絵手紙に自作の都々逸を載せています。小説と映画の感想も。
by cuckoo2006
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
全体
本(日本のもの)
本(外国のもの)
海外ミステリー
村上春樹
邦画
洋画
韓国映画
舞台
えてがみどどいつ
折り込み都々逸
折り込み短・狂歌
狂歌(今年を振り返って)
絵手紙展
3分スピーチ@話し方教室
エッセイ@文章教室
児童文学
旧作再掲載
未分類
以前の記事
2024年 03月
2024年 02月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 10月
2023年 09月
2023年 08月
2023年 07月
2023年 06月
more...
最新のコメント
kepitaroさん ..
by cuckoo2006 at 18:23
この「保木間」という地名..
by kepitaro at 17:38
yumechiyanさ..
by cuckoo2006 at 20:34
こんばんは 少し早いで..
by yumechiyan at 20:50
tsunojirushi..
by cuckoo2006 at 15:26
私は「円」の単位が付くと..
by tsunojirushi at 11:59
wakuさんがおっしゃる..
by cuckoo2006 at 12:41
「つりだし」という決まり..
by waku59 at 08:37
まさ尋さん それはもう..
by cuckoo2006 at 14:27
まさ尋さん やはりそう..
by cuckoo2006 at 14:16
最新のトラックバック
ブックマーク  (五十音順)
タグ
(558)
(452)
(58)
(31)
(13)
(12)
(11)
(9)
(7)
(7)
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧


「オーデュボンの祈り」 伊坂幸太郎〔著〕

「オーデュボンの祈り」 伊坂幸太郎〔著〕_d0074962_12103759.jpg『コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている“荻島”には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?(文庫本裏表紙より)』

伊坂幸太郎のデビュー作は、衝撃的でした。
今までに読んだ伊坂作品、「重力ピエロ」、「チルドレン」、「アヒルと鴨のコインロッカー」、この3冊の登場人物の構図が、「超個性的なカレと、それに振り回されつつも惹かれるボク」、と全部同じで、正直、一冊ごとに新鮮味が薄れていきました。

そんな印象を、このデビュー作が、綺麗にに引っくり返してくれました。人物構図が類型的どころか、こんな小説、今まで読んだことがない。独特の世界が創り上げられます。

連行中のパトカーから逃走した、28歳の元システムエンジニア伊藤。彼が意識を回復すると、そこは、150年間外界と隔絶されている孤島「荻島」だった。伊藤の前に現れる不可思議な、でもごく真っ当な住民達。そして、その翌日、島の人々の指針とも言うべき「喋るカカシ」が、何者かによって殺されていた・・・

「荻島」は、先祖伝来からのそれぞれの役割により、奇妙で穏やかな均衡が保たれています。その「荻島」から、伊藤が暮らしていた仙台、そして江戸時代へと、物語は舞台を飛び移る。また、歴史、伝説、絵画、会話の中に溢れる警句など、枝葉の彩りも実に豊か。何気なく置かれた小道具にセンスが光ります。最後の最後に、すべての謎が明らかにされ、てんでんばらばらだったピースをきっちりと埋め込んでみせる。繰り返し問われていた「外から来た人間が置いて行く、この島に欠けているもの」の正体も明かされます。

弱い者を苛めず、異端を排除せず、人の心をおもんばかる、という、いつもながらのシンプルな道徳観が軽やかです。伊藤と島一番の変わり者・日比野の心が通い合う描写が、切なく美しい。日比野が、私の一番好きな人物でした。伊坂幸太郎の才能が、ほどばしっている一冊です。
by cuckoo2006 | 2008-02-09 12:11 | 本(日本のもの) | Trackback | Comments(0)
<< 「テラビシアにかける橋」 監督... 「再会の街で」 監督マイク・バ... >>