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カテゴリ:海外ミステリー( 38 )

「フロスト始末」上・下 R・D・ウィングフィールド[著]

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今宵も人手不足のデントン署において、運悪く署に居合わせたフロスト警部は、強姦・脅迫・失踪と、次々起こる厄介な事件をまとめて担当させられる。警部がそれらの捜査に追われている裏で、マレット署長は新たに着任したスキナー主任警部と組み、フロストをよその署に異動させようと企んでいた・・・・・・。史上最大のピンチに陥った警部の苦闘を描く、超人気警察小説シリーズの最終作。

(文庫本裏表紙より)

 

 「悪いニュースと悪いニュースがある。どっちから聞きたい?」

 ジャック・フロストは健在でした。ロンドン郊外にあるデントン署のフロスト警部は私のヒーローです。


「クリスマスのフロスト」から始まる6作のフロスト警部シリーズ。全作品が年末のミステリーランキング1位という超人気警察小説シリーズです。私が初めて読んだのは「夜のフロスト」。この本から海外ミステリー好きになりました。


馴染みの薄かった外国の推理小説が一気に身近になるほどジャック・フロストの個性は強烈だったのです。


フロスト警部と言えば、えび茶色のマフラーにヨレヨレのトレンチコート。そして連発するお下劣なジョークです。それは殺人事件の現場検証でも死体解剖室でも止まることはありません。


デスクの未決箱はうず高く、書類処理能力はゼロ。ガソリンの請求書の数字を6から8に書き換えるのも朝飯前です。


しかしこう見えてもフロスト警部は稀に見る人格者なのです。署の体面しか考えない上司は一切無視し、頭の中には一刻も早い被害者の救出と事件の解決しかありません。保身や出世への執着は皆無。それでいて容疑者も含めて弱い立場の者にはとことん優しいのです。


忙しさに悪態をつきながらもフロスト警部は猛烈に働きます。理想の上司とは言えませんが、同僚からの信頼は厚く、皆どんなに疲れていてもフロストのジョークに苦笑いで付き合っています。


今回は読み終わるのを少しでも伸ばすようにゆっくりページをめくりました。なぜならこれが愛するフロストとの最後の逢瀬だから。本作「フロスト始末」は2007年に亡くなっ著者R・D・ウィングフィールドの遺作となりました。


最終作でのフロストは史上最大のピンチに陥ります。経費のちょろまかしがマレット署長にばれデントン署を追われることになったのです。スキナー警部という新たな手強い敵も現れます。


そしていつものように立て続けに起こる事件。人間の足をくわえた犬が現れる一方、相次いで行方不明になる少年少女。異物が混入されたミルクが置かれたスーパーマーケットには脅迫電話があり、腐乱死体発見の一報が入ります。


マレット署長がいい恰好をし署員の大半を隣の署へ応援に貸し出したため、デントン署の人手不足は尋常ではありません。フロストには満足に寝る時間も食べる時間もありません。


そんなフロスト警部のもうお馴染みの大暴走が事件の解決に繋がり一人の被害者が救出されます。世相を反映するような残虐で救いようのない結末にもフロスト警部のくだらな過ぎるジョークは炸裂します。


カラッと乾いた空気に肩の力が抜けていくのが私にとってジャック・フロストの最大の魅力。フロストがいつか言っていたように、『山のような胸くそ悪くなる事件を前にして冗談を言うのは因果な仕事をいくらかでも楽にするため』でしょう。


とんでもない手口を使ってデントン署にもまんまと残れそう。フロスト警部のニンマリした顔で、シリーズは完となりました。


by cuckoo2006 | 2017-09-20 13:38 | 海外ミステリー | Trackback | Comments(0)

「Yの悲劇」エラリー・クイーン〔著〕鮎川信夫〔訳〕

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行方不明をつたえられた富豪ヨーク・ハッターの死体がニューヨークの湾口に揚がった。死因は毒物死で、その後、病毒遺伝の一族のあいだに、目をおおう惨劇がくり返される。名探偵レーンの推理では、あり得ない人物が犯人なのだが……。ロス名義で発表した四部作の中でも、周到な伏線と、明晰な解明の論理は読者を魅了する古典的名作。(文庫本裏表紙より)

