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「国境の南、太陽の西」 村上春樹〔著〕
「アフターダーク」、「海辺のカフカ」あたりからずっぽりハルキに嵌り、村上氏の長編小説全11作を読破しようなどと決意したのだった。
が、8作ばかり続けて読んだところで身体が拒否反応。もうどうしても次の本を手に取れなくなってしまった。 そりゃそうだ。幾ら好きでも同じものばかり食べ続けてれば仕舞いにゃ見るのも嫌になりますって。 おまけに春樹氏は白いご飯に味噌汁って感じじゃない。三食“アボガド巻き”食べてハルキ食中毒を起こしてしまったみたい・・ それで、2ヶ月の冷却期間を経て読んだ9冊目の「国境の南、太陽の西」ー 「ひ弱でわがままな一人っ子」の僕・ハジメは12歳。小5の時、同じクラスに転校してきた島本さんと心を通わせるようになる。彼女は脚が悪く、独自の世界観をを持ち、そしてやはり一人っ子だった・・ ・・高校生になったハジメは、同級生のイズミと付き合うようになる。心優しいイズミにハジメは、島本さんと過ごした以来の安らぎを見出す。しかし、この恋もイズミを酷く傷つける形で唐突に破局する・・ ・・そして、37歳となったハジメ。結婚して二女の父となりジャズバーを繁盛させる彼は絵に描いたような幸せの毎日のなか、店を訪れた島本さんと再会を果たす・・・ 優しさと残酷さ、女の子達のけなげさ、臆病さ、ハジメと少女達の心の揺れ幅を描いた思春期までは、すっと心地よく読めた。 でも、その後、家庭と島本さんとの間で葛藤する中年になったハジメには、もう白けるばかりだった・・ 「羊男」も「日本兵」も「カーネルサンダース」もいつもの象徴的な人物は一人も出て来ない極ストレートな恋愛不倫小説という印象。 だけどいつもの「コレだからハルキはやめられない!」というピリッとしたものがなかったなあ・・ これは、それぞれの年齢から見える景色の違いも大きいと思う。この小説は、人生における「喪失感」が大きなテーマ。 今のワタシが思う喪失感ってものには、「老い」「死」というものがしっかりと視野に入っている。37歳の男性の喪失感には感情移入できなかったのが正直なところ・・ 30代の人が読めば共感するところも大きいのではないかと思う。 「何かを捨てたり、何かを失ったりしているのはあなただけじゃないのよ」 と夫婦の対話のなかで静かに告げた妻・有紀子が一番好感の持てた人物だった。 1992年、村上春樹43歳の時の作品です。
by cuckoo2006
| 2006-08-15 00:21
| 村上春樹
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Tracked
from 出合い、恋愛、そして結
at 2006-08-15 18:16
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