小説、映画、絵手紙、都々逸
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「結婚しようよ」 監督佐々部清

c0155544_16293943.jpg解説『吉田拓郎の大ファンである『夕凪の街 桜の国』の佐々部清監督が、夢にまで見た全編“拓郎ソング”でいっぱいの心温まるヒューマンドラマ。健全なある家族を中心に、恋愛や夢や友情、そして夫婦愛について静かに語る。サエないけれど家族思いの父親を演じるのは三宅裕司。その妻役に真野響子、娘役に『ラブ★コン』の藤澤恵麻と中ノ森BANDのAYAKOがふんする。本作のクライマックスに合唱される「結婚しようよ」が心にしみる。』(シネマトゥデイより)





よしだたくろうの歌が、20曲挿入された映画!
高校時代に「イメージの詩」で拓郎と衝撃的な出会いを果たした私達世代には見逃せない作品です。一つ違いの夫を誘って早速観に行って来ました。

♪しぼったばかりの~夕陽の赤が~水平線から~もれている~
スクリーンは、「落陽」をバックに、疲れたサラリーマンの通勤風景から始まります。
グッと来た、のは、ここまで、でした・・・
まず、父親の決めた、家族揃って毎晩夕食を取ることが絶対のルール、という設定が陳腐過ぎる。筋立ては先が読め、登場人物のほとんどはステレオタイプ・・・もう、力抜けでした。

流れてくる拓郎の歌もどこかとってつけたよう。吉田拓郎の大ファンという佐々部清監督の思い入れが強過ぎたのでしょうか・・・と言ってる私も「吉田拓郎&かぐや姫 in つま恋 2006」のNHK番組を号泣しながら見たクチなので期待が最上級過ぎました。

拓郎本人が歌う「つま恋ライブ」を三宅裕司・真野響子夫婦が観に行く場面がラストシーンとなります。結局ここが一番良かった。このライブビデオを2時間見せてくれた方が嬉しかったなあ、というのが思い入れ過多の正直な感想です。

そんななかでも、娘役の詩織と歌織が、とても可愛かった。特に次女歌織の中ノ森BANDのAYAKOの歌と演技が溌剌と光ります。

♪お料~理を 習~うのも~ まんざら 捨てたもんじゃ ないよぉ 
こんな懐かしい歌詞にも出逢えて感涙。「つま恋2006」の最後の曲、「今日までそして明日から」をさらりと歌い切った60歳の拓郎をもう一度見たくなりました。明日、TUTAYAへ行って来ましょう!


@ワーナー・マイカル・シネマズ板橋


    ♪「結婚しようよ」ギター演奏
by cuckoo2006 | 2008-02-25 18:15 | 邦画 | Trackback | Comments(0)

「私家版」 ジャン=ジャック・フィシュテル〔著〕

c0155544_9294439.jpg『友人ニコラ・ファブリの新作。それが彼をフランスの第一級作家に押し上げることを私は読み始めてすぐに確信した。以前の作品に比べ、テーマは新鮮で感動的、文体は力強く活力がみなぎっている。激しい憎悪の奔流に溺れながら、この小説の成功を復讐の成就のために利用しようと私は決意した。本が凶器となる罪。もちろん、物理的にではない。その存在こそが凶器となるのだ…。』( 文庫本裏表紙より)


お互い本好きで手紙をやり取りしている学生時代の級友が、凄く面白かった、と教えてくれたので早速図書館で借りてきました。ほんとにゾクゾクッとくる面白さでした。

エドワードとニコラは、十代の頃、ともに文学を志していた同人誌の仲間。地味で不器用なエドワードと自分の魅力を知り尽くしている美男のニコラ。ニコラに必要とされることに喜びを感じながらも彼に屈折した感情を抱くエドワード。事件への長い助走となる、青春時代からのねじれた愛憎の心理描写に引き込まれます。

三十年が経過し、エドワードは、出版業で成功を治め、ニコラは外交官を経て作家となる。ある日、ニコラの新作の原稿を読み始めたエドワードは、そこに描かれたあるモチーフに、ニコラへの荒れ狂う感情が溢れ出るのを、もはや抑えることは出来なかった。彼は、「この本によってニコラを殺す」ことを決意する。

「本」の製本工程が、「私家版」の一番の読ませどころ。表紙用マーブル紙、亜麻糸、ライノタイプにディドー活字など「復讐」の小道具が、興味深い。ニコラが実に嫌な人物に描かれているので破滅への過程に胸がすくのですが・・・。一方、積年の思いを遂げたエドワードの胸中は・・・