 “死ぬまでに読んでおきたい海外ミステリー作品”に必ず上位ランクインする「Yの悲劇」。YとXを取り違え、Xの悲劇」を先に読んでしまっていました。

 でも、その甲斐あって「Yの悲劇」が格段に面白いことが解かりました。家族間での殺人事件というところにも興味を引かれます。

 「ハッター夫人のことならネタになる」と大新聞の編集長にさえ言わせるエミリー・ハッター。彼女の家族、業績、背景、おそるべき経歴は、つねに世間のうわさの種になっていました。その彼女に40年間支配され続け、亡霊のような男に成り果てた夫・ヨーク・ハッターの溺死体が発見されたところから物語は始まります。

 ハッター夫人の四人の子供達とその家族が暮らす屋敷で起こる第二、第三の事件・・・捜査にあたるサム警部らは手掛かり一つも掴めず、今回も元シェークスピア俳優である探偵のドルリー・レーンの洞察力に助けを求めます。

 もう、面白かった!続きを読みたくて堪らず文庫本を肌身離さず持ち歩きました。

 私なりに事件を推理し、犯人の候補を2名ほどに絞り込みます。相当イイ線いっていると思ったのですが、終盤のサム警部とレーンの会話、
サム警部「犯人は、〇〇でしょう?」
レーン「ちがいます」
サム警部「では、△△でしょう?」
レーン「ちがいます」

 この〇〇と△△こそ、私が予想した犯人でした。読者の推理など軽くお見通しのエラリー・クイーン、恐るべしです。

 事件の核心部分は、現代にも通ずるような・・イエイエやめておきましょう。

 アガサ・クリスティ「そして誰もいなくなった、コナン・ドイル「シャーロックホームズの冒険」と共に三大古典ミステリーの一角を占める「Yの悲劇」、納得の面白さでした!

by cuckoo2006 | 2016-03-06 19:01 | 海外ミステリー | Trackback | Comments(0)

「Xの悲劇」エラリー・クイーン〔著〕

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内容(「BOOK」データベースより)満員電車の中で発生した殺人事件。被害者のポケットからは、ニコチンの塗られた針が無数に刺さったコルク球が発見された。群衆ひしめく巨大なニューヨークで続く第2、第3の大胆な殺人にも、目撃者はいない。この難事件に、聴力を失った元シェイクスピア俳優ドルリー・レーンが挑み、論理的で緻密な謎解きを繰り広げる。20年ぶりの決定版新訳でよみがえる、本格ミステリの不朽の名作。

 
 お見事でした!が読み終っての一番の感想。
最終章の「舞台裏」で、探偵役のドルリー・レーンが、最初に起こった事件から一つ一つ謎を紐解いてみせます。その鮮やかな推理は緻密で論理的であっても、言われてみればごく単純なこと。なぜこんな当たり前のことが見えなかったのだろうと読者の首を大きく捻らせます。

 「犯人は〇〇を身につけていた」、状況をつぶさに観察することから、レーンは一つの“物”に焦点を当てます。事件後、その〇〇をどのように消滅させたのか。〇〇消滅の謎を現実的な手法で解き明かし、可能性のあるものを順次検討して排除していく。妥協を排し導き出された結論は確固たるものでした。

 ドルリー・レーンにかかれば、現在山積みされている未解決事件も次々に解決してくれるのでは、と思わされてしまいます。ミステリを読んでそんなふうに思ったのは初めてのこと。エラリー・クィーン恐るべしです。

 けれども、元シェークスピア俳優のドルリー・レーンは少々気取り過ぎで、こちらが恥ずかしくなってしまうところもありました。また、レーンが完璧に警視の扮装をして事件の関係者に話を訊きに行くところはいただけなかった。シェークスピア俳優の色を出し過ぎです。物語の時代がかった味わいは魅力でしたが、そこでは現実味がぐんと薄れました。

