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「探偵はBARにいる」 監督橋本一



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ストーリー:作家・東直己のデビュー作「探偵はバーにいる」を1作目とする「ススキノ探偵シリーズ」の第2作「バーにかかってきた電話」を映画化。札幌の歓楽街ススキノで活躍する探偵のもとに、コンドウキョウコと名乗るナゾの女から「ある男に会い、彼にひとつ質問してほしい」という依頼が舞い込む。簡単な依頼のはずが、探偵はその直後に命を狙われ、不可解な事件に巻き込まれていく。主人公の探偵に大泉洋、相棒に松田龍平。そのほか小雪、西田敏行らが共演。  キャスト:大泉洋、松田龍平、小雪、西田敏行、マギー、榊英雄、本宮泰風、安藤玉恵、新谷真弓、街田しおん、桝田徳寿、野村周平、カルメン・マキ、中村育二、阿知波悟美、田口トモロヲ、波岡一喜、有薗芳記、竹下景子、石橋蓮司、松重豊、高嶋政伸(映画.comより)

 フィリップ・マーロウを引きずって観ましたが、大泉マーロウもなかなか良い感じ。雰囲気のある映画でした。好みです。

 舞台は、札幌ススキノ。ケータイを持たない探偵(劇中での名前はナシ・大泉洋)は、名刺に根城にしているバーの電話番号を印刷しています。小雪のちらつく歓楽街の裏通りは日本じゃないようなちょっとした異空間。その一角にある小さなバーの電話から、探偵に一本の仕事の依頼が入ります・・・・
 
 探偵とアルバイト助手(松田龍平)が毎夜トントンと階段を下りていくこの地下バーが、国籍・時代共に不詳のいいムード。カウンターの探偵の前に、バーテンダーが優雅な所作で時代がかった黒電話を差し出します。それから、毎朝探偵がナポリタンを食べる喫茶店や、助手のいる農学部研究室、そして謎めいたマダム(小雪)が経営する高級クラブなど、どこか懐かしいような洒落た雰囲気が楽しめます。

 筋立てもいい具合に入り組み、私も探偵と一緒にすっかり騙されました。ほー、そう来たか、という結末です。ラストシーンは、クラーク博士が空へ右手を掲げる羊ヶ丘展望台。冬は、向こうに見える札幌ドームから一面の雪景色になるのですね。新緑の頃、銅像の前で写真を取って、ここから北大のポプラ並木に向かったことを思い出しました。北海道が舞台というのがこの映画の大きな魅力でしょう。

 それにしても、めちゃくちゃに痛めつけられるところ、依頼人を守り切る美学、そして小道具としての酒など、やっぱり、ハードボイルドの教科書はフィリップ・マーロウなんだなぁと、ちょっと嬉しくなりました。


@TOHOシネマズ西新井


★次回は、ピーター・キャメロンの「最終目的地」です。

by cuckoo2006 | 2011-09-28 17:32 | 邦画 | Trackback | Comments(2)

「ロング・グッドバイ」レイモンド・チャンドラー[著]村上春樹[訳]


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私立探偵フィリップ・マーロウは、億万長者の娘シルヴィアの夫テリー・レノックスと知り合う。あり余る富に囲まれていながら、男はどこか暗い蔭を宿していた。何度か会って杯を重ねるうち、互いに友情を覚えはじめた二人。しかし、やがてレノックスは妻殺しの容疑をかけられ自殺を遂げてしまう。が、その裏には哀しくも奥深い真相が隠されていた……村上春樹の新訳で話題を呼んだ新時代の『長いお別れ』が文庫版で登場。(文庫本裏表紙より)

 
 モチロン、訳者の村上春樹に惹かれて読みました。村上氏が、これまでの人生で出逢った最も重要な三冊の本。それは、フィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー」とドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」、そしてこの「ロング・グッドバイ」だそうです。

 「グレート・ギャツビー」と「ロング・グッドバイ」を幸せなことに村上訳で読むことができました。あとの一冊「カラマーゾフの兄弟」を読む根性は、もう私には無さそう。でも、もしこの先、村上氏が「カラマーゾフの兄弟」を翻訳する根性を発揮したら、その時はまた考えることにしましょう。

 さて、フィリップ・マーロウですが、かの有名な「タフでなければ生きられない、優しくなければ生きる資格がない」って彼のセリフ(別の本の中でですが)だったのですねえ。約束とも言えぬような約束を守るため得体の知れない敵に挑み、徹底的に痛めつけられても怯まず一人戦い続ける。格好良さの原点のような男です。生きる美学に名言に酒の銘柄、ファッションまで、マーロウは、ずっーとハードボイルドのヒーロー達のお手本になってきたのでしょう。そう言えば「探偵はBARにいる」の大泉洋もギムレット飲んでましたっけ。

 舞台は、1950年代、アメリカ。億万長者を父に持つ妻殺害の疑いをかけられ自殺する夫、マーロウは友人である夫の犯行に疑問を抱く。やがてマーロウの前に現れる流行作家ととびきり美しい妻、この上流階級の二組の夫婦が縺れ合うように抱える深い闇。マーロウは彼等に翻弄されながらも大胆さと緻密さを持って真相に近づいていきます。人々の心に戦争の傷跡がまだ残り、独特の退廃的かつ洗練されたムードの中、酒と会話にじっくり浸りながら物語は進んで行きます。