ラストに違和感を感じたのは、フランスのミステリーならではでしょうか。不条理も大人のエスプリなのかも知れません。仏推理小説大賞受賞作品。
by cuckoo2006 | 2008-02-21 00:13 | 海外ミステリー | Trackback | Comments(5)

「テラビシアにかける橋」 監督ガボア・クスポ

c0155544_1795082.jpg解説: 『国際アンデルセン賞を受賞したキャサリン・パターソンの同名ベストセラー児童小説を映画化。いじめられっ子の少年と風変わりな少女が空想の王国テラビシアを作り上げ、友情を育んでいく姿を描く。監督はアニメ界出身のガボア・クスポ。主人公の少年少女を『ザスーラ』のジョシュ・ハッチャーソンと『チャーリーとチョコレート工場』のアナソフィア・ロブが演じる。CG技術を駆使して描いた子どもたちの空想世界と、涙を誘う感動のストーリーが見どころ。』(シネマトゥデイより)







小学五年生のジェスは、五人きょうだいの中の唯一人の男の子。学校では苛めっ子にやり返せないけれど、絵を描くのが得意。毎朝、一人で走る練習もしています。

淡々と描かれるジェスの日々の暮らしに、生き生きとした臨場感があります。黒のマジックで塗りつぶしたお下がりのピンクのスニーカーをからかわれ、スクールバスでは意地悪な上級生が幅をきかす。おまけにいつもまとわりついてくる一年生の妹。そんな毎日に、ジェスのやりきれなさが伝わってきます。

CGを駆使したファンタジーの部分は抑え目な作りで、すんなり物語に入りこめました。
それに、出てくる大人たちに現実味があります。貧しさに疲れながらも息子に男の仕事を教える父、暗い顔ばかり見せるが子供達を愛する母、口やかましいけれども暖かさを見せる国語教師など、非常に等身大。森絵都さんや、湯本香樹実さんの小説に共通するものを感じました。この映画の原作も児童文学です。

そして、ジェスの前に現れる、転校生の少女レスリー。「心の目を閉じてはいけない」とジェスに教え、二人で創り上げていく森の隠れ家。ジェスを新しい世界へ連れて行くレスリーに、宮沢賢治の「風の又三郎」が思い起こされました。

最後に、内向的で穏やかな眼差しのジェスが、自分の世界を見つけ、一回り逞しく成長する。このジェスは、本当にいい男になるだろう!と、オバサンは嬉しくなりました。


@T・ジョイ大泉
by cuckoo2006 | 2008-02-13 08:11 | 洋画 | Trackback | Comments(0)

「オーデュボンの祈り」 伊坂幸太郎〔著〕

d0074962_12103759.jpg『コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている“荻島”には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?(文庫本裏表紙より)』

伊坂幸太郎のデビュー作は、衝撃的でした。
今までに読んだ伊坂作品、「重力ピエロ」、「チルドレン」、「アヒルと鴨のコインロッカー」、この3冊の登場人物の構図が、「超個性的なカレと、それに振り回されつつも惹かれるボク」、と全部同じで、正直、一冊ごとに新鮮味が薄れていきました。

そんな印象を、このデビュー作が、綺麗にに引っくり返してくれました。人物構図が類型的どころか、こんな小説、今まで読んだことがない。独特の世界が創り上げられます。

連行中のパトカーから逃走した、28歳の元システムエンジニア伊藤。彼が意識を回復すると、そこは、150年間外界と隔絶されている孤島「荻島」だった。伊藤の前に現れる不可思議な、でもごく真っ当な住民達。そして、その翌日、島の人々の指針とも言うべき「喋るカカシ」が、何者かによって殺されていた・・・

「荻島」は、先祖伝来からのそれぞれの役割により、奇妙で穏やかな均衡が保たれています。その「荻島」から、伊藤が暮らしていた仙台、そして江戸時代へと、物語は舞台を飛び移る。また、歴史、伝説、絵画、会話の中に溢れる警句など、枝葉の彩りも実に豊か。何気なく置かれた小道具にセンスが光ります。最後の最後に、すべての謎が明らかにされ、てんでんばらばらだったピースをきっちりと埋め込んでみせる。繰り返し問われていた「外から来た人間が置いて行く、この島に欠けているもの」の正体も明かされます。

弱い者を苛めず、異端を排除せず、人の心をおもんばかる、という、いつもながらのシンプルな道徳観が軽やかです。伊藤と島一番の変わり者・日比野の心が通い合う描写が、切なく美しい。日比野が、私の一番好きな人物でした。伊坂幸太郎の才能が、ほどばしっている一冊です。
by cuckoo2006 | 2008-02-09 12:11 | 本(日本のもの) | Trackback | Comments(0)