 ドルリー・レーンシリーズの「Yの悲劇」も続けて読んでみましょう。実は、クリスティの「そして誰もいなくなったと肩を並べ世界名作ミステリーのベスト3に常時ランクインされているのは、「Xの悲劇」ではなく、「Yの悲劇」だったと気づいたのは読み終った後でした(^^;

by cuckoo2006 | 2015-06-02 08:27 | 海外ミステリー | Trackback | Comments(2)

「そして誰もいなくなった」アガサ・クリスティ[著]

a0163466_14213576.jpgそれぞれ見も知らぬ、さまざまの職業、年齢、経歴の十人の男女が、U・N・オーエンと名乗る一人の男からの招待状を手に、デヴォン州沖にあるインディアン島へむかっていた。不気味な岩だらけの島だった。やがて一行は豪奢な大邸宅へとついたが、肝心の正体主は姿を見せず、そのかわりに見事な食卓が待っていた。不審に思いながらも十人が食卓についたとき、どこからともなく古い童謡がひびいてきた。つづいて、十人の客たちの過去の犯罪を、一人ずつ告発していく不気味な声が・・・・・!クリスティ、最高の異色作。(文庫本裏表紙より)

 お正月に三谷幸喜脚本の二夜連続ドラマ「オリエント急行殺人事件」やってましたね。結末におぼろげな記憶があっても、やはり老舗の安定感。楽しめました。久しぶりにアガサ・クリスティを読みたくなって図書館に「そして誰もいなくなった」を予約。“死ぬまでに読んでおきたい名作ミステリー”などで必ず上位に挙がる作品です。

 けれども私が受け取った本は、あまりに黄ばんであまりに字が小さく、その上大勢の登場人物名のややこしいこと。正直滅入りかけましたが、読み進むうちにそんなことは飛んでいきました。

 何人もの無関係な人間が一つの場所に集められるという展開に、アレ、これ前に読んだっけ?と何度も既視感を覚えました。それほど、これ以後の小説やドラマに、この本が影響を与えてきたことが分かります。

 一人、また一人と“十人のインディアンの少年の唄”の歌詞の通りに殺されていく招待客たち。やがて彼等は、この小島に閉じ込められた自分達の中の一人が殺人者であることに気づきます。殺人者は、ある手段を使って告発します。招待客全員が法によって裁くことのできない罪を犯していることを。

 隠し通してきた罪が暴かれる恐怖、罪の意識とそれを打ち消す感情、他者の犯した罪への嫌悪感、彼等はじりじりと追い詰められていきます。そしてこの中の誰が殺人者なのか。疑心暗鬼の中、招待客たちは警戒し合いつつ連帯行動を取ります。

 もう、次から次へと殺されていく。探偵役はいないので誰に感情移入して良いのやら、こちらの心も右往左往。疑惑を抱き合ったまま最後の三人となり、一人が除かれ、遂に二人は相対する。やがて一人残った人物は、、、、

 最終章で、すべてのからくりが明らかになります。犯人が解った読者はまずいないでしょう。真相は胃の腑に落ちるものでした。この手法でこの順序ならば現実的可能性があるだろうと。今の時代に発表されてもネット上で矛盾点は突かれないはずです。

 殺人事件の緻密さと人間心理の繊細さ、黄ばんだページもなんのその、やはり古典の中の古典ミステリは極上でした。「そして誰もいなくなった」と並び名作ランキング常連のエラリー・クィーン「Yの悲劇」も遅ればせながら読んでみましょう! 
by cuckoo2006 | 2015-02-10 12:36 | 海外ミステリー | Trackback | Comments(0)

「殺人者の顔」 ヘニング・マンケル[著]


