カテゴリ
全体本(日本のもの) 本(外国のもの) 海外ミステリー 村上春樹 邦画 洋画 韓国映画 舞台 えてがみどどいつ 折り込み都々逸 折り込み短・狂歌 狂歌(今年を振り返って) 絵手紙展 3分スピーチ@話し方教室 エッセイ@文章教室 児童文学 旧作再掲載 未分類 以前の記事
2024年 03月2024年 02月 2024年 01月 2023年 12月 2023年 11月 2023年 10月 2023年 09月 2023年 08月 2023年 07月 2023年 06月 more... 最新のコメント
最新のトラックバック
ブックマーク (五十音順)
★都々逸しぐれ吟社★
伊勢の手鏡 インディアンとウチナーンチュ Welcome to Dolphin Samba えっちゃんの絵手紙日記 ブログ版「江戸時間で暮 す」 小野桂之介の「都々逸っていいなあ」 おばさんの、ひとりごと 想い出CameraⅣ 北川ふぅふぅの赤鬼と青鬼のタンゴ 霧島の森よりキルトとともに愛をこめて・・・ くぬぎの森の物語 / 鵜澤廣 春夏秋冬 銀の絵手紙 JAZZ VOCAL KUNIE IWANAMI ないものを あるもので 日本語のおもしろ言葉遊び 日本回文協会 日々是絵手紙 梟通信~ホンの戯言 47都道府県温泉制覇 +旅の都々逸 タグ
絵手紙(555)
都々逸(449) 愛犬ハル(58) 折り込み都々逸(31) 湯呑み(13) 小説(12) どどいつ(11) 3分スピーチ(9) 村上春樹(7) 菊(7) 記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
「壬生義士伝」上・下 浅田次郎〔著〕
妻子を飢え死にさせぬため南部藩を脱藩し、新撰組の隊士となった下級武士・吉村貫一郎、
疎んじられ軽んじられながらも侍の義よりも家族を守ることを命とし、混迷の時代を生きた南部武士のその生涯― こんなに面白く時代小説を読んだのは初めてだった。 物語は、貫一郎の独白のほか、幕末から半世紀を経た大正の「現代」にも舞台を移す。 非業の死を遂げた貫一郎の生涯について、一人の新聞記者が、彼を知る人たちを訪ねて廻る。生き残った人々が語り始める五十年前の記憶・・・ この手法が、ガチガチの時代モノという印象を薄め、私にはとても読みやすかった。 金には滅法穢く、妻の器量の良さに子供の出来の良さばかりを自慢する貫一郎、小雪のなか、命乞いの場面から登場するこの主人公は、どうしようもなく情ない・・ が、次々に語り手を変え、時代を遡っていくうちに、愚直なまでに信念を貫いた貫一郎の輪郭が少しずつ浮かび上がって来る・・ そして、読み終わってみれば、誰よりもつおぐ誰よりも優すぐ精一杯生き抜いた南部武士・吉村貫一郎にまんつまんつゾッコンでがんす! 盛岡の言葉の何と穏やかで心地良いこと。四季の美しいこと。 運命の巡りあわせから貫一郎に切腹を命ずることとなる大野次郎右衛門との二代に渡る友情もこの物語の核となっている。 登場人物の生きる姿勢、心の持ち方が今日にも大いに参考になると思う。 冷酷非道な人物の代表格として描かれる大野、それから新撰組の斎藤一なども別の角度から光を当てた表情を見せ温かみを持たせている。 どの人物に共感するかは好みの分かれるところ。 私が好きだったのは、まず貫一郎、それから大野千秋、新撰組の中では、永倉新八が好きだった。 とにかくあざといくらい巧い浅田次郎、ツボの押しどこ、泣かせどこを知り尽くしている。 司馬遼太郎より十倍楽しめました!
by cuckoo2006
| 2006-08-26 18:38
| 本(日本のもの)
|
Trackback
|
Comments(8)
Commented
by
miya
at 2006-08-26 22:05
x
章子さん、「壬生義士伝」、よくぞ書いてくれました!
この本は、その後の私の読書傾向を変えてしまったといっても良いほどの一冊です。 私の場合は、貧しさ故に、遠く越後にもらわれていった父親と同じ名前の農学博士、吉村貫一郎のエピソードである最後の章がとても心に残りました。 彼が、稲の品種改良に一生を捧げた動機ー貧しさのために一家離散をする事がないようにという、祈りにも似たものーこそが、父である貫一郎の遺志を汲むものであると思いました。 そして、南部の言葉を知らないはずの彼が、盛岡の駅に立った途端、南部の言葉で感じるんですねぇ。 父親である貫一郎と同じように、南部の風を南部の言葉で。 もう、この章は号泣しながら読みました。 実は本の前に映画をみたんですが、映画の方は数あるエピソードをうまく切り取って、こちらもとてもよくできていると思いました。 映画の方も、機会がありましたら是非ご覧ください。
0
Commented
by
cuckoo2006 at 2006-08-27 15:07
miyaさんもお読みでしたか!嬉しいなあ。
最終章、良かったですよね。 赤ん坊の顔を見ることもなく死んで行った父・吉村貫一郎、妻しづが、せめてもと父の名をつけた三人目の子供・・農学博士となった貫一郎を最後の語り手に持ってくるあたり、流石だなあと思いました。 自害の場で薄れいく意識の中、父は、妻、子一人一人に愛しい思いの限りを吐き出します。最後にまだ見ぬおぼっこへ抱いてさえやれぬことを詫びる。そして地獄にも極楽にも行かず、父の魂魄は片時も離れずお前のそばに居てやることを約束します。 ですから、父の魂も貫一郎とともに盛岡の駅に降り立ったのだろうなと最後の南部の話し言葉から感じました。 実は昨日DVDを借りに行ったのですが、生憎貸し出し中でがつかり。 貫一郎役の中井喜一は、ほぼイメージ通り、必ず観ますね! ありがとうございました。 AKIKO
Commented
by
楽生
at 2006-08-28 20:53
x
章子さんは、たくさんの本を読み、映画を見ているのですね。そんな感動の蓄積が、すばらしい都々逸の作品になるのですね。僕は司馬遼ファンで、今は「街道をゆく」(全43巻)の34巻目を読んでいます。映画は最近見ていませんが、「ラスト サムライ」はよかったです。
楽生日記100号もうすぐ発行します。付録①英語落語「セコハン ストア」、付録②創作「エンゼルメイク」もお楽しみに!! 11/11(土)東京へ行きます。また、上野公園でお会いしたいですね。
Commented
by
cuckoo2006 at 2006-08-28 23:32
楽生さん、大阪からようこそ!
