は、皆パートナーときっちり向き合うことをどこかで避けている希薄な存在として描かれている。 最後に、美波の供養のためにマンハッタンへフェリーで向かう三人・・・ ここまで誰一人、自分の思うような人生を送ってきた女はいない。 生身の心とからだを抱えて生きていくのは骨が折れる、でも最後まで何とか歩いて行かなくては・・ 死んだ美波も含めて女四人の静かな連帯感を感じました。 2004年、産経新聞に連載された大石静はじめての新聞連載小説。
by cuckoo2006
| 2006-08-01 09:56
| 本(日本のもの)
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