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雪の予感がする早朝、動機不明の二重殺人が発生した。男は惨殺され、女も「外国の」と言い残して事切れる。片隅で暮らす老夫婦を、誰がかくも残虐に殺害したのか。燎原の火のように燃えひろがる外国人排斥運動の行方は? 人間味溢れる中年刑事ヴァランダー登場。スウェーデン警察小説に新たな歴史を刻む名シリーズの開幕!(文庫本裏表紙より)


 スウェーデンの刑事クルト・ヴァランダー・シリーズの第1作、お勧めです!という出だしでいこうと思ったのですが、薄味でした。先へ先へと気持ちが逸らなかった。

 ブログを遡ってみると、私が初めて読んだヴァランダー・シリーズは、第5作目の「五番目の女」。1作目の本書から5年後の作品です。作者はスウェーデンの代表的推理小説家ヘニング・マンケル。

 難事件の捜査と自らの人生に疲弊するヴァランダーに共感し、続けて6作目の「背後の足音、7作目の「ファイアーウォールと読みました。3冊とも第1作よりずっと面白かった。

 この1作目では、ヴァランダーの生活と彼を取り巻く人々との関係が良く描かれています。妻モナとは離婚が成立し、娘リンダからは拒絶され、老父の衰えは深刻なものに。新たな恋は始める前に終わります、、。途中からしか知らなかったクルト・ヴァランダーの私生活が良く分かりました。

 けれども肝心のミステリーの部分がしっくり来なかった。私が大いに不満だったのは、メインの殺人事件の犯人が、巻頭の「登場人物一覧」以外の人間だったこと。ですからタイトル「殺人者の顔」のその肝心な顔がもう一つはっきりしなかった。

 そして、もう一方の殺人事件の犯人はと言いますとね、、、
「登場人物一覧」の最後尾の人物、この位置にいる、特に肩書きもない、例えば「新宿の男」のようないかにもクサそうな者。ミステリーでは、この人物が犯人ということは、まずありません。が、本書ではーー後略ーー

 そんなわけで、思ってもみなかった真犯人に、ヤラレタ!というミステリーの醍醐味を味わえませんでした。ヴァランダー・シリーズは、限りなく完成型に近づいた第5作あたりから読むことをお勧めいたします。

by cuckoo2006 | 2014-09-28 20:00 | 海外ミステリー | Trackback | Comments(0)

「エコー・パーク」上・下マイクル・コナリー

a0163466_150574.jpga0163466_1502695.jpg内容(「BOOK」データベースより)ロサンジェルスのエコー・パーク地区で、女性二人のバラバラ死体を車に乗せていた男が逮捕された。容疑者は司法取引を申し出て、死刑免除を条件に過去九件の殺人も自供するという。男の口から語られるおぞましき犯罪。その中に未解決事件班のボッシュが長年追い続ける、若い女性の失踪事件も含まれていた。

 真夏はミステリーに限りますね。スカッとしました。訳者あとがきに「これまでで最高のハリー・ボッシュ物」と評されているのに納得でした。

 そして、ハリー・ボッシュは、やっぱりアメリカ人だった!このところヨーロッパのミステリーばかり読んでいたので、ボッシュのタフガイぶりが目新しく感じてしまいます。

 ヨーロッパミステリーの主人公達は良くも悪くも情緒的。愚痴と文句ばかりのフロスト警部(イギリス・デントン署)、常に嘆き苦しむヴァランダー刑事(スウェーデン・イースタ署)、ひたすら暗いエーレンデュル刑事(アイスランド・レイキャビック署)、そんな彼等と、ハードボイルド・ボッシュとのお国柄の違いを実感しました。

 ボッシュは決してブレない。難事件に挑む主人公が、弱音を吐くなどアメリカ人には受け入れ難いことなのでしょう。

 おまけにボッシュの傍らには、捜査に協力しつつ、熱い夜も共にするFBI捜査官の恋人レイチェルまで登場するのです。難事件に疲弊し、人生の孤立感を深めるフロストやヴァランダーとは大違いです。