 この「ロング・グッドバイ」、村上氏の小説に影響与えてるなあ、とあっちこっちで嬉しい発見がありました。村上作品には、主人公・「僕」の日常生活の描写が良く見られます。『僕は、顔を洗い髭をあたり、パンにバターを塗りキュウリとチーズを挟み、コーヒーを作り、流しを片付けた』(いい加減な記憶で書きました)という具合。味噌汁だったら、キャベツとじゃがいも(また記憶より)というふうに具の描写まであります。エッ、こんなことまで書くの、と思うのですが、主人公の丁寧な暮しぶりも私には魅力の一つ。で、マーロウにも同じような描写がありました。『私はキッチンに行って、カナディアン・ベーコンとスクランブル・エッグとトーストとコーヒーを作った』(P.23)というふう。マーロウも心を落ち着かせるために掃除したりシーツを取り換えたりします。綺麗好きなところも「僕」に重なるのです。

 そして、もう一つ似てるのは、会話のスタイル。村上氏と言えば、「いやはや」「なるほど」などという一言の受け答えが定番ですが、マーロウも「率直に言って」「あるいは」「一点のくもりなく」とか良く言います。もろろん当然、訳者の文章スタイルが反映されると思いますが、同じケースの「グレート・ギャツビー」では全く感じないことでした。この「ロング・グッドバイ」に村上氏が影響を受けたことを直に感じられたのは、村上ファンとしては堪らないことでした。

 この本の中の名セリフは、『さよならを言うのは、少しだけ死ぬことだ』(P.571)めちゃくちゃに殴られた顔での美女とのラブシーンの翌朝のセリフです♪

 村上さん、やっぱり、カラマーゾフの兄弟、待ってますよ!


★次回は、映画「探偵はBARにいる」です。

by cuckoo2006 | 2011-09-16 23:49 | 村上春樹 | Trackback | Comments(6)

「うさぎドロップ」 監督SABU


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ストーリー
累計発行部数60万部を突破した宇仁田ゆみの人気漫画を、SABU監督が松山ケンイチ主演で実写映画化。亡き祖父の隠し子である6歳の少女りんを引き取り、不器用ながらも必死に育てようと奔走する姿を描く。りんを演じるのは、「告白」「ゴースト もういちど抱きしめたい」の天才子役・芦田愛菜。また、りんと同じ幼稚園に息子を通わせるシングルマザーのモデルを演じる香里奈のほか、池脇千鶴、木村了、キタキマユ、風吹ジュン、中村梅雀らが脇を固める。
キャスト
松山ケンイチ、香里奈、芦田愛菜、桐谷美玲、キタキマユ、佐藤瑠生亮、綾野剛、木村了、高畑淳子、池脇千鶴、風吹ジュン、中村梅雀(映画.comより)


 久々に映画を観てプッと吹き出したり声を上げて笑ったりしました。CMに出てると目が釘づけになる嬉しいマツケン主演作品です。

 祖父の葬式に集まった親戚一同は、祖父に6歳の隠し子・りん(芦田愛菜)がいることを初めて知る。中年の子供達は驚愕し、邪魔者のように彼女の存在を迷惑がります。大人たちの態度にすっかり憤慨し、失意のりんを見ていられなかったダイキチ(松山ケンイチ)は、「俺が育てる」と宣言してしまいます。

 ダイキチの両親も含めて親戚達は遺産云々の問題で揉めた訳ではなく、あくまでりんの養育について引き取ることを拒んだのです。当然のことながら大人達は皆、子供を育てることがどんなに大変かを知っています。自然な反応でしょう。

 この大変さをただ一人理解していないのがダイキチ、というわけでした。一人暮らしの家へりんを連れ帰った翌朝、「アタシ、お腹すいた」と言われ正気に戻るダイキチ。「オ、オレ、格好つけちまったよ。どうしよう、、、どうしよう」とトイレへはいつくばって逃げ込む姿にもう大爆笑でした。

 まずは保育園探し、りんに必要なものの買出しに食事作り、そして猛烈に忙しい自分の職場と、すぐさまダイキチの頭はぐちゃぐちゃになります。が、妄想癖のある彼は、ふっと広げた雑誌のページへ入り込み、バラの花を咥えて美女と踊り出します。「ダイキチさんって立派な方ね」と美女に褒められ元気づくのでした。こういう楽しさは、原作の漫画のテイストなのでしょうね。妄想に入るサインのラテン音楽が聴こえ出すと場内はクスクス笑いが広がります。

 さて、一変するダイキチの生活。毎朝、満員電車で会社の先の保育園まで、大荷物とりんを抱きかかえ走る、走る!夜は、残業を終えまたお迎えに走る、走る!また朝が来て、走る走る!綱渡りのような毎日がコミカルに描かれます。笑って観ていながらも、今、まさに、現在進行形でこういう生活を送っている若いお父さん、お母さんがたくさんいるのだ、ということがダイレクトに伝わってきます。

 ダイキチが、残業のない部署に異動を申し出て、そのことにためらいも後悔もないのは少々出来過ぎてますが、これが実の親だったら選択の余地はないのでしょう。それにしても(真っ只中にいる時は気付きませんでしたが)子供を育てるには、物凄いエネルギーがいるのですねえ。いったいどこから来るのかそのパワーは、という感じ。その生温かなエネルギーに圧倒された、というのがこの映画の一番の感想です。

 今、図書館で金原ひとみさんの話題作「マザーズ」を予約待ちしてます。“追い詰められた母親達”というのも今を掬い取っていると思います。でも一方で、この「うさぎドロップ」も子供と暮らすえも言われぬシアワセ感覚が描かれています。マツケンダイキチの大らかさ、いい加減さ、馬鹿正直さ、このシンプルさにヒントがあるのかも知れません。芦田愛菜ちゃんは、「阪神電車」と同じように演技がごく自然。とにかく気持の良い作品でした。


@TOHOシネマズ西新井


★次回は、レイモンド・チャンドラーの「ロング・グッドバイ」です。

by cuckoo2006 | 2011-09-06 23:54 | 邦画 | Trackback | Comments(0)