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「日の名残り」 カズオ・イシグロ〔著〕土屋政雄〔訳〕
『品格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスは、短い旅に出た。美しい田園風景の道すがら様々な思い出がよぎる。長年仕えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々―過ぎ去りし思い出は、輝きを増して胸のなかで生き続ける。失われつつある伝統的な英国を描いて世界中で大きな感動を呼んだ英国最高の文学賞、ブッカー賞受賞作。』(内容「BOOK」データベースより)
イギリスの香りが満ち溢れた小説でした。 物語は、旅の道すがら、中年を過ぎた執事の回想により淡々と進みます。邸内の隅々までを取り仕切る手腕と何より重んじられる人間的品格、イギリスにだけ存在する執事という職業がきめ細やかに描かれます。 屋敷内で行なわれる非公式の国際会議を手抜かりなく行なうことが、主人の活動の成否に結びつくという自負、銀食器が完璧に磨き上げられているか、お茶のサービスが寸分狂いのないタイミングでなされるか、自分の仕事が国際問題解決に直結すると信じる職業的プライドに、スティーブンスは生涯を執事の職務に捧げ尽くします。 しかし、真の紳士であっても外交家としてはアマチュアであるダーリントン卿は、政治の利害の中、次第に大きなうねりに飲み込まれていく。主人に仕えることがすべてだったスティーブンスの執事人生も大きく変化していきました・・・ 女中頭、ケントンとの再会の場面は胸に染みます。抑制の効いた二人のやり取りに成熟と誠実があぶりだされるようです。ここからラストまでの流れは、主人公と心を重ね合わせながらゆっくり読んでいきました。 そして、旅の終わりの夕暮れ時、桟橋のベンチに佇むスティーブンスの脇に一人の男が腰を下します、「人生、楽しまなくっちゃ。夕方が一日で一番いい時間なんだよ・・・」ひとしきりの会話の後、男はこういい残し、立ち去る・・・スティーブンスの思いは、屋敷で待っている自分の仕事へと向っていきます・・・哀しくなるくらい余韻のある結末でした。 著者カズオ・イシグロは、1954年、長崎生まれ、5才で渡英し、すべての学校教育をイギリスで受け、ほとんど日本語を解さない、と訳者あとがきにありました。 「日の名残り」は、1989年刊行、1993年にアンソニー・ホプキンス主演で映画化されています。 文句なし★★★★★作品。深く共感しました。
by cuckoo2006
| 2007-03-28 17:42
| 本(外国のもの)
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