 海外ミステリーは、登場人物が非常に多く、その中から犯人を推理するのが醍醐味。しかし、読者に犯人を当てられてしまったらミステリーとしては失格です。この「エコー・パーク」は、登場人物が少なく、更にそこから捜査関係者を除くと残りは僅か3名。それでも、どんでん返しも鮮やかに、最後の最後まで予想もつかない展開の、想像もつかない犯人でした。

 主人公の好みはと言うと、私は断然、フロストやヴァランダーのような欧州ウジウジタイプが贔屓です。

 それでも、コナリー作品は文句なく面白いので、これからも読むつもり。レイチェルは去ってしまったのですが、振られる理由もかっこ良過ぎるボッシュ。次回には、またよりが戻る予感がします。

 その前に、どうしてるか気になるメソメソ・ヴァランダー刑事に会いに行きましょう♪
by cuckoo2006 | 2014-08-16 17:32 | 海外ミステリー | Trackback | Comments(0)

「冬のフロスト」上・下R.D・ウィングフィールド〔著〕

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内容(「BOOK」データベースより)寒風が肌を刺す1月、デントン署管内はさながら犯罪見本市と化していた。幼い少女が行方不明になり、売春婦が次々に殺され、ショットガン強盗にフーリガンの一団、“怪盗枕カヴァー”といった傍迷惑な輩が好き勝手に暴れる始末。われらが名物親爺フロスト警部は、とことん無能な部下に手を焼きつつ、人手不足の影響でまたも休みなしの活動を強いられる…。大人気警察小説第5弾。


 やはり私のタイプは、クルト・ヴァランダーより、ジャック・フロストでした!

 難航する捜査に疲弊し、闇の中でもがき苦しむのは共通ですが、悩めるヴァランダー刑事よりフロストの普通のオッサンぶりがイイのです。

今回も、部下のポカも含め捜査官として有り得ないミスも犯す。救えなかった被害者の死体解剖に立ち会うフロスト警部ですが、その場を更に凍りつかせるオヤジジョークを放ちます。

 娼婦連続惨殺事件、少女誘拐殺人事件に加え、同一手口による窃盗事件、住宅地の庭から掘り起こされた白骨遺体と、デントン署の抱える未解決事件の数は増えるばかり。

 シリーズ最長編の上下巻ですが、残り30ページになるまでどちらの殺人事件も犯人の影すら見当たりません。これは下巻ではなく中巻なのでは、と思わず表紙を確認します。

「登場人物一覧」から目星をつけた犯人は、今回も嬉しくハズレ。娼婦惨殺事件の犯人は、あの二人組だと思ったのに、あんな二人組だったとは。この犯人を当てられた読者はいないでしょう。

 それくらい想像もできない人物でした。その分、犯行の動機は曖昧となり現実味に欠けてしまった。海外ミステリの大きな魅力は犯人の予想がつかないことですが、今回はそれが裏目に出て最後の最後が薄味になりました。少女誘拐殺人の方は、予想外に加え現実感充分で、こちらは文句なしでした。

 予算削減と検挙率を上げることしかないマレット署長を全く無視し、フロストの頭にあるのは被害者救助と部下の安否のみ。ヨレヨレのレインコートに煮しめたようなえび茶のマフラーで、紅茶カップの上にベーコンサンドイッチを乗せて会議室に遅れて現れるフロストが堪りません。

 作者R.D・ウィングフィールド氏は2007年に亡くなられたので、邦訳されていないフロスト・シリーズはあと一冊“A Killing Frost”のみ。タフでやさしいフロストとの逢瀬も残すところあと一回。首を長くして待つことにしましょう。

by cuckoo2006 | 2014-03-13 17:13 | 海外ミステリー | Trackback | Comments(0)

「緑衣の女」アーナルデュル・インドリダソン[著]

a0163466_16152789.jpg内容(「BOOK」データベースより)住宅建設地で発見された、人間の肋骨の一部。事件にしろ、事故にしろ、どう見ても最近埋められたものではない。現場近くにはかつてサマーハウスがあり、付近にはイギリス軍やアメリカ軍のバラックもあったらしい。住民の証言の端々に現れる緑の服の女。数十年のあいだ封印されていた哀しい事件が、捜査官エーレンデュルの手で明らかになる。CWAゴールドダガー賞/ガラスの鍵賞同時受賞。究極の北欧ミステリ。