司馬遼ファンでいらっしゃいましたか・・・「壬生義士伝」を司馬遼太郎より10倍楽しめる!などと失礼いたしましタ。 「街道をゆく」全43巻とは凄いですねえ。これは私には到底歯が立ちそうにありません・・・3巻で止まっている「竜馬がゆく」をなんとか8巻まで完走したいと思います。 西郷ドン前に大集合したのはもう3年前ですか・・ご上京の折はまた皆で集まりたいですね。 それから「楽生日記」100号おめでとうございます!付録もなんと豪華版。楽しみにお待ちしています。 それでは、今後ともどうぞよろしくー ありがとうございました。 AKIKO
壬生義士伝、読了お疲れさまでした。「幕末」という不確実な時代を枷にして、この小説を現代風に描き上げた浅田さんの筆力は見事ですね。150年前の登場人物に人間らしい輪郭やエピソードを与えることで、登場人物それぞれが魅力的でしたよね。「盛岡」という舞台装置もうまい。実はこの小説を読んだ後、夕顔瀬橋に行ったときは何の変哲もない橋に深い感動を覚えました。ただ、ご本人の顔を見ると、泣かされたのが口惜しくなるのですが(笑)。
時代はさらにくだって大正時代ですが、浅田さんの「天切り松闇語り」もオススメです。これ、知り合いみんなに紹介してます・・・面白いですよ。 しかしAkikoさん、映画に読書に大活躍ですね。今度オススメの映画、見に行ってみようと思います。
Commented
by
cuckoo2006 at 2006-08-30 08:37
tomomashさん、「壬生義士伝」、大アタリ!教えて頂いてありがとうございました。
>登場人物それぞれが魅力的でしたよね。 ほんとに。司馬遼太郎に「俗物」と決め付けられた?近藤勇も重厚な隊長として名誉回復させてもらっていたし(可愛そうに映画ではまた俗物そのものでしたが)作者が、登場人物一人一人に小さな花を咲かせてやった、という印象でした。 >夕顔瀬橋に行ったときは何の変哲もない橋に深い感動を覚えました。 ここは、一番大きな舞台装置ですよねえ。浅田氏は、年4回、季節ごとに盛岡に取材に行ったのだとか。臨場感溢れる描写にほんのりした温かみを感じました。 ところで、私が「泣かせの次郎」に一番ヤラレタのは、「鉄道員」のなかに入っている「うらぼんえ」という短編です。嫁ぎ先で苦労している孫娘をお盆に祖父があの世から加勢に来るという話。これは痩せっぽちの祖父が、老父(ゲンキです)とも重なってボタボタきました。 「天切り松闇語り」ご紹介ありがとうございます。秋の楽しみがまた一つ増えました。 AKIKO
Commented
by
寝人
at 2006-08-31 17:28
x
寝人です。御宅めっけ。
プログをおはじめになられたと聞きおよび 映画ノートとおもいきや 読書ノートとは・・・・・面白く拝見つかまつり候。 小生、書評大好き人間なのです。 >とにかくあざといくらい巧い浅田次郎、ツボの押しどこ、泣かせどこを知り尽くしている。 浅田氏は稀代のストーリーテラーでありまして、「その手に乗るか」と思いつつも「あっ、また乗せられた」という、手だれ氏による古典落語、講談の興奮の趣きなのでしょうか。 そも、ストーリーテリングとは そのストーリー自身の面白さはもちろんのこと、その切り口、語り口も含めて作者の全人生を仮託してあらわすものであり、 読者がおのおのの人生を仮託して読むものなのでありましょう。 その意味で 小生はA新聞の「書評」が一番の愛読書なのであります。 愛読書がまたひとつ増えました。
Commented
by
cuckoo2006 at 2006-08-31 23:46
寝人さん、いらっしゃいませ!
>浅田氏は稀代のストーリーテラーでありまして、「その手に乗るか」と思いつつも「あっ、また乗せられた」という、手だれ氏による古典落語、講談の興奮の趣きなのでしょうか。 伝統芸の域、ってぇわけですねえ。浅田氏の本は現代物を数冊読んだだけなのですが、結構救いようのない状況にいる登場人物が多いですね。そんな場面でこその弱い人間同士の心が触れ合う暖かさにホロリときます。計算し尽されたセンチメンタルなのだけどメソメソしていない。乾き具合がいいなあと思います。 私も本も映画も新聞の書評が、一番の情報源です。 それから、感想文はどんな風に感じてもペケの不正解はないと安心して・・・気楽に独りよがりを書いてますです。 では、寝人さん、これからもご贔屓のほどよろしくお願い致します! ありがとうございました。 AKIKO
|