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「愛されるために、ここにいる」 監督スタファン・プリゼ
『仕事においても、家族との関係においても行き詰まり、人生に疲れ果てたジャン=クロード。五十歳を迎えようとする今も、高齢の父との関係は気まずいまま。別れた妻との一人息子ともぎこちない会話をするのが精一杯だった。結婚を目前にして幸せなはずなのに、どこか満たされないフランソワーズ。小説の執筆に追われる婚約者のティエリーに対して、寂しい気持ちを伝えることができない日々。ある日、タンゴのレッスンで、ペアを組むことになったジャン=クロードとフランソワーズ。そこから二つの人生が交差しはじめる――。』(公式HPより)
ポスターに惹かれて観ることを決めました。ソファーにぽつねんと座る中年男、その人生に疲れ果てた表情に、愛されるために、ここにいる、とあります。「メトロに乗って」もそうでしたが、一瞬にして観る気を起こされました。 ジャン・クロードは50歳、立ち退きを勧告する執行官の業務を疲れた心と身体を引きずるようにこなす毎日、気がつけば一人ぼっちでした。 そんなある日、事務所の窓から向かいのビルを見るとタンゴ教室のレッスン風景が目に入ります。おや、どこかで見たことあるような?Shall we Dance?のメロディが頭をよぎりました・・ ダンス教室で出会った心優しい年下の女性フランソワーズとの恋物語に負けないくらいの比重で、ジャンの老いた父親や息子との関わりに焦点を当てたところが好ましかったです。 日々の暮らしの中、登場人物達が、感情を爆発させるシーンが何回も出てきます。鏡に向って、目の前の誰も座っていない椅子に向って、そして遂には相手に向ってー 私もちゃぶ台引っくり返したいお年頃真っ盛り(!)なもんですから、この心理は良く分かりました。 やがて、老人ホームへ面会に行く度に悪態をついていた父が亡くなります。父の部屋のレースのカーテンをいつも父が自分を見送っていたようにそっと捲ってみる。たとえ肉親であろうとその立場になってみないと心情は理解できない、さらりと見せた心に染みるシーンでした。癇癪を起こす父親役の名老優は、演技をしていると思えないほどリアリティーがありました。 そして、主人公ジャンは、全編を通して最後に初めて微笑を見せます。暖かく素敵な微笑でした。そのほほ笑みが、人生終っちゃいない、まだまだ捨てたものじゃない、と背中を優しく叩いてくれます。ラストシーンで私もジャンと一緒に微笑んでいました。 @ユーロスペース
by cuckoo2006
| 2007-01-18 00:00
| 洋画
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Trackback(2)
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Comments(0)
Tracked
from かえるぴょこぴょこ CI..
at 2007-01-18 16:53
タイトル : 『愛されるために、ここにいる』
タンゴのように美しく。大人の繊細な恋物語はフランス映画の真骨頂。 50歳過ぎの執行官のジャン=クロードは、タンゴ教室に通い始め、フランソワーズという女性に出逢う。踊るシネマは大好きで、とりわけタンゴものは映画的に美しいから好き。サリー・ポッターの『タンゴ・レッスン』は最高に好き。官能的な大人のダンス。躍動するリズムに心は高揚し、メランコリックで情熱的な音楽と、その流麗なステップに酔いしれ魅了される。タンゴは恋愛そのものでもあり、色香の漂うとてもフランス映画的なもの。だけど、男女が踊るタンゴが重要...... more
Tracked
from サーカスな日々
at 2007-11-07 02:28
タイトル : mini review 07079「愛されるために、ここ..
解説: 愛を知らない中年男性が、ひとりの女性と出会ったことで人生の輝きを取り戻していくラブストーリー。本国フランスでは、半年もの間ロングラン上映され大ヒットした話題作。くたびれた熟年男性を演じるのは『読書する女』のパトリック・シェネ。彼と恋に落ちる、若く笑顔のチャーミングな女性を『灯台守の恋』のアンヌ・コンシニがナチュラルに演じている。登場人物の心を代弁するように流れる、美しいタンゴのメロディが胸にしみる。 [ もっと詳しく ] (シネマトゥデイ) 原題 JE NE SUIS PAS ...... more
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