  アイスランドの警察官エーレンデュル・シリーズの邦訳第二作。前作の「湿地より好みでした。紛らわしいほど似通った登場人物達の名前ももう頭に入っているのですいすい読み進みます。

 土の中から偶然に発見された骨の一部、掘り起こすと、それは片手を突き出し、生きながら埋められたような人間の姿でした。いったい誰がいつの時代に埋められたのか、、、考古学者の協力も得て、捜査は開始されます。

 発見された骨を追跡する捜査、エーレンデュル自身の別れた家族の話、そして第二次世界大戦時のある家庭で起きたこと、、、この三つの方向から物語は進んで行きます。どれも緊迫感いっぱいですが、一番引きつけられたのは、閉ざされた家の中で起こった家族の話。最初は読むのもおぞましかったこの部分が物語の核となります。

 本作では、エーレンデュルと別れた妻の間にどんなことがあったのかも語られます。若き日のエーレンデュルの心情は理解できないこともありませんが、これは妻子に恨まれても仕方ないでしょう。

 ラストは、発見された骨が、どのように埋められたのか、そして、それから、それぞれの人々にどんな時間が流れたのかが明らかになります。家族が辿ったその後の人生は、悲しいほど現実感がありました。

 それでも、読み終わってスーッと眠りにつける。これが海外ミステリーのいいところです。土の中から伸びた片手の映像がありありと浮かんでも、本を閉じればそれでおしまい。どんな猟奇的殺人事件も引きずることはありません。 我が身に重なることがないのは、自分とはかけ離れた生活圏で起きた出来事だからでしょう。私にとって、これが海外ミステリーの大きな魅力です。

 図書館ですんなり借りられましたが、週刊文春の2013海外ミステリ部門の第2位でした。
by cuckoo2006 | 2013-12-07 20:00 | 海外ミステリー | Trackback | Comments(2)

「ファイアーウォール」ヘニング・マンケル[著]


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内容(「BOOK」データベースより)19歳と14歳の少女がタクシー運転手を襲う事件が発生。逮捕された少女たちは金ほしさの犯行だと自供、反省の色はない。あまりにふてぶてしい二人の態度。尋問の席で母親を殴った少女に腹をたてたヴァランダーは思わず彼女に平手打ちを食らわせてしまう。ところがその瞬間の写真を新聞に掲載されてしまったのだ。孤立感に苛まれるヴァランダー。北欧ミステリの巨匠の傑作シリーズ。

 私が海外ミステリー好きになった切っ掛けは、「フロスト警部シリーズ」。上に強く、下に優しく、ヨレヨレ具合もお下劣もご愛嬌のジャック・フロストは、理想の男性像でした。我が愛するジャック・フロスト、彼より好きなヒーローにはまだ出逢ってないーー、などと書いたのは7年前でしたが、気がつけば出逢ってました。今、惚れ込んでいるのは、スウェーデン・イースタッド警察署のクルト・ヴァランダー刑事です。

 フロスト警部と言えば、英国ユーモア。何をおいてもまず紅茶という余裕を漂わせますが、内向型のスウェーデン人・ヴァランダーは、隠隠滅滅の雰囲気を纏っています。

 物語の舞台は、きまって秋。北欧の暗い空の下、冷たい雨と風の描写がとにかく多い。そこに50歳間近のヴァランダーの憂鬱な心情が重なります。そして、起る凄惨な連続殺人事件。

 この国はどうなってしまったのか、、俺の人生は何だったのだろうか、、、ヴァランダーの嘆きをよそに、事件の真相の糸口さえ掴めぬまま、また新たな事件が発生する。職務と自らの人生に疲弊するヴァランダーに、深い共感を禁じ得ませぬ。

 今回のヴァランダーはと言うと、前作で医者に叱責された食生活の改善と運動により、糖尿病の数値は安定し、10年前の体重に戻ることに成功しています。しかし、スッキリした容姿に気づいてくれる人は周りにいない。交際欄で知り合った女性に、バーで身体を捻り自信のある横顔を向けるヴァランダーでしたが、恋は思いも寄らぬ展開に、、、また、片腕ともいえる同僚の裏切りを他の仲間から告げられます、、、

 本作は、1998年に発表され、これ以後起るコンピューター社会の犯罪を予測した内容。無関係に見える複数の事件が、いったいどう結びついていくのか、結末を知りたい気持が急き込むのは、いつも通りです。

 最後に、失意のヴァランダーに、娘のリンダが告げた進路は、彼にとってこれ以上ない嬉しいものでした。ああ、良かった!やっとヴァランダーに一つ良いことがあって。安心して本を閉じました。 クルト・ヴァランダーこれからも目が離せませぬ♪

by cuckoo2006 | 2013-07-30 17:26 | 海外ミステリー | Trackback | Comments(0)

「湿地」アーナルデュル・インドリダソン[著]

a0163466_1454357.jpg内容(「BOOK」データベースより)
雨交じりの風が吹く、十月のレイキャヴィク。北の湿地にあるアパートで、老人の死体が発見された。被害者によって招き入れられた何者かが、突発的に殺害し、そのまま逃走したものと思われた。ずさんで不器用、典型的なアイスランドの殺人。だが、現場に残された三つの単語からなるメッセージが事件の様相を変えた。計画的な殺人なのか?しだいに明らかになる被害者の老人の隠された過去。レイキャヴィク警察犯罪捜査官エーレンデュルがたどり着いた衝撃の犯人、そして肺腑をえぐる真相とは。世界40ヵ国で紹介され、シリーズ全体で700万部突破。ガラスの鍵賞を2年連続受賞、CWAゴールドダガー賞を受賞した、いま世界のミステリ読者が最も注目する北欧の巨人、ついに日本上陸。


 アイスランドが舞台の警察小説。帯に「いま世界のミステリ読者が最も注目する北欧の巨人ついに日本上陸」とあります。図書館で半年待ち。期待が膨らみます。

 レイキャヴィク署のエーレンデュル刑事は、50代、一人暮らし。幼い頃に別れた娘は麻薬中毒、息子は少年厚生施設を出たり入ったり。彼自身は、長年暮らす街にも職場の同僚にも溶け込めず、近頃は頻繁に襲われる胸の痛みに不安を抱えています。十月の灰色の空の下、止むことのない雨と風の中、殺人事件の捜査が始まります。

 自宅の居間で灰皿によって撲殺された老人と一枚のメモ。当初は、単純な物取りに寄る犯行と思われたが、次第に明らかになる被害者の忌まわしい過去。しかし、なぜ今になって彼は殺されたのだろうか、、、、

 単一民族の小さな島国であるアイスランド。その特異な環境の下、事件の真相が解明されます。犯人の顔が浮かび上がった後、これはもう一捻りあるだろう、犯人を庇ったあの人物では?などと頭を巡らせたのですが、そのままの犯人でした。謎解きというよりも、読ませる人間ドラマの印象です。事件の核心部分は、アイスランドという国が舞台でなければ成立せず、正直かなり後味悪く、受け入れ難いものでした。

 人生に疲弊しているエーレンデュル刑事はタイプ。でも、北欧ミステリでは、やはりヘニング・マンクルのヴァランダー刑事シリーズの方が好みでした。それから、登場人物の名前がややこしい。エーレンデュルの同僚が、エーリンボルグで、他にエーリンとエイナルが出て来ます。折角エーレンデュルの家族や同僚達の名前が頭に入ったので、これ一冊では惜しい。エーレンデュル刑事シリーズ、もう少し読んでみましょう♪


★次回は、映画「ライフ・オブ・パイ」です。
by cuckoo2006 | 2013-02-10 18:19 | 海外ミステリー | Trackback | Comments(0)