絵手紙に自作の都々逸を載せています。小説と映画の感想も。
by cuckoo2006
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
全体
本(日本のもの)
本(外国のもの)
海外ミステリー
村上春樹
邦画
洋画
韓国映画
舞台
えてがみどどいつ
折り込み都々逸
折り込み短・狂歌
狂歌(今年を振り返って)
絵手紙展
3分スピーチ@話し方教室
エッセイ@文章教室
児童文学
旧作再掲載
未分類
以前の記事
2024年 03月
2024年 02月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 10月
2023年 09月
2023年 08月
2023年 07月
2023年 06月
more...
最新のコメント
kepitaroさん ..
by cuckoo2006 at 18:23
この「保木間」という地名..
by kepitaro at 17:38
yumechiyanさ..
by cuckoo2006 at 20:34
こんばんは 少し早いで..
by yumechiyan at 20:50
tsunojirushi..
by cuckoo2006 at 15:26
私は「円」の単位が付くと..
by tsunojirushi at 11:59
wakuさんがおっしゃる..
by cuckoo2006 at 12:41
「つりだし」という決まり..
by waku59 at 08:37
まさ尋さん それはもう..
by cuckoo2006 at 14:27
まさ尋さん やはりそう..
by cuckoo2006 at 14:16
最新のトラックバック
ブックマーク  (五十音順)
タグ
(559)
(453)
(58)
(31)
(13)
(12)
(11)
(9)
(7)
(7)
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧


「女たちの遠い夏」 カズオ・イシグロ〔著〕

「女たちの遠い夏」 カズオ・イシグロ〔著〕_d0074962_11365142.jpg
内容(「BOOK」データベースより)
『イギリスに住み、娘の自殺という事態に遭遇した悦子は、自分が生きてきた道を回想する。裏切りの記憶、子殺しの幻影、淡く光った山並みの残像―戦後の長崎を舞台に、戦争と戦後の混乱に傷ついた人々の苦しみを、端正流麗な文体で描きあげる。謎めいた構成の背後から、戦後日本の一つの透し図が現われ出る…。長崎生まれ英国育ちでブッカー賞受賞の日本人によるイギリス文壇へのデビュー作。』





微かに不吉な予感を漂わせながら、物語は淡々と進みます。心がざわっと波立つような感覚にページを捲る指が逸りました。やっぱり、カズオ・イシグロは、デビュー作から面白かった!

舞台は、戦後すぐの長崎と、それから二十数年を経たイギリス、二つの時代が交差します。カズオ・イシグロは、五才の時、渡英し、すべての教育を英国で受けたそうです。その著者によって、日本を舞台にした小説が描かれたわけですが、違和感はありませんでした。ただ、独特のゆったりしたリズムが、“小津安二郎”だった。舅と嫁の関係や、同じことを何度も繰り返す会話などは、小津映画そのもの。日本語をほとんど話せないという著者の日本人のイメージが、笠智衆に原節子、というのが何だか当たり前過ぎて、逆に驚きました。

けれども、小津映画とは別の方向に、物語は少しずつ暗い影を広げていきます。二つの時代の語り手は、同じ女性なのか、不幸な運命に押し流される二人の少女は同一人物なのか・・・とらまえどころのないゆらゆらとした流れに、惹き付けられます。
ラストは、ばっさり終わりました。今まで何冊か読んだイシグロの一分の隙もない繊細さとはまた違う世界でしたが、不思議な磁力は、デビュー作から発揮されています。

原題は、"A Pale View of Hills"、邦題の「女たちの遠い夏」は、早川文庫に収められる際、「遠い山なみの光」に改名されたそうです。どことなく朧げな感じが、新しいタイトルの方に似合っています。写真は、図書館から借りた絶版の文庫本の表紙。
by cuckoo2006 | 2007-09-24 12:05 | 本(外国のもの) | Trackback | Comments(0)
<< 「ミス・ポター」  監督クリス... 「近松物語」 監督溝口健二 